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慈光通信 第160号

2009.4.1

生命を守る正しい農法の追求 11

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、昭和47年8月20日 財団法人協同組合経営研究所主催 第2回夏期大学における梁瀬義亮前理事長の講演録です。】

 

 

「土が死ぬ」ことの恐ろしさを

 

 

それから、農薬は土には残留します。ことに水銀剤や塩素系統のDDTとか、アルドリン、エンドリン、ディルドリンとかいったものは、特に長く残留する。DDTは五十年ばかり残るということですね。砒素も残留する。それから農薬は植物体内に滲入します。(滲透性)洗ってもだめなんです。そして一定期間植物の体内に残るのです。残効性と申します。分解せずに残っている期間を残効期間と申します。これがだいたい早いので数日、遅いので数ヶ月残るわけです。なすを例にとりますと、なすにはこのごろてんとう虫だましというのがたくさん付きます。葉を食ってしまう。農家はダイアジノンとかスミチオンをかけます。これをかけると、だいたい一週間か十日はだめです。中に残っている。そのなすに午後四時ごろ薬をかけて、翌朝とって出荷する。これはスミチオン入りなすです。これを食べますと、肩がこったり、頭がふらふらしたり、あとから申すような症状が出てきます。これは、低毒性農薬と申しますが、低毒性というのは、一発で死んでしまわないというだけで、決して無毒ではないんでして、パラチオンとかエンドリンのように猛毒ではないというのであって、決して無害だということではない。なかなか恐ろしい毒性を持っているんです。
農薬は人間にどんなふうな影響を及ぼすか。農薬の作用機序を申しますと、まず農薬は脳をおかしまして、ノイローゼになったり、不眠症になったり、健忘症がおこってきたり、いろいろな症状をおこして、妙に自殺したくなります。女の方は特にやられやすくて、うなじがこって仕方がなくなります。
肝臓をやられ、自律神経の失調を起しまして、胃がやられ、腸がやられ、それから副腎皮質、私たちのホルモン系統のもっとも大事な部分である副腎皮質がやられます。そして色が黒くなったり手足が冷えたり、いろんなことがおこってきます。造血器がやられて貧血が起こってきます。このように全身がじわりじわりやられてきますので、本人には中々重病感があるのですが、だるいとか、胸がドキドキするとか、眠れないとか、いろんな症状を訴えるので、お医者さんにはどこが悪いのかわからない。結局、お前はノイローゼだ、ですんでしまう。
このような症状が長く続きまして、その最後の結果は、肝臓硬変になったり、あるいはノイローゼになって自殺したり、最近はガンや白血病と関係が多いことがやかましくいわれていますが、そうなったりいたします。
こういうわけで、現在の農法というものは、悪循環をおこしまして、土が死に、そして私たちのまわりの動物の世界に異常がおこり、益虫がいなくて、害虫ばかりふえて、最後は人間が死ななければならないという結論になってくる。死の農法と名づけるのがこれです。

 

 

死の農法から堆肥農法に帰れ

 

 

化学肥料と農薬を主体にした近代農法は、自然の法則を無視した農法である。農業というのはあくまで自然の法則の中にわれわれがはまり込んでいってあるべきものである。それなのに、全く自然の法則を無視した農法である。だからこれは死の農法といわなければならないと思うのです。
どうしても農業を変えなければいけない。では農薬を使わない農業はどうしたら可能であるか。それは可能なんです。絶対できるんです。私たちはそれを十何年やっています。
フンザ国へ行くと、医者の薬がなくたって、みんなが長生きしています。しかし、今の日本から薬をなくせば、たちまち大勢の人が死ぬでしょう。では薬は絶対に要るかというと、現在の日本人のような生活をしている人は、薬はいるんです。しかし、フンザ国のような生活をしている人にはいらないんです。日本でいえば、山梨県の上野原町の棡原地区のような生活をしている人には、医者はいらないんです。
農薬もそうなんです。現在のようなものの考え方、そして化学肥料を使っているような農法には農薬がなければ全滅してしまうんです。だけど自然の原始林がわれわれに教えてくれるところの法則、すなわち植物が有機物を生成し、それを動物が消費し、植物や動物の死骸や排泄物を微生物が分解して、その分解した終産物を再び植物が食物とする。この生態学的輪廻の法則をきちっと守っている原始林の、自然が教えてくれる法則を忠実にも守れば、フンザ国に医薬品がいらないように、われわれの農業にも農薬はいらないわけなんです。結局それは堆肥農法である。
土から出たものは、必ず土にして土に返せ、ということです。土から出たものを土に返せ、といっても生のものを土にいけてしまったんでは、とんでもない病害虫が発生いたします。土から出たものは、土にして、土に返せ。結局、堆肥農法ということが、私たち日本民族の活路です。農業はこの堆肥農法の原理の中に於いてのみ、工夫と進歩があるのです。
堆肥農法は非常に労力を要する。不便である。不潔であるということをすぐ申されるんですが、これは工夫ひとつでして、じつに楽しいものが出来るんです。これは、ご質問いただきましたときに申し上げたいと思いおます。
このようにして、土から出たものを槌にして土へかえすという、自然の命ずる法則にしたがって、農業を運営いたしますと、実においしい農作物ができます。このあいだ、大阪の朝日放送の記者さんが、私の所へ取材にこられて、私たちの販売所で売っていた葉っぱの残りを、もらって帰ったんです。それを油揚げと一生に炊いた。たくさん炊きすぎて困って、こんなもの子どもは食べないと思っていたら、子どもが帰ってきて、いままで菜っ葉など食べたことのない子どもが、兄弟みんなその菜っ葉をむさぼるように食べたというんです。翌日、もう一つの種類のものをゴマあえにしてやると、それもみな食べてしまったというんです。びっくりしました、とその記者さんがおっしゃっていました。
家畜でも、化学肥料で作ったふくふくと太った牧草をきらいます。逃げた牛をじっとみていると、必ず畦畔の痩せた雑草を食べています。この農法によってできた農産物は、おいしくて栄養が高い。ビタミンやミネラルや酵素が多くありますので、人間の体が不思議に丈夫になるんです。
私に協力してくださる、南さんと井上さんという二人の農家は、以前、農薬にうんとやられまして、再起不能になっていたんです。それが、この農法をはじめましてから、嘘みたいに元気になられまして、立つことのできなかったご主人が、いま盛んに耕運機を使って、農作業をしてくださっています。約一年の間に、そこまで回復してくれました。確かに、生命力が増してくるわけなんです。
外国を例にとりますと、鶏のひなが、四十%ぐらいの死亡率を持っていた療養所が、飼料を全部有機農業にかえたところが、四%に減ったという報告がございます。豚の下痢が治ったという報告もございます。家畜は、化学肥料で作った牧草をきらいます。
(以下、次号に続く)

 

 

青汁の事(1977年 芝(し)蘭(らん))
遠藤仁郎(倉敷中央病院院長)

 

 

病気の治りがよくなる

 

 

青汁だけでよくなる病気もあり、少なくとも、多くの病気の治りを助ける。
食欲が出る、通じがよくなる、(青汁で時に便秘することもあるが、多くは快通する。また、バターと併用して、たいていの下痢が止まる)。血色がよくなり、よく眠れるようになる。
多くの場合、たいした薬を使わなくてすむし、薬の副作用もかなり緩和されるようだ。
したがって、どんな病気にもよいわけだし、近頃多くなった肝炎、腎炎(カリウムがいつも問題にされるが、透析をすすめられた例にも著効がみられたのである)、胃(十二指腸)潰瘍、結石症(胆石・腎石)、糖尿病、痛風、肥満、高血圧(は下がり、低血圧は上がる)、動脈硬化(脳卒中・心筋梗塞)、喘息、リウマチ、その他のアレルギー症、神経痛、筋肉痛、ノイローゼ、自律神経症、レイノー、メニエール、むちうち、てんかんにもよいようだ。
熱病には是非飲ませたい。
疔(ちょう)、癰(はれもの)(よう)、?疽(ひょうそ)、扁桃炎、虫垂炎など。青汁だけでも結構よくなり、難治性の蓄膿症も青汁をしっかりやれば大抵治る。
火傷や外傷、手術創の治りがよい。治癒はほとんど望めないといわれているレントゲン火傷部の手術創さえ完治した例がある。
骨折にもよい。
肌がきれいになり、ニキビやソバカスがとれる。湿疹・ジンマシンによく、水虫も治ってしまう。
腋臭、口臭、鼻臭によく、白内障、緑内障にもよい。葡萄膜炎で2年間ステロイド治療を受け、ついに緑内障を併発、途方にくれていたがのが、青汁絶食、ついでイモ・マメ・ナッパ・青汁食2ヶ月で完治し、その後も好調を続けている。
バセドウ、ベーチェット、SLE,再生不良性貧血、筋萎縮症などにもよかった。
癌にもよいらしい。抗癌剤や放射線の副作用を防ぐようだから、これらの治療のさいや、術後の再発予防にも、ぜひやってみてほしい。
などなど。
とはいえ、けっして万能ではもちろんなく、いつも効くとも限らない。けれども、熱心にやっていれば、多くの場合、なにがしかの効はある。
したがって、すすんだ現代医学をもってしても治しにくいような病気には、ともかく、緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食、あるいは、せめて青汁だけでもうんと(少なくとも1日5?6合)飲むといった、徹底した食を熱心に続けてみるべきだ、と私は考えている。
それはともかく、何分、食べ物のことだから、嗜好上の難点は止むを得ないとしても、禁忌(きんき)(※脚注参照)ということがということがほとんどないこと、病気によって若干の手加減を加えるだけで、全ての場合に応用できることなどから、少なくとも食事療法はずっとたやすくなる。ご追試のほど、心からお願いいたしたい。
(編者脚注:禁忌とは、医学用語で、患者の状態によっては、元の病状が悪化したり、薬が分解されずに体内にたまって、ついには毒性が現われたりすること。例:重症の肝臓病患者に花粉症の薬「テルフェナジン」を投与すると、患者にとっては毒性の強い物質であるので、突然死することがある。危険を予測する手段がないので、フランスではこの薬剤は販売中止になった。抗がん剤と皮膚病の薬「ソリブジン」の併用では15人もの患者が死亡した例もある。)

 

農場便り  4月

 

春風が眠っている小枝の芽を揺り起こす。大空高くにはトンビ、木々の間には冬の間静かにしていた小鳥の群れが賑やかにさえずる。地上では、頭部に真っ赤な模様を配したキジが悠然と目の前を横切る。のどかな光景である。春の息吹は、時に生命を吹き込み、躍動感を与える。日増しに膨らむ蕾は先が割れ、4月には新緑となり、我々の目と心を楽しませてくれる。
早春、いち早く目覚めたふきのとうは、可愛い花も終わり、大空に向けて綿ぼうしを出す。先に種子をつけた綿毛を優しく春風が遠くへと運ぶ。このころになると農場の作業も忙しくなってくる。畑を耕し、畝を上げ、播種、植え付け、除草・・・、と猫の手も借りたくなる。冬の寒さに耐えた雑草の生命力は底知れぬパワーが宿り、ひと雨ごとに畑に緑のジュータンを敷き詰めたようになる。本年3月は雨天が続き、予定が大幅に狂ってしまい少々焦りを感じる。4月、冬野菜の取り残しが白、黄色、ピンクと一斉に花を咲かせた。そこには花粉と蜜を求めてたくさんの虫が集まり、花から花へと飛び回る。背の高い大根、白菜、小松菜、ビタミン菜、ずんぐり姿のチンゲン菜はお日様の光りをいっぱいに浴びる。今回はこのチンゲン菜(青梗菜)を紹介させていただく。
チンゲン菜は、近年よく口にする野菜の一つとなった。1970年代、日中国交回復の頃、パンダが華やかに来日した陰で、チンゲン菜もまた静かに来日した。チンゲン菜はアブラナ科の中国野菜で、原産地は地中海沿岸のトルコからバルカン半島の高原である。中国に渡ってから、様々な栽培種に分化された。チンゲン菜は、アルカリ性でミネラル豊富な緑黄色野菜である。味はやや淡白ではあるが栄養価は抜群であり、ここに含まれるβカロチンはブロッコリーの2倍、皮膚や粘膜に働き、美肌を作り出す。カルシウムを多く含み、鉄分、カリウム食物繊維も豊富で、特に成人病予防に効果があり、動脈硬化からも守ってくれる。又、ビタミンA・Cを多く含み、一株で一日あたりの必要量の半分以上を摂取でき、風邪の予防や骨粗しょう症、貧血、高血圧、ガン、心臓病、利尿、便秘にも効果があるとされる。漢方の薬効では、熱ざまし、胸焼け、胃のむかつき、精神安定にも力を発揮する。中国三千年の歴史が作り出したチンゲン菜を美味しくいただき、日々の健康に役立てていただきたい。
終日農作業に励む。この時期になると日も長くなり、お日様が西の山に沈む頃にはエネルギー不足となりクタクタ、美しい夕日を見ながら帰途へつく。帰宅後、家人より一通の手紙を受け取る。協力農家の西尾さんからの封書である。そこには、日常の出来事などが書かれており、「高齢のため田畑の作業は出来ないが、出来ることならばもっともっと田畑に行き、農作業に励みたい。自分自身、有機農業とめぐり合い幸せな人生であった。もし生まれ変わっても又、この素晴らしい農業に従事したい。」という内容の文が書かれていた。美しい文章で、感動的なお手紙であった。私にとっての農業に対するみ教えと感謝し、これからの農業人生の道標とさせていただきたい。
春は、日一日と深くなってゆく。農場への道中に大きな農業用貯水池があり、堤に桜の木が植えられている。満開時には水面に美しい姿が映し出される。春風は、時にいたずらをし、花びらを散らす。春風にさらわれた花びらは、かすみの空に舞い上がり、その後水面へと落ちてゆき、さざなみに押されて一筋の花筏となり湖面を渡っていく。日本の美、春の一コマである。
今日も春夏作の播種や苗の植え付けをする。大自然の目覚め、大地は大きく息をし、作物を優しく包み育ててくれる。すべての地上の生命は微笑み、歌う。春真っ盛り、大いなる希望と少しの不安を抱きつつ、農業シーズンへと突入する。

 

 

 

「春眠暁を覚えず」の農場作業員より