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慈光通信 第179号

2012.6.1

病気のないすこやかな生活 ― 医・食・住 ― 2

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、1982年(昭和57年)3月6日 熊本県立図書館ホールでの講演録です。】

 

 

平均寿命は本当に延びているのか

 

しかし、一方、国民の平均寿命が大いに延びて、世界一の長寿国になったではないか、とおっしゃるかもしれません。ところが、これが本当の延びではないのです。国民の生命力が旺盛になって、そして達者になって、みんなが長生きして下さるんだったら、めでたいことです。ところがこれは現在の医学によってできてきた抗生物質とかその他の薬物の力によってお年寄りが長生きしている。また数少なく生まれてくる赤ん坊が割合に死なない、だから平均寿命をとると長生きしたかに見えますが、みなさまの周りを見て下さい。70、80、90歳のお年寄りがたくさん生きておられる反面、40、50歳の方がバタバタ死ぬのをお気づきでございましょう。
最近よく若い人が死にます。一昨年、私の町で死んだ人を調べてもらったら、半分近くが50歳以下です。
そして、みなさま方も若い人がバタバタ死ぬことについて恐怖心をお持ちでしょう。ことに癌に対して。だから、この平均寿命の延長というのは、決して喜ぶことではないのです。
これはどういうことかといいますと、現在の医学の進歩によって、結核や肺炎、そういった細菌性のもので死ななくなったから一時的に平均寿命は延長しています。
しかし、今や公害病で死に出したのです。先ほど申したような病気、新陳代謝障害を共通点に持っているような病気は公害と関係あるらしい。
公害が始まったのが、今から約30年前です。農薬の害、食品添加物の害、いわゆる合成化学薬品が、われわれの食物を通じて、われわれの体に入ってくるという異常事態が始まったのは約30年ほど前からです。
だから、当時50歳だった人は肺炎では死なないけれど、公害で死ぬとすれば、だいたい30年で死にますから80歳で死にます。長生きです。40歳の人は70歳で、まずまず長生きです。当時10歳だった人は30年で40歳で死にます。若死にです。
今やれわれの世界には、いまだかつてなかったような事件として合成化学薬品、すなわち農薬、食品添加物、医薬品、洗剤、こういったものがわれわれの体に潜入してきています。
これによって起こる病気で死ぬ人がどんどん増えてくるまでの一期間、平均寿命が一見延びたかに見えるのです。
平均寿命の延長は決して本当の延長ではないということを、多くの心ある学者が言っておられるのです。

 

 

奇形が多発

 

一方、重症身体障害児、知的障害児、ことに奇形児がどんどん増えつつあります。東京のある大きな産婦人科の病院で昭和25年には流産児の0.8%が奇形であった。これが昭和50年では8.8%が奇形である。11倍に増えているということを医学雑誌に発表しておられる。それから、人工流産児に至っては実に15%が奇形であった。
こういったように、非常に奇形が多くなる。皆さまがご存知の猿の奇形がわれわれに非常に大きな問題を投げかけているのです。野生の日本猿を人間が餌つけをし、餌を与えると、10年位すると非常に奇形が多くなってくるという、事実があるのです。
この原因は農薬説、食品添加物のようです。高崎山の猿については菓子パンの添加物が非常に大きい役割をしているということを、京都大学の研究班が言っているようです。それから湯田中の猿の奇形では、りんごの農薬が非常に大きい役割をしているし、また輸入大豆の殺虫剤が影響している可能性もあるようです。
ここに一つ、重大な例があります。小豆島には二つのモンキーセンターがあります。一つは非常に広い範囲に住み、殆んど自然の生活をしている。そして人間の餌をもらうのが少しだけです。もう一方は、完全に人間の与えた餌で生活しているが、こちらに非常にたくさんの奇形が出ている。ところが自然生活している方では、ほとんど出ていないという事実があるのです。
有名な公害学者である吉岡金市先生は淡路島の福良公園の猿の奇形は完全にみかんの農薬のせいだということを発表しておられます。こういったように人間の食物を与える猿に非常に奇形が多くなるという事実があるのです。人間の世界に非常に奇形が増えてきたということと、これは重大な関係があります。
(以下、次号に続く)

 

 

梅雨の過ごし方
今年もまた、じめじめとした梅雨の季節がやってきました。食べ物にカビが生えたり腐りやすくなったりするのは、暑い夏よりもこの季節の方が要注意ですね。梅雨時は洗濯物も乾き難く、何となく家の中の臭いも気になります。そこで、梅雨を快適に過ごすための工夫をいくつかご紹介したいと思います。

 

 

◇窓の掃除
晴れた日に窓掃除をすると日光で汚れが見えにくく、湿度が低いと水拭きしてもすぐ乾いてしまうため、汚れが落ちにくくなります。そこで梅雨の時期の雨の合間の曇りの日や小雨の日を利用して窓掃除をしてみましょう。
窓は専用クリーナーなどを使わなくても身近なもので十分きれいになります。水で濡らした新聞で窓の汚れを拭き取り、仕上げに乾いた布でもう一度拭きます。新聞のインクが窓の汚れを落としてくれるので窓に艶が出てきれいに仕上がります。新聞の代わりに濡れタオルでも大丈夫です。汚れがひどい場合は、重曹水を吹きつけスポンジで拭きます。その後クエン酸水を吹きつけて布でふき取るとピカピカになります。
外出が億劫になる雨の日には、きれいになった窓から外の景色を眺め、家で快適に過ごすのもいいものですね。

 

 

◇カーペットの掃除
カーペットの中には掃除機で吸い取りきれない汚れがたまっています。そんな時にはナイロンたわしで汚れをかき出し掃除機をかけます。それでもまだ汚れや臭いが気になる時には、カーペットに重曹を振りかけ、ゴム手袋をはめてカーペット全体をこすります。そして一時間以上放置し、念入りに掃除機をかけます。きれいになるだけでなく重曹の消臭効果で嫌な臭いもとれます。

 

 

◇お風呂の掃除
家の中で最もカビの出やすい浴室は「湯上りのひと手間」がポイントです。入浴後はカビの栄養源となる石鹸カスや皮膚などの汚れをタワシでこすり、シャワーで水を床や壁にさっとかけ、温度を下げてから出ます。余裕があれば、タオルで水分を拭き取り、換気をするとカビの繁殖を予防できます。
湿ったバスマットは使用後、床に置かずに干しておき、こまめに洗濯することが大切です。

 

 

◇洗濯機の掃除
雨の時期は、洗濯機などの水回りは特に多くのカビが発生します。洗濯機のカビはドラムの外側などに多く付着しています。洗濯物を干す時に海苔のような黒いものが付着していたことはありませんか。日頃気付いていなくても洗濯槽のカビは多いものです。せっかくきれいになった洗濯物にカビが付着したりすると元も子もないので、この機会に是非、洗濯槽の掃除をお勧めします。クリーナーを使って浮き上がってきたカビを見て、びっくりされる方も多いのではないでしょうか。お掃除をされる場合、洗濯槽のクリーナーは、塩素系ではなく酸素系をご使用ください。

 

◎ 洗濯機のカビ予防には
・洗濯機が止まった後、すぐに洗濯物を出して干す。
・使い終わったら蓋は開けておく。
・次に洗う洗濯物を入れて置かない。

 

◎ 洗濯のコツは
・すすぎにはお風呂の残り湯を使わない。
すすぎに残り湯を使うと汚れが衣類に移って臭いの原因となります。それでもやっぱり残り湯をという方は、最後のすすぎだけは水道水を使うといいですね。

 

◎汚れものをため込まない。
汚れは時間をおくほど取れにくくなり、臭いの原因となります。雨の日は干す場所も少なくなるので、こまめに洗濯を心掛けましょう。

 

◎早く乾かすための工夫をする。
洗濯物は雨の日でも外に出して少しでも風に当てると乾きやすいといわれますが、それも半乾きになる前には室内に入れないと余計に湿気を吸収してしまいます。室内干しをする時には除湿器などを利用するのもいいですが、扇風機の風を当てるだけでも乾燥が早くなります。

 

簡単なことばかりですが、少しの工夫で鬱陶しい梅雨を乗り切りたいですね。

 

 

農場便り 6月

 

 

農場の雑木林は淡く美しい風景から初夏の日射しで濃い緑色へと変わった。たわわに実った山桜の実も小枝を離れ、地上へと落ち、赤黒い実は姿を消した。山深くから朴の木の花の甘酸っぱい香りを谷底から吹き上げる風が畑に運んでくる。
5月に入り農場はにわかにあわただしくなり、あれもこれもと思いばかりが先行し、作業は後手後手に回る。春先より育ててきた育苗トレイにはキャベツ・スイートコーン・赤シソ・トマト・オクラ・ズッキーニ・カラーピーマン・サンチュ・ケール・きゅうり、畑に直播する小松菜・ビタミン菜・大阪しろ菜・人参・里芋の芽は土から顔を出し、隣の生姜はまだまだ時間がかかりそうである。本農場ではニンニクを収穫し、畑の土の上で2から3日、お日様の力で地干しをした後、吊るして乾燥となる。3月に播種したゴボウは葉を自由気ままに大きく広げ、まもなく畑土を覆い隠してしまう。ここまでに除草を手取りで二回、条間を機械で一回行った。農場に定植したキャベツは3月6日に播種、その後半月ごとに逐次播種を行う。4月18日、ビニールトンネル内の育苗トレイから一変して荒野のような地に定植されたキャベツ苗、箱入り娘が厳しい社会に一人放り出されたようなもので、人間社会にも自然界にもすぐに魔の手が伸びてくる。我々作業員は荒野の用心棒となり、弱々しい苗を悪の虫から守る。三次元攻撃のモンシロチョウは一シーズンに何百もの卵を葉に産みつける。産卵後2から2週間で孵化し、その孵化した青虫を見つけて一つ一つ手で取ってゆく。この作業を一度するかしないかでその後のキャベツの生育が大きく左右される。「上農は草を見ずして草を取り・・・」ではないが、少しの手間で全てが大きく変わるのが農業である。取れども取れども幼虫は終日葉を食し、その生育は目を見張るばかりである。それでも青虫は、少々の食べ過ぎもキャベジンのおかげで胃もたれはしないようである。
葉から取った青虫はビンに入れ、その後離れた草むらへ放つ。本年の春先は雨が多く、畑の準備が遅れた。乾き切らない畑土を無理にトラクターで起こしたため、なかなかサラサラの土にならず、いつまでもゴツゴツの土のままに仕方なく定植を行った。6月初旬、定植したキャベツ苗は順調に育ち、このままトラブルもなく育つと、夏キャベツとして7月中旬頃にはみずみずしいキャベツを食卓にお届けできる予定である。
毎年変化のない作付け、2から3年前よりトマトの露地栽培の研究を始めた。トマトは以前にも紹介させていただいたように、雨と多湿と酸性土を嫌う作物である。近年、ほとんどのトマト栽培はビニールハウスなどの雨よけ栽培となった。作りにくい理由の一つとして、工業中心の近代化による酸性雨があげられる。確かにトマトは雨に弱く、長雨に合うと大量の病気が発生する。幼い頃のように露地で何とか美味しいトマトが出来ないものかと試行錯誤を繰り返す。酸性雨と共にイノシシの暴走も頭を抱える害である。
本年の夏作は今現在、順調に進んでいる。もちろん雑草との飽くなき戦いにも負けず、日々まんまるお腹に邪魔されながら除草を行う。除草くわを駆使し、畑を美しくして作物の育ちやすい環境を作る。後わずかで夏野菜の収穫が始まる。動物性食品を多く摂取するとエネルギーが宿り、体は熱く燃える。暑い季節には体をクールダウンさせる効果のある夏野菜で体を暑さから守る。電力不足が懸念される今、出来る限りの省エネにご協力を。
いよいよ梅雨の季節となった。農場の真南に坊城峰という小さな山城跡がある。高野山の僧兵が本山を守るための小さな山城であった。(歴史的には定かではない)梅雨に煙る霧は坊城峰をものみ込む。今日も一日、無事作業を終えた事に感謝し、帰り支度をする。土と汗にまみれた作業着、飲み干した水筒をザックに詰める。まんまるお腹が空腹を告げる。普段よくアクセスするブログが頭をよぎる。田舎暮らしの老夫婦が日々の暮らしを綴ったブログで、おばあさんがおじいさんに作った料理を周りの美しい風景と共に美しい文章で紹介している。お二人が、恵まれた自然の中で贅沢を求めず、素晴らしい老後を過ごされていることに感動を覚える。その美しい写真や暮らし方は、私達夫婦の感性を磨く手本となっている。
クタクタに疲れ車に乗り込む時、ふと思いつき、決死の思いで山道を登り雑木林へ。美しい香りを楽しませてくれた朴の木から大きな朴葉をもぎ取り「にっこり」。日中は花の香りを鼻で楽しみ、夜は朴葉の香りを舌で味わう。今夜のご馳走は朴葉味噌と洒落込む。(もちろん少しのお酒付き)我が家の食卓を彩る一品は大自然からいただいた。
大自然の恵みに感謝。

 

 

梅雨の霧が谷間を走る農場より