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慈光通信 第222号

2019.8.1

食物と健康 3

 

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、1991年1月 日本有機農業研究会発行の「梁瀬義亮特集」に掲載されたものです。】

 

2、私の体験から

 

医療機関のあり方を病院実習でみて

それから昭和18年、繰り上げ卒業で3月に卒業いたしまして、10月まである大きな病院で実習を受けたわけです。その時に私はあまりにも患者が多いのに驚いてしまった。さらにもう一つは、医療関係者が、病人をただ事務的に教科書に従った処理をして、一向に病気の原因の追究に情熱を示さないことに、実はびっくりしました。これは私にとって、非常にショックな経験でした。
医者が病人をいわゆる親身になって直すんじゃなくて、ただ与えられた教えられた方式に従って処理しているだけだという事実は、勢い込んで、医学部に入った若者には全くショックでした。

フィリピンにおける知見から

それから私、そういったことを考えながら応召してフィリピンに行ったわけなんです。ここでまた面白い体験を致しました。比島で各地を回りましたが、比島には約7000の島があり、たくさんの民族が住んでいるのです。そのうち一番大きなのはルソン島で、こういった平地に住んでいる民族は、白米を食べ、豚の骨とか果物を食べている。こういう民族は非常に体格が悪いのみならず、結核が驚く程多く体力が弱い。
ところが、方々に移動したために、山地族に接する機会が多くて、いろいろな山地族、例えばボントック族とかイゴロット族とか、あるいはマンギャン族とかいう原始民族にも出会いました。こういう民族は、山の中に住んでおりますから米を食べない。たいがいはさつまいもを主食としていまして、これに山菜、パパイヤ、バナナに生野菜を添えて食べている民族ですが、この山地族が非常に強健なんです。体格も格好からして違うんです。
これは、食べ物の差によるものであることを念頭において、平地民族と山地民族の間の差を見てきました。
このとき、ミンダナオ島のカラパンというところで、貴重な文献を手に入れた。これは、アメリカのマッカラム栄養研究所のマッカラム博士が書かれたものなんです。マッカラム博士は、長い間東洋の食生活を随分研究しておられ、何十年の研究を重ねられて、こう結論しておられる。
一義的には解決できぬにしろ、また他にも様々な原因はあるにしろ、米を主食にする東洋人は、グリーンの野菜を十分摂らねば強くなれない。理由はわからないけれども、たくさんの観察によると、こういう結論が出た、ということに、私は非常に興味を覚えました。
中隊付きの軍医をしていましたので、私は、各地へ行きまして、兵隊の現地食品を見ていますと、徴収の白米と豚肉で、せいぜい瓜ぐらいであったのです。そこで青い、グリーンの野菜がいるんだ、という言葉がきわめて印象的であったので、さつまいもの葉っぱであるとか、あるいは向こうではカンコンという野草がいっぱい生い茂っているのですが、この葉を採集してこれらを強制的に兵隊に食べさせた。
これで私の付属しておりました中隊は、非常に病人が少なかった。それに比べて、ある外の中隊なんかは、一箇中隊がおおかた歯が抜けてしまったものがあります。これはある大きな製糖会社に駐屯しておりまして、随分大きな倉庫の中の砂糖を自由にした。アルコールを砂糖水に入れて、毎日朝からガブガブと飲んでいる。そして白米と豚肉食とばっかりやっておりますと、兵隊の歯が抜けてしまった。ラッパ兵がラッパを吹けなくなってしまった。こういう事例があり、非常にいい参考になったのです。

現代医学に対する疑問

無事に内地に帰り、前にお世話になった病院で診察に携わりながら、現代医学に対して、非常に疑問を感じたのです。
これは、病気というものは、人間の生活から出てくる一つの現象でもある。その生活自身の検討をせずして、出てきた結果である病気だけを、薬物の化学変化や物理的作用を利用して、おさえようとする試みは、正しい医療じゃない。それはあくまで応急処置的なものであって、これによって国民が、生命を維持し、健康を維持しようという考え方は誤りである、ということに気がついたわけです。

以下、次号に続く

市販の小麦粉からグリホサートを検出!
グリホサートは危険な農薬です。世界保健機関の専門家機関・国際がん研究機関が発がん物質であると認めました。2018年8月米国でラウンドアップを長年散布していた人が悪性リンパ腫になったとしてモンサント社を訴え、モンサント社に多額の賠償金を払うよう判決が出ました。
小麦はGM作物ではありませんが、グリホサートはプレハーベスト農薬として以前から使われてきました。収穫の前に散布して実を一斉に乾燥させ一度に収穫するやり方です。収穫直前に散布された農薬の残留率は高くなります。小麦のグリホサートの残留基準値は日本では5ppmでしたが、国際基準に合わせて2017年に30ppmに緩和されました。
日本の小麦の生産量は少なく、90%をアメリカ、カナダ、オーストラリアから輸入しています。小麦のグリホサート残留濃度は高く、農林水産省の調査でもアメリカ・カナダからの小麦の9割からグリホサートが検出されたという報告があります
パン食が普及し、学校給食にもパンが提供されています。私たちは心配した母親たちとともに、消費者がよく使用している小麦粉をスーパーやコンビニ、デパートで購入し、10検体の検査を昨年10月に農民連食品分析センターに依頼しました。
以上、小野南海子(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン)消費者リポートより抜粋

グリホサート残留状況調査結果

品名      生産、販売者  分析結果(?)
強力粉麦粉      日本製粉     0.37
昭和天ぷら粉    昭和産業     検出せず
日清全粒粉パン用    日清フーズ     1.1
日清フラワー薄力小麦粉   日清フーズ     検出せず
日清クッキングフラワー   日清フーズ     痕跡
日清カメリア強力粉麦粉   日清フーズ     0.09
CGC薄力小麦粉       日本製粉      痕跡
ローソンセレクト薄力小麦粉  日本製粉      痕跡
日清コツのいらない天ぷら粉  日清フーズ     痕跡
セブンプレミアム天ぷら粉  日本製粉      痕跡

グリホサートとはモンサント社が開発した除草剤ラウンドアップの主成分ですが、今はさまざまな除草剤に使われ大変危険な農薬です。
パンやパスタ、うどん、お菓子などありとあらゆるものに小麦粉が使用され、今や小麦粉は私たちの食卓にはなくてはならないものになっています。子供たちの給食のパンも例外ではありません。
グリホサートは発がん性以外にも内分泌攪乱物質の一つとしても指摘されており、子宮内に入ると、胎児の男性ホルモンの働きを阻害するともいわれています。
アメリカでは前述のモンサント社に対しての訴訟同様の裁判が約8000件も起きているというのです。こうした事態を受けアメリカの一部のスーパーやホームセンターでは、店頭からグリホサートの成分を含む除草剤を撤去する動きが出ている、またヨーロッパでも使用を規制する動きが高まっているということです。規制の少ない日本で子供たちの未来を守るため、私たち大人が自分で見極め、安全な食品を選ぶということがいま求められています。

 

農場便り 8月

真夜中、漆黒の夜空を二分する戦いが始まった。双方一歩も譲らず、東の太平洋高気圧、西のシベリア高気圧が日本列島の上空でがっぷり四つに組んだ。立行司は日本気象庁。双方共に技を出し合い、東は雷神技、西は風神技。夜空に雷光が走り、地を裂くような雷鳴が轟き渡る。荒れ狂う強風は草木をなぎ倒し、家屋にも襲いかかり、雷、風共に黒龍となり夜空で暴れ狂う。仕方なくベッドから起き上がり、開けっ放しの窓を閉める。室内の空気は一気に上昇し、蒸し暑さが体を包み込む。頭をよぎる畑の作物たち、とくに張り巡らせたネットを一気に上り詰めたきゅうりは風に弱く、只々ネガティブな想像ばかりがおやじの心を締め付ける。時間と共に目が冴え、そのまま朝を迎える。「雷鳴が轟くと梅雨が明け夏が来る」と幼い頃に教えられた。そのことば通り翌朝、日の出とともに黒雲は去り、日差しは夏となった。庭ではクマゼミが狂ったかのように羽音を立て夏を迎えた。
しかし近年、気候は安定することなく、翌日からはまた鉛色の重苦しい雲が垂れ込める。湿度は上がり、異常なまでの汗が作業する体から流れ出る。
朝一番のきゅうりの収穫、夜つゆがきゅうりの葉面をしっとり濡らし、伸びたツルには水滴が薄曇りの光で弱々しく輝く。雨ガエルの子供もきゅうりの木に登り、眠気まなこで汗まみれの私をじっと見つめる。収穫を終えるころには夜つゆと汗で全身ずぶ濡れ、メガネは湿度と体温で曇り周りが見えにくく、イライラが芽を出す。きゅうりの所々にカメムシが姿を現わす。8月が近づくときゅうりの養分を吸いに飛来する嫌われ者で、小さなきゅうりを狙い、口先の注射針を幼いきゅうりに「ブスッ」と刺し、養分を吸い取る。吸い取られたきゅうりは成長が著しく悪くなり、奇形果となる。実の中の一部が空洞化することもある。カメムシは、まだお尻に黄色い花びらのついた幼いきゅうりをブレックファーストに楽しもうかとしがみつき、今にも針を刺そうとしている。そっと指を近づけデコピンで一撃、パチンと音を立てカメムシは草むらへとふっ飛んでゆく。指に残った嫌な臭いがカメムシの置きみやげとなった。カゴ一杯に収穫したきゅうりをコンテナに移し替え、またきゅうりのジャングルに潜り込む。夜つゆに光るみずみずしいきゅうりの収穫は続く。
日が経っても夏空は姿を現すことなく、雲に覆い尽くされる日が続く。全国的にきゅうり、ナスなどの夏作物の作柄は芳しくなく、東に行くほど作柄が悪く、早くも品薄で高騰しているようである。当園でもきゅうりは元気よくネットを伝って高くまで伸びたが、花は例年に比べると少ないように見受けられる。ナスは少々弱り気味ではあるが、真夏の日射しに期待し管理作業に精を出す。もう既に秋冬用の作物の播種も始まり、一日も欠かすことなく水を与える。
7月下旬、ようやく夏が来た。暑く息苦しい私の苦手な夏が来た。昨年晩秋から初冬にかけ定植を行ったキャベツもすべて収穫を終え、空になった畑には早くも雑草がキャベツのあまり肥をわがもの顔で吸収し、私にとっては耐えがたい夏の日射しを憎らしいくらいに楽しんでいる。間もなく秋冬作の準備で踏みつぶされ耕運されることもつゆ知らず…。
他の耕作地では、冬に張り巡らせた害獣フェンスに守られ、何のストレスもなく大きく伸び伸びと育つカボチャの姿が目に映る。この春、諸事情により当園でも何本かのカボチャを育てることとなった。8月初旬、本年の長雨にも敗けず強い太陽が降り注ぐ中、この世の楽園とばかりに予想以上にツルを伸ばした。中にはフェンスをよじ登り、外に新天地を求める強者もいて、その生命力にはただただ驚きである。今回はカボチャについて説明させていただく。
カボチャの原産は中南米との説が有力でメソアメリカ(メキシコや中央アメリカ)で8千年から1万年前から栽培されていた。日本にはカンボジアから1541年ポルトガル船が漂着した際運び込まれたのが始まりとされ、「カンボジアから来た野菜」がなまり、いつの間にかカンボジアがカボチャに変化したといわれている。嘘のような話ではあるが、文献にはそう記されている。カボチャの栄養価は、βカロチンの含有量は野菜の中ではトップで、βカロチンが体内でビタミンAに変化しガン予防に良いとされる。また食物繊維が豊富で消化酵素では消化されずそのまま腸まで届き、便秘やデトックス効果、ダイエットに効果がある。特に表皮に含まれる食物繊維が優秀である。ビタミン類も多く含まれ、ビタミンEは血行促進に効果があり、これらの栄養素はすべて西洋カボチャの方が多く含まれていると言われている。他にはタンパク質、カルシウム、鉄分、そしてカリウムは塩分を出すなど多くの栄養素を含む。
栽培は、5月に苗を定植。あまり肥料を与えず親づるの芽止めを最後に、手をかけない放任栽培となり、それに耐えうる体力を持っている。長い農業人生でカボチャ栽培は初めての経験、他の作物には熱心に取り組んで来たが、相手がカボチャとなるとテンションがダダ下がりとなり、熱き情熱が湧いて来ない。身勝手な話ではあるが、カボチャとサツマイモのあの甘さがどうも苦手で、多くの食物の中でも私の人生に於いてこの二つを口にすることはない。逆に家人や娘はこれらをこよなく愛し、パンプキンスープだの、カボチャのグラタン、プリンやケーキなどと普段出さぬ黄色い声を上げながら食卓に並べ楽しむ。またまたテンションが下がり箸を付けぬ私には別メニューが並び、そそくさと自室に退散する。私は口に入るものなら何でもいいのだろうと思われている方も多いと思うが、案外デリケートな部分もある耕人なのである。しかし、この栄養価、そしていかなる条件のもとでも敗けずに成長するカボチャは食の救世主と思い、あとわずかで収穫の日を楽しみに放任している。
夕日が西に傾き、景色も一日の終わりを告げようとしている。一向に涼しくならない夕方、最後の作業に入る。朝、少し小さめで残しておいたきゅうりの収穫で一日を終える。作業開始わずかで、汗は低い鼻を伝い顎先から地上に落ちる。朝、涼しげにきゅうりの葉に鎮座していた雨がえるの子供のしっとりとした肌も、猛暑の一日を過ごすと乾燥気味である。間もなく降りる夜つゆが乾燥肌をやさしくパックしてくれるであろう。葉をかき分け見落としのないようくまなく探し、かごの中へ。汗と泥だらけの一日の作業を終え、泥のついた長靴のまま水の流れの速い用水路へ向かう。流水は長靴の泥をきれいに洗い流し美しくしてくれる。
間もなくお盆の行事が繰り広げられる。元来、ご先祖様や亡くなられた方々の供養を各宗派の作法にのっとり粛々と行われた行事も今や夏のバカンスと化してしまった。魂をお送りする夜空への花火もただのイベントとなり、心の中に宿る亡き人々の面影を想う心は、今や過去のものとなりお盆の文化とともに消え失せてしまった。原爆記念日、終戦記念日と続く。広島の原爆は一瞬にして20万の罪のない一般市民の命を奪い、東京大空襲で東京の街は、頭上に落とされた焼夷弾によって火の海となり、一夜にして約10万人が焼け死んだ。各国の代表が大阪に集おうとも、現在の経済学中心の発想では、より多くのものを手中に収めた者だけが贅沢な社会を謳歌し、そこで敗れた者は暴力によって抵抗を繰り返す。まさに経済と平和は反比例をしているようである。世界中の富を手中に収める一つの手段として、世界最高峰の化学者、物理学者が知恵を絞り、競って開発した原子爆弾は、悪魔からの贈り物であった。
かの有名な理論物理学者、アインシュタインが、滞在していたホテルのボーイに、コースターの裏に書いてプレゼントした言葉がある。「意志あるところに道は開ける」。彼の意志の中に美しき世界を想う心、平和を願う祈りの心はあったのであろうか。それは本人のみぞ知ることである。
「正あれば天道人を殺さず」「すべてはお天道様が見てござる」と土を耕し、暑さに辟易する私の耳元に夕刻の風がそっと語りかけてくれる。

「雨ガエル 負けるな耕人 ここにあり」の農場より