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慈光通信 第156号

2008.8.1

生命を守る正しい農法の追求 7

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、昭和47年8月20日 財団法人協同組合経営研究所主催 第2回夏期大学における梁瀬義亮前理事長の講演録です。】

 

 

米食民族には緑の野菜が必要

 

 

アメリカのマッカラム研究所のマッカラム博士が、二十年ほど東洋の米を食べる民族の栄養を実際に調べた結論を、私はフィリピンにいるときに読んだことがあるんです。それによりますと、米を食べる民族は、グリーンの野菜をたくさん食べることが一番大事なんだという結論です。
私も色々とあちこち調査したんですが、時間がないので、一ヶ所だけ申し上げますと、奈良県の非常に山奥にある村がありまして、その村を調査に行ったのは、昭和十七年でございます。そこの年寄りが、こういうことをいっておられました。「この村では食べるものは、日に米を湯飲みに一杯だ。それで薄いおかゆを作って、ひえの粉、あわの粉などで作った団子を入れて食べる。これが主食である。おかずは全部農作物なんだ」と。
この村には病気はほとんどない。そこの村に行きますと、金持ちが山を全部持っているんです。村の人たちは、山の仕事をさせてもらって生活している。旦那衆は大変な金持ちです。ところが旦那衆だけは大病するんだが、村のものは大病しないという。それでは旦那衆はどんな生活をしているかというと、六里ほどある町から米を買っている。またよく肉を買ってきて食べるわけです。ごちそうを食べている旦那衆は病気になるけど、村のものは病気にならない。
ところが最近、戦争がたけなわになって、木材の切り出しが盛んになってきたために、かなり良い道が一本ついた。そしておまけに米が配給制度になったので、村のものも米を食べるようになった。するとどうもこのごろ村の者も弱くなった、と言っておられた。
これは面白いことだと思って、調査して帰ったのですが、終戦後、村はどんどん開発され、町と変わらない生活をするようになった。その村は病気に対しても処女地だったものですから、結核がものすごく蔓延しまして、終戦後は有名な結核村になったんです。こういう一つの例がございます。
以前は村人たちは、雑穀を食べ、野菜を食べ、蛋白質では欠乏があったかもしれませんが、ともかくこういう生活をしていたために、病気が少なかったと考えられるんです。こういうところがたくさんありますが、時間がないので一例にだけさせていただきます。
世界で有名な長寿国であり、健康国であるフンザ国もだいたい野菜が多くて雑穀を食べて、肉食は少ないといった生活をしている。あるいはソ連のコーカサスのアゼルバイジャンに行っても、こういった生活が行われている。
近藤先生のお話ですが、アメリカの一世で七十歳、八十歳と長命している方があるのですが、この方々は昔の食生活を守って、相変わらず高野豆腐を食べたり、煮物を食べたり、昔のような食生活をしているから、体は小さいけれども長生きしている。ところが二世、三世になると、アメリカ式の生活が始まっていますので、朝からビフテキなど食べている。すると体が非常に大きいけれど短命で、先に死んでいく、ということをおっしゃっていました。
このように、私たち日本人には、マッカラム博士がおっしゃったように、グリーンの野菜をたくさん食べ、近藤先生のおっしゃったように、適量の動物性蛋白とともに大豆とか、南京豆とか、有色野菜、グリーンの野菜をたくさんとるところが長生きなんだということは、非常におおざっぱなようですけれど、大変重要なことだと考えられるんです。

 

 

公害にも放射能にも弱い体質

 

 

もう一つ申し上げたいことは、現在われわれがしているような欠乏の生活をしていると、放射能に弱いし、公害にも弱いということです。長崎に原爆が落ちたときに、爆心地の近くで放射能をあびた人は、白血病で死んでしまったわけです。ところがそこにある蜂矢先生という方がおられた病院では、その先生もやはり臨床体験からわり出して、日本人はわかめのみそ汁と菜っ葉のみそ汁を食べていたら病気にならないという結論を出していた。これはなかなかの卓見だと思うんです。理屈はいらないんだ、というわけでそこの職員には、強制的に全員に、毎朝出勤してくると、わかめのみそ汁か菜っ葉のみそ汁を食べさせた。その他、昼の食事もできるだけそういう流儀でなさった。すると、そこの病院だけは一人も白血病が出なかった、という一つの貴重な報告があるんです。
もう一つ、アメリカのラスベガスで原爆実験をやっているときに、放射能を含んだ雲がへんな方向に流れてしまって、たくさんのうさぎが死んだことがある。これは私は文献で読んだんですけれど、十何万と書いていました。その調査にあたったアメリカの軍医が、その地方の山の中にたくさん野兎がいるので、その兎の状況を調べるために、ずいぶん兵隊を派遣して調査した。ところが、野兎は死んでいなかったというんです。
結局、自然の状態で自然のものを食べているうさぎと、人間の与えた不自然なものを食べているうさぎとでは、そのくらいの差があるわけです。人間の与えた餌は、全部こういった、今の栄養学の理論からできている飼料でしょう。食物には自然のものの中の、未知のファクターを非常に重んじなければいけないと考えるんです。
イタイイタイ病にしろ、水俣病にしろ、みな同じものを食べていても、全部は腐らない。一部の人しか発病はしない。イタイイタイ病の場合は、大体、中年以降のご婦人で、お産をした人に多いというんです。これは結局、お産をするというストレスによって、体からただでさえ欠乏していたいろんなミネラルやビタミン、特にミネラルの欠乏が大きかったろうと考えられるんです。
このごろみてますと、特に女の方には貧血が非常に多い。歯を見てみますと、カルシウム欠乏が相当目立っています。こういうことから考えますと、お産をして子供に鉄分をとられカルシウムをとられた方に、イタイイタイ病が多く発生してくるというようなことは、非常に示唆するところが大きいと思うのです。
これで一応、材料の組み合わせの方法がいかに大切か、お分かりと思います。とにかく日本人は玄米を食べて、有色野菜をたくさん食べて、海草を食べて、蛋白質は大豆を主体にして、魚や卵や乳類にして、肉は減らしたほうがいいんだというような、大ざっぱなお話を、臨床から出てきた観察がほぼ間違っていなかったと考えられるんです。
それから白砂糖の害を、特に強調したいと思うんです。これほど白砂糖を食べていたら、日本の国はどうなるだろうと思うんです。          (以下、次号に続く)

 

地球温暖化を防ぐために その4

 

 

3.集団で取り組む省エネ

 

4)製造会社のバネ利用システム
江戸時代に作られたからくり人形、ご存知ですか?ぜんまいの力で動き、お茶を運んだり、弓を射たり、書を揮毫したりする楽しい人形です。このからくり人形からヒントを得て、製造物の運搬にバネの力を利用し電力使用量を削減した企業があります。運ぶ製品の重みでバネが縮むので、その力を利用して移動し、製品を下ろした後、縮んだバネが戻ろうとする力を利用して元の位置まで移動する、という工夫です。重さを移動エネルギーに変える素晴らしい知恵ですね。
思えば私たちの身辺から、ぜんまい仕掛けのものは随分、姿を消してしまいました。かつて、腕時計は毎日りゅうずを巻いてから、時間を合わせましたし、掛け時計もねじを巻きました。ブリキの自動車はぜんまい仕掛けで走り出しました。
省エネの為に、「ばね、ぜんまい」という昔の知恵を復活するのも、良い工夫であることを示す良い例ではないでしょうか。

 

 

5)廃油から燃料を作るシステムの開発
今、世界中で、トウモロコシから作られるバイオ燃料が話題になっていますね。このバイオ燃料は、限られた世界の食糧事情から考えても、穀物相場を高騰させる点から考えても、様々な問題を含んでいると言われています。そうではなくて、ゴミとして廃棄される油から、つまり一般家庭や飲食店から出るてんぷら油の廃油を原料としてバイオ燃料を作る方法があります。このようにして作られたバイオ燃料をゴミ収集車に使用しているのが富山市です。廃油が動力源になるなら、一石二鳥どころではなく、三鳥も四鳥もの得があります。ごみとして出されるてんぷら油の処理費用も不要になり、ゴミとして燃やされる時排出される二酸化炭素削減にもなる訳です。全国に広まれば、大きな起業と省エネとがはかれることでしょう。

 

 

以上、集団で出来る省エネ対策のごく一部を紹介させていただきましたが、これは、法人、民間企業、自治体、国など、規模が大きくなるほど、その成果が大きくなることが期待できます。
イギリスなどでは、住宅そのものの省エネ度合い(例えば窓が二重窓になっているかどうかなど、細かい項目に至るまで)を政府機関が一軒一軒評価し、省エネ対策が進んでいる家屋ほど税金を安くする、といった工夫もなされています。省エネ対策が充実している家屋は家を売買するときに評価額も上がります。家に省エネ対策を行えば、税金が安くなり、家の価格も上がるとなれば、黙っていても市民はこぞって出来るだけの省エネ対策を施すわけです。
ヨーロッパでは温暖化対策に対する意識が高く、国が国の政策として省エネに取り組んでいるケースも多いのです。これだけ温暖化の兆しが顕著になっている現在、温暖化対策は国の緊急最重要課題の一つに位置づけられるのではないでしょうか。

 

 

合言葉は “Think Globally,Act Locally”即ち「地球規模で考え、足元から行動しよう」です。
ご紹介した温暖化対策の一つでも、皆様の周りで実現して頂ければ、それが第一歩となります。

 

 

農場便り 8月

 

梅雨が明けるとお天道様のパワーはアクセル全開となる。太平洋高気圧はすっぽり包み込んだ日本列島をジワリジワリとローストしてゆく。早朝6時、一匹のマエストロがタクトを振り下ろすと、クマゼミのオーケストラは一斉に楽器を奏でる。時間が経つにつれて勢いが増し、10時頃にはピークに達する。が、11時頃には灼熱の太陽に負け、第1楽章の終演を迎え中休みとなる。再び、猛暑の最中にはニイニイゼミやアブラゼミが加勢し、これでもかと暑さに拍車をかける。農場の作物の首もうな垂れ、日々水やりに追われる。小松菜は太陽に向かって葉を伸ばしたが、返り討ちに遭い、見るも無惨な姿になってしまった。秋冬用にとトレイより定植したキャベツの苗もサハラ砂漠に迷い込んだラクダ隊の一行の様に、ただひたすら熱に耐え、2?3日に一度ホースから撒かれ土中に滲みこんだ水分を腹一杯吸い上げる。カラカラで焼け付くような大地、植物の世界は摩訶不思議である。水を好むもの、日照りを好むもの、人間でいえば、誰かさんのようにお酒を命の糧として吸収する人、私のように全く駄目な人間・・・とさまざまである。
この異常な高温の中、涼しい顔をし、大きな実をたわわにぶら下げ、日中でも太陽ビームもなんのその、この暑さを楽しむかのように成長を続ける作物にパプリカがある。本年度の夏作の初挑戦で、3月に種を蒔き、5月中旬に畑に定植、V字形に支柱を立て、2段にビニール紐を張り巡らせ、そこに誘引し風害から実を守る。涼しい頃はなかなか大きくなってはこなかったが、6月 肌にまとわり付く暑さが農場に押し寄せて来るや否や目覚めたように成長が始まり、花もたくさん付け、結実してゆく。パプリカについて少し説明させていただく。
パプリカはナス科の多年草であるトウガラシ属・トウガラシの一栽培品種。肉厚で辛味がなく、甘い品種で甘味唐辛子とも呼ばれる。パプリカの品種を作り上げたのはハンガリーで現在も一大産地として知られる。ビタミンCが豊富で野菜の中でもトップクラスといって良いほどの量が含まれ、加熱しても壊れにくいのが特徴。ビタミンCは免疫力を高める効果があり、美肌効果も期待できる。また血液の凝固を防いで、脳梗塞や心筋梗塞を予防、改善する働きのヒラジンも多く含まれている。栄養的にはピーマンとほぼ同じであるが、緑色のピーマンに比べパプリカは肉厚で甘味があリ、栄養価もやや高い。しかし、残念ながら美味なるが故に食害も多い。皆様の食卓にお届けできることを願い、日々作業に精を出す。
先月、世界の主要国が北海道に集い、これからの人類の歩むべき道について各国の立場からの議論が交わされた。各国の主張ばかりが一人歩きし、一行に結論が出ないのが現実のようである。先ず貧困に苦しむ人々の立場に立ち、贅沢を自粛すれば世の中すべてが収まる、至って簡単なことである。この集まりが、クーラーの効いた部屋でポテトチップスを片手に生ビールを飲みながらメタボについて話し合う風景と重なって見えたのは思い過ごしであろうか。この惑星、地球の最大の敵は贅沢を覚えた人間である。
夕方になると、焼けつく太陽は角度を変え木々の陰を長くした。ニイニイゼミやアブラゼミの鳴き声は小さくなり、涼を運んでくれるヒグラシが鳴き出す。山の頂や谷の奥深くより美しく涼しげな鳴き声がこだまする。少しは涼しくはなったもののまだ額からは汗が流れ落ちる。首に巻いたタオルで汗をぬぐい、手を休め、ヒグラシの声に聞き入る。「カナ、カナ、カナ・・」と美しく歌うヒグラシの声も経済人には「カネ、カネ、カネ・・」としか聞こえないのであろうか。美しい国、日本がその日暮し…にならないようにと心より願う。

 

 

記録的な暑さに耐える農場より