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食品公害による日本民族の危機
  

前理事長・医師 梁瀬 義亮



【この原稿は昭和五七年(一九八二年)に慈光会会誌に掲載されたものです。】

健康について

 医学が発達し、年間十二兆もの費用を使ってすばらしい薬や医療設備が駆使され乍ら病人と病気は増加の一途を辿っています。昭和三十年国民千人当りの病人数は三十七・九名であったのに昭和五十五年は百十一・九名となっています。(厚生省発表)。また病気も退行性疾患と云って体が根本的にずるずると腐ってゆくような病気、例えば癌、白血病、慢性肝臓、腎臓疾患、慢性リューマチ、糖尿病、心臓血管系の早期退化、又全く原因も分からず治療の方針もたたない様な病気、例えば膠原病、べーチェット、エリテマトーデス等々がどんどん増えていて国民は常に病気に脅かされています。
 昭和二十三年から二十七年にかけて私は一万人の患者の生活調査、健康村と不健康村の生活調査、大工場の寮生三千八百人の生活調査、及び様々の文献を調べて、病気というものは決して偶然に起こるものではなくて生活と密接な関係があること恰も火事が火の用心と密接な関係にある如くであることを確かめました。生活が正しければ六十才乃至九十才の人間の天寿を健康に全う出来ますが、正しくないと不健康に、病気がちに天寿を全うしなければなりません。更に生活が悪いと天寿も全う出来ずに夭逝してしまうのです。現代医学の欠点は病気を病気という時点だけで見て、生活との連りに於いて見ることを忘れていることです。恰も火事という事件を火事という時点だけで見て徒らに消防車の増強のみを考えて火元の用心の指導を忘れる如きで、火事はいくらでも起こり消防車はやけに走り廻り終には町が消防車の散水で壊れてしまうが如きです。
 私自身の体験ですが、私は子供の時から甘いものが大好きで甘いお菓子を驚くほどたくさんたべ、又野菜嫌いで野菜、海藻は殆どたべませんでした。白いごはんと魚と卵とお菓子の生活でした。そして私は病気に迫め苛まれつづけました。むし歯、はげしい扁桃腺炎、胃腸カタルに胃潰瘍、全身の化膿症、はげしい凍傷、肺炎等々はては肺門淋巴腺結核と云われ永らく臥床しました。様々の大病院でいろいろ検査を受け又手当を受けましたが一向によくなりませんでした。苦しみ抜いた挙句ある漢方医を訪ねました。白砂糖と肉をやめなさい。半搗米と野菜、海藻、大豆をよく噛んでたべなさい。それに少々の魚を添えなさい、とその漢方医は教えて呉れました。私の食生活が新しく変わったのです。間もなく今迄の苦しい、難しい病気はすっかり消えてしまいました。
 病気の予防は勿論、治療にも、生活を正しくすることが基本であって、所謂医療と云われるものは救急的な応急処置であることを私は過去四十年近い診療経験から確信をもって断言できるのです。病気になったら病院へ行って注射して貰い薬を貰ったらよいと考え、日常の生活に注意しない人は恰も火事になったら一一九番へ電話すればよいと云って火の用心をおろそかにする人と同じ愚を犯しているのです。

 正しい生活とは

・・・・・・・・・・  特別の例を除き大多数の人は健康に天寿を全うする生命力を与えられています。がこの生命力が発揮されるためには正しく自然のエネルギーが補給されなければなりません。日光、空気、水、食物等々大自然から何の報酬もなしに与えられるこの恵みに対して吾々は感謝を忘れてはならないと思います。この中、主として食物について申し上げましょう。
 六十年乃至九十年間見事に廻転しつづける素晴らしく精巧な機械、これが吾々の体です。このすばらしい機械は見事に廻転している限り、バイキンの侵入にも、気候の変化にも、はげしい心身の労働にもびくともしません。しかし廻転が悪くなると、まず働く意欲が低下し、疲れ易くなり、肩凝りが起こります。これが発病準備状態で、この時期には病院で様々の検査をうけても大した所見が見出されません。この状態のところへバイキンの侵入や気候の変化や過労がつづきますと歯車がかけたり、銹びついたりして廻転は大変悪くなり、これが病気です。更にひどくなって機械が止まってしまうのが死です。
 機械の廻転が悪くなるのに二つの原因があります。第一は油ぎれです。第二は砂や埃等の異物の混入です。人体に於いて前者に当たるのが私達の食生活の中の欠乏で、後者に当たるのが毒物です。

 食生活の中の欠乏について

 食生活に於ける欠乏に二つの原因があります。その第一は野菜や果物を食べないためにビタミンや鉱物質(カルシウムや鉄等々…以下ミネラルと云う)が不足して健康を害したとか大豆や動物性のものが足りなくて蛋白質が欠乏したとか云った類いのどなたもよく知っておられることで、所謂食事パターンの誤りです。
 明治以来欧米を無批判に真似ることにより様々の弊害が現れましたが、食事パターンに関する猿真似はその最たるものです。水成岩性のアルカリ土壌、従って土地にも水にも農産物にもミネラルの豊富な大陸に住み肉をたべつづけてき来た牧畜民族である欧米人の食生活を、火成岩性の酸性土壌、従って土地にも水にも農産物にもミネラルが欠乏し易い島国に住む農耕民族で米、麦、野菜、海藻、大豆、それに魚を食べてきた日本人(例えば日本人の腸は欧米人に比して遥かに長い等々体が異なる)がそのまま真似るとミネラル欠乏、ビタミン欠乏等を起し、新陳代謝障害が起るのです。これが近年著しい日本人の体力低下、骨折、むし歯の多発やいろいろの病気が大変多いこと、はては精神不安定等々の大きな原因の一つと考えられます。カロリーと動物性蛋白、従って白米と肉のみを重要視し、野菜や海藻を付け合わせと軽視する日本の現在の栄養概念を速やかに改めて、三乃至五分搗きのくろい米、麦(雑穀を混ぜると更によい)と野菜(特にグリーンの菜っ葉類や根菜や豆類…等々)、海藻(佃煮や塩昆布等加工したものは効甚だ少い)と大豆(煮豆は消化が悪いのでよく噛むこと。味つけには白砂糖を少なくし、黒砂糖を混ぜること。キナ粉や納豆は消化がよい)を中心として、これに適量の魚、卵、乳等を添えるとよいのです。肉はうんと少なくする方がよいと思います。(私は三十年以上患者のたべものをいちいちしらべてきましたが肉食の多い家庭には大病が多いのです)。
こうして一年もすると病気はうんと少なくなり、体力もつよくなります。(以下、次号に続く)
  

慈光会定期大会報告
  




 七月一八日日曜日、少し小雨の降る中、慈光会定期大会は開催されました。
 会場には慈光会の地元の会員の方始め、新聞等の案内で初めて慈光会を知って訪れて下さった方、又、名古屋や神戸、大阪など遠方からの会員の方々がお集まり下さり、五條市民会館大ホールの全席が埋め尽くされる盛況でした。
 始めの挨拶で理事長は、公害が一向に改善されず、ますますひどくなって来ている現状と、公害は人間の心から生まれるものであることに触れ、「慈光会は初心を忘れる事なく、純粋にこの運動を続けて行く所存です。」との決意を語りました。又、ベートーベンの「私の音楽は病める者、悩める者、苦しむ者のために捧げられよ」という祈りが、まさに慈光会運動の求めるものと重なるものであることを述べました。
 今年は梁瀬先生の七回忌の年に当たりますので、今回の大会では、先生の詩と散文の朗読が音楽の間に織り混ぜられました。
 先生の遺された詩は、音楽の音色と共に、会場を埋め尽くした人々の心の中に静かにしみとおっていったことと思われます。多くの方々から、沢山の感想が寄せられました。 「市民ホールを出ても、みっともないほど涙が止まりませんでした。」と言われた主婦の方。 「生まれて初めて、音楽会でこのような感動を受けました。人生の中で本当に思い出に残る日です。」と若い学生の方。 「初めて大会に参加させて頂きましたが、こんなに素晴らしいのなら、以前の大会にも参加させて頂けば良かったです。」と遠くからお越し下さった県下のグループの方。
 一方、祈りを込めて演奏をして下さった牧村照子氏も「会場の方の心の温かさが伝わってきて、本当に感動いたしました。拙い演奏を聴いて頂いて、皆様に心より感謝しております。」と何度もおっしゃっていました。ピアノの牧村英里子さんとチェロの池村佳子さんも、その若々しくみずみずしい演奏を終えて、演奏会全体から、深い感銘を受けられたそうです。
 演奏者と聴衆が共に何かを受け止めさせて頂いた大会とさせていただきましたことを心より感謝せずにはいられません。今後とも皆様と共に謙虚に歩ませて頂けますよう、祈るものです。
 尚、この大会で朗読いたしました詩は、すべてプログラムに載せさせて頂きましたので、どうぞ当日の思い出と共に、是非読み返して下さい。(受け取られてない方、おいでになれなかった方でご希望の方は慈光会までお申し出下さい。)
  

☆今月のテーマ☆

外出には「飲み物持参」で

 


 「日本原子力文化振興財団」が先日新聞紙上で「自動販売機で使う電気はどれくらい?」という広告を載せていました。
 それによると現在日本国内に設置されている自動販売機は飲料用だけで二六〇万台にのぼり、その消費電力は年間七八億KWhで、これは名古屋市民がまるまる三年以上暮らせる電気の量に相当するそうです。広告は「この電気をまかなうためには、一〇〇万KWの原子力発電所が一基必要とされています」と結んでいました。
 いつでも冷たい飲み物が飲みたい、という人間の小さな欲求を満たすために一〇〇万KWの原発を一基稼働させているこの現実を、会員の皆様はどう受け取られるでしょう。あまりにも贅沢で、環境や子孫への配慮に欠けていると思う方が大半ではないでしょうか。
 簡単な対策があります。
 出掛けるとき飲み物を持参すれば自動販売機を使う必要がありません。小型の携帯魔法瓶等に好きなものを入れて持ってゆけばよいのです。
 さらによいことには、魔法瓶や水筒は、空き缶・空き瓶公害を出しません。(金属製やガラス製の製品を選べばその材質はリサイクル可能です。)
 そして何よりも安心なのです。よい性能の浄水器を通した水で無農薬のお茶やコーヒーを入れれば環境ホルモンの心配もなく白砂糖の摂りすぎを案ずることもありません。又、自販機やコンビニに毒入り飲料が置かれニュースになる時代には、飲み物持参は私たちにできる確かな自衛策ともなりましょう。
 もう一つのメリットは大変経済的だということです。何げなく自販機に入れている一〇〇円玉も再々になると以外に大きなお金になっています。特に中高生のお小遣いに占める割合は大きいことでしょう。
 飲み物を持参するということは、実行してみると、案外簡単に習慣にすることができます。
 三人の子供さんと車で出かけるとき必ず魔法瓶にお茶を入れて持ってゆくという慈光会の会員の方は、「こうやって魔法瓶を持って行くと、自動販売機を使わなくて済むし、空き缶も出さないし、第一健康に良いのよ。市販のジュースを飲むと白砂糖のとりすぎになりますからね。」と子供さんたちに言って聞かせるのだそうです。これは環境教育にも、健康教育にもなっている、と感心させられました。
 又、会員のOLの方は小さな容器にお茶を詰めて外出時に利用しておられるそうです。
 ある評論家が、「車の遠出の際に必ず一 入りの魔法瓶を二本持ってゆき、一本には熱いコーヒー、もう一本には冷水を入れてゆく」という文を新聞に載せておられました。この方は、街に出るときはスリムな〇・五 入りタイプに水かお湯を入れバッグにしのばせるそうです。「自販機は使わない主義。環境にも悪いし美観を損ねる。外でお金を払って飲むのはお金と時間の無駄。」と、はっきりとしたポリシーを持たれ、実行しておられます。
 中国へ行って来た方のお話ですが、向こうでは水筒のようなものにお茶葉を入れ、携帯する方が多いとか。お湯は町のあちこちで常備されているので、持参の水筒にお湯を注いで、手軽にお茶を頂くのだそうです。国によっては、このような工夫もあるのですね。
 慈光会の第二回学習会で「消費者の買い物行動がメーカーを動かす」という事を学びましたが、一人の人が自販機を使う回数を半分に減らしたなら、やがてそれはメーカーや小売業者を動かす力となってゆくことでしょう。
 学者の説によれば「買い物をするということはその製品を生産した企業に一票を投ずること」という意味を持つそうです。自販機を使う度に「自販機賛成」という一票を投じていることになるわけですね。こんな一票は投じたくありません。私たち消費者は「消費行動によってメーカーを動かす」という大切な一票を、さらに賢く使いこなしてゆきたいものです。
 自販機は使わないというポリシーを持って、少しでも自販機使用の回数を減らし、「外出には飲み物持参で」という小さな運動を、身近なところから実行してみて下さい。
       
  

 慈光会第2回学習会 環境ホルモン講演
  

日本子孫基金運営委員 三宅 征子




身近な「環境ホルモン」の調査

哺乳瓶

 私たちは、これから環境ホルモンの影響をより多く耳にし、そしてその影響を考えていかざるをえないという状況にあります。そこで「どういうものから優先的に避けていかなければならないか」ということを考えたときに、実験・調査の対象として、人体に入ったときの影響が大人より子供、子供よりさらに乳幼児に大きく出るということで、まず赤ちゃんの哺乳瓶の調査を最初に取り上げたのです。赤ちゃんの哺乳瓶は、これまではプラスチック製のものが多く使われて出回っていました。そしてこのプラスチック製の哺乳瓶は、ポリカーボネートというプラスチックで出来ています。この赤ちゃん用の哺乳瓶のプラスチックを調べたところ、メーカーの違うものをあるだけ買い集めてきたのですが、そのすべてから環境ホルモンといわれる「ビスフェノールA」という化学物質が検出されたのです。ビスフェノールAというのはポリカーボネートの原料で、缶詰の内面塗料として使われていたり、あるいは、紙パックの容器の内面にも使われているエポキシ樹脂の原料でもあります。このビスフェノールAというのは、女性の癌の中でも乳癌との関連が非常に強いものと言われている物質です。それが赤ちゃんの哺乳瓶全てから溶出したのです。私たちは『食品と暮らしの安全』という小冊子を毎月会員向けに出しているのですが、この中でその結果を報告すると同時に、「哺乳瓶はすぐにガラス製のものに切り換えてください」というコメントを提言したのです。メーカーも今は少しずつ動きが出てきております。また、このポリカーボネートは厚生省が発表したデーターでは、全国の四割の学校が給食の食器として使っているということで、それも早急に切り換えていく必要があると思います。

おもちゃ
 赤ちゃんの哺乳瓶に続いて私たちが検査したのは、「赤ちゃんのおもちゃ」です。さまざまなおもちゃがありまして、最近では「歯固め」という、歯が生えはじめた頃の赤ちゃんが、口に入れて噛んだりするのにちょうどいいような形で作られたおもちゃがあります。これは「赤ちゃんが口に入れること」を前提にしたおもちゃです。そういうものであれば当然より安全な素材でなければならないにもかかわらず、「塩化ビニール」という「そもそもが発ガン性がある」と言われるような物質が使われているものがかなりありました。これは私たちがデパートなどに行って買い集めて調査したわけですが、赤ちゃんのおもちゃには到底不向きと思われる物質が使われていることがわかり、これも問題として提言、コメントをつけて発表しました。塩ビ製品、塩化ビニール製品には様々な添加剤が加えられるのですが、その添加剤の中のフタル酸エステルという物質は、塩化ビニールの中に半分近くも入っていて、添加剤ではなく原料の一つと言えるような位置づけにあります。このフタル酸エステルは環境ホルモンなのです。そういうものが赤ちゃんのおもちゃに使われているということは、絶対許されないことで赤ちゃんのおもちゃを選ぶときは、そういった塩化ビニール製品は絶対に選ばないように、ということを発表しました。どうしてもプラスチックのものを選ぶとしたら、現在のところ程度の差だと言えますが、比較的安全と言われているポリエチレンか、ポリプロピレンというプラスチックです。ただ出来たらプラスチックではないものの方がいいと思います。プラスチックに代わるおもちゃとしては、木製のもの、それも表面に塗料が塗られていないもの、塗料の多くはプラスチック製ですから、無垢の木のものがいいのではないかという提言をしたのです。でも、できたらそのそういう塩ビ製のもの、プラスチック製のものがほとんど市場に出てこないような働きかけが求められているのではないかという風にも思っております。赤ちゃんのおもちゃは親が選ぶわけですから、そういうところに十分配慮して選んでいきたいものだと思います。          (以下、次号に続く)

☆癌が増えています。


imo,mame,nappa,& kaiso  完全無農薬有機農法の野菜(菜っ葉、根菜共)には、癌を防ぐ強い作用があります。イモ、マメ、菜っ葉、海藻等をしっかりお召し上がりください。      


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