慈光通信#112-#152



命の食と農を求めて
  

前理事長・医師 梁瀬 義亮



【昭和61年 於 京都エミナースホール  「食・農・いのちを考える講座」】

化学肥料は野菜をだめにする


 我々の体というものは、酵素がギアのように見事に絡み合って、一生の間回転するすばらしいエンジンなのです。病気はそのエンジンがうまく回らなくなった時の状態です。
 では、どういった時にエンジンが回らなくなるかと言うと、まず第一に、オイルがきれた時です。これは欠乏です。食べ方によっておこる欠乏がないようにしなければいけません。つまり生命が生命力として具体的に発現する時に、自然からいただくエネルギーが、オイルのように我々の体に入っていないといけないのです。
 第二番目は、悪いオイルが入っている時です。つまり、自然にない毒物 、例えば合成化学薬品が入るとダメです。
 だから、病気は食生活を正せば半年から一年で治る例が多いのです。食べ方によっておこる欠乏を防ぐために、先ほど申し上げたように、芋、豆、菜っ葉、黒いごはんを食べること。そして化学肥料ではなくて堆肥でつくった農作物を食べることです。
 私は昭和二七年の秋に、自分で農業の研究をして化学肥料の害を知ったのですが、化学肥料で作られた野菜は野菜じゃないですね。ビタミン、ミネラルの含有量が違います。それに文献を調べていてわかったことですが、ドイツやオランダでは、受胎率が悪くなるので、種牛には化学肥料で作った牧草は食べさせないそうです。
 医学が生命を無視した分析中心だったのと同じに、農学も分析中心で生命という要素を忘れていたわけです。植物を、生命を抜きにしたメカニックなものとしかとらえていなかったのです。また農業は本来、人間の生命と健康のためにあるべき物なのに、それを忘れて量的な生産性や形のいいものを作ることだけを目的としたのです。

農薬で死ぬのは益虫ばかり

 
 そう言った目的で化学肥料が使われだしたわけですが、その後研究して行くと、化学肥料を使っても生産性が上がるのはその直後だけで、後はだんだんダメになるということがわかりました。
 農作物につく害虫と益虫がありますが、農薬を使うと、害虫も益虫も皆殺してしまいます。しかし、草食性の昆虫である害虫は生命力が強く、これに反して、肉食性の昆虫である益虫、つまり害虫を食べる益虫は生命力が弱いから、結局は益虫の数だけが減ってきます。また、農薬を使いだして四〜五年もすれば抵抗性害虫が増えてきます。害虫を殺すために農薬を使うのに、滅亡するのは益虫だけということになり、結局農薬を使えば使うほど害虫が増えるのです。
 私の住む地方では柿を作っていますが、はじめは農薬を二回もまけばとてもいいのができました。しかし、三〇年たった今は一〇回以上農薬をまかないと、いいのができないのです。これは害虫が抵抗力をつけてきたからです。そして、当初害虫は二種類しかいなかったのが、今は七種類にも増えてきています。化学肥料と農薬を主体にした近代農法から生まれたものは、毒食と欠乏食でしかありません。
 いまバイテクとか言っていますが、私はバイテクで作られたものも、なんらかの欠乏があって、その欠乏によって必ず病気がでてくると考えています。また太陽光線の代わりにナトリウムランプを使い、化学肥料で育てた作物など、自然をはずれて、人間は生きられるはずがないのです。
 そして、こういった体の外からの毒物の他に、体の中からでてくる毒物もあるということも付け加えたいと思います。
 よく、健康に気をつかっている人の集まりに行って、お話しをさせていただく機会があるのですが、集まった人にどこか元気がない場合が多いのです。あまり何々健康法といってカンカンになって、その健康法のために命を忘れてしまっているんですね。もっと大らかに、大自然の法則に従って生きればいいのです。。できるだけ自然に従って生活していて、あとは死んでも何でもない、という精神的な正しい世界観を持つことが大切だと思います。  

無農薬農法はいいことづくめ


 農薬、化学肥料の害をずっと話してきましたが、私は、昭和三四年以来、完全無農薬有機農法の研究をして、無農薬農法が可能かつ極めて有利なことを知りました。
 人類の歴史で何千年もの間無農薬でやってきたわけですから、無農薬でできるはずなんです。農薬を使って昆虫の生態系が変わってしまい、土が弱ってしまっている現在でも大丈夫ですし、その上に有利だという証明ができたのです。
 土を殺し、益虫を殺し、人を殺す近代農法に対して、完全無農薬有機農法ではいいものができ、量も多く人手も少なくていいという、いいことづくめなのです。完全無農薬有機農法で、労力的に農家の経営が耐えられるものかといったてんが心配されますが、私のところの慈光会の直営農場では、四ヘクタールをたった一人でやっています。また支出・収入等経済面でも有利です。
 では、どうしていいことづくめなのに、協力農家が一二件だけなのかと言うと、農村では、お上に逆らって変わったことをするものではないという強い風潮があるからです。
 しかし、この農法は全国に広がっていますし、外国にも広がっています。特にアメリカでは、農薬の慢性の害がよくわかっています。アメリカ全土、なかでも特に穀倉地帯のイリノイ州の農地が、三分の一も砂漠化してしまったと騒がれています。近代農業が土を殺すということがはっきりしているわけです。日本の田畑の土も、NHKテレビで放映されていたように、死につつあります。
 残念なことに、このような危機が起きているのに、経済的な歯車が、この狂った近代農法で動いていますから、政府レベルで止めるのは現在不可能です。だから国民レベルで止めないと、子孫に申しわけないのです。このままでは破滅です。個人を守ると同時に、民族を守るという意味で努力して欲しいものです。

  

慈光会のジュースのお知らせ
  

慈光会の梅ジュースとみかんジュースは、どちらも、慈光会が三〇年来完全無農薬有機栽培で育てた、梅とみかんを一〇〇%使用したオリジナル商品です。安心でおいしい本物の味をご賞味下さい。
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やさしいエネルギーご存じですか? 
  



   前号では、牛舎や豚舎から生まれる「バイオマスエネルギー」 についてご紹介しました。今月号ではまだまだ沢山ある「やさしいエネルギー」を探して、再び国内外を訪ねてみたいと思います。

   ごみ埋立地からもエネルギーが!  デンマークの例です。ごみ埋立地の中に、年四万トン捨てられていた生ゴミのような有機物に注目しました。有機物が埋めてある埋立地の地表から地中に向かって、穴のあいたパイプを埋め込み、発生しているメタンガスを地上のポンプ小屋に吸い集めます。このガスを周囲の町や村に熱源用ガスとして送るシステムが作られ、一九九〇年から作動しています。余剰のガスで発電機を回し、生まれた電気はポンプ小屋で使われたり、各家庭に配電線で送られたりして利用されています。ガスの発生量は収集を始めてから二〜三年がピークですが、今後二十年はガスを確保出来る見通しだそうです。このようなゴミ埋立地に作られたメタンガス利用施設は十八箇所あり(十八箇所合計で、三十六万KWh)、まさにエネルギーを得るために「規模は小さく、方法は多様に」(小規模分散型)を実践した例と言えましょう。

   小水力発電

   今度は日本国内です。群馬県前橋市を訪ねてみましょう。

   水力発電は大規模なダムを作って行うものばかりではありません。前橋市では広瀬川農業用水路で水路の落差を利用し、七カ所で小水力発電を行っています。この方式は十 前後の落差を利用した「流れ込み式発電」と呼ばれるもので、ここで作られた電気は三万世帯、十万人に供給されています。農業用水路だけでなく工業用水道、砂防ダム等もこの方式に利用することが出来ます。小水力発電では巨大ダムの建設が不要なので下流の生態系に影響する事なく発電が可能になるのだそうです。これを全国的に行えば、原発十基の発電量に匹敵する電気が生まれるそうですから、これから十分注目出来るシステムと言えましょう。

   風力発電

   再びデンマークの例です。デンマーク北部は風が強いので有名な地帯ですが、この強い風を利用して八十年代より風力発電が著しい普及を遂げています。当初は、国内の必要量の一〇%(三十二億KWh)を風力でまかなうと決定されていたのですが、風力発電機を研究開発した結果、大変効率が良くなり、将来は五〇%を風力でまかなうと、修正決定されました。現在、デンマーク北部では消費量の八〇%を風力でまかなっているそうですので、全国の必要量の五〇%(百六十億KWh)を風力でまかなう日も決して遠い未来ではないでしょう。又、風力発電機の研究開発が大変進んでいて、建築コストは日本の1/2。世界の風力発電機の四八%がデンマーク製で、風力発電機が輸出品目の第三位を占めているそうですから、デンマークは、まさに風力発電先進国と言えましょう。

   日本でもこの風力発電機を輸入して、実際に稼働させている町があります。山形県立川町は七年前から九つの風力発電機を設置していて、同町の消費電力の三〇%に当たる三千五百KWを発電しています。長年住民を悩ませて来た奥羽山脈から吹きおろしてくる強風を逆手にとって、風力発電を実現させたのです。立川町では将来一〇〇%を風力発電で賄うことを目標にしています。現在立川町の売電収益は年間六千万円。(電力会社に買い上げられている。)今後は目標に添ってさらに風車を増やし、クリーンなエネルギーを生み出すと共に、その収益を福祉や教育等に生かそうと検討されているそうです。又、同町は六年前、風に悩む自治体に呼びかけ「風サミット」を開催しました。当時三百人もの人が集まり、現在、立川町に続こうとする自治体は四十四にのぼっているそうです。

   その自治体の一つ、北海道の苫前町では、「風サミット」に参加したことが契機となって、現在ウインドファームの建設が進んでいます。完成した暁には四十二基の風車が五万二千八百KWの電気を供給するようになる予定で、これは現在では国内第一の規模となります。

   北海道ではその立地条件がデンマークに似ているため、風力発電への取り組みが大変盛んなのです。これからの発展が大いに期待されるところですね。

   次号では「コジェネ」(電熱併給システム)を始めとする「眼からうろこが落ちるような工夫」をご紹介してゆく予定です。まだまだ「優しいエネルギー」へアプローチする道は沢山あるのです。どうぞお楽しみに!

 
  

☆ 醤油が新しくなりました。


この度、慈光会の念願でありました国内産無農薬有機丸大豆を使用した醤油が出来上がり、会員の皆様にお届けできる運びとなりました。国内産有機丸大豆は大変高価なため、やむを得ず値上げさせて頂きましたが、価格はできるだけおさえて設定させて頂きました。(同等品と比べて頂ければお分かりと思いますが破格の値段です。)国内の農業を支えるという意味においても、ご理解の上、今後とも慈光会の醤油をご利用下さいますよう、ご案内申し上げます。

  慈光会特製国産無農薬丸大豆醤油

一ケース(一二本入り)一本(0.九 ) (税込み価格)五八五円

五ケース以上一本  (税込み価格)五六〇円

十ケース以上 一本 (税込み価格) 五三五円

  ※醤油のラベルはしばらく従来のものをそのまま使用させて頂きますが御了承下さい。

  ※送料は商品代と共に請求させて頂きます。

慈光通信#112-#152