前理事長・医師 梁瀬 義亮
(一九八四年年七月一日 慈光会第十回定期大会での講演記録です)
ご多忙中を会員の皆様多数おいでいただきまして厚く御礼申し上げます。
平素は会員の皆様に大変ご協力いただいています。お陰様で慈光会の運動を始めましてから既に二十五年、財団法人の認可を得ましてから既に十三年になりますが、私等のささやかな真心の運動が国を憂へ民族を憂うる全国の有機農法実践の農家の方々の技術的な或いは精神的な寄り処にならせていただけた事は本当に光栄に存ずる次第でございます。
十年前、第一回日本有機農業研究会全国大会がこの会場で行われました。又、本年六月には全国有機農業研究会の主だった方々の研究会が、慈光会の農場・販売所をテーマに五條の緑水苑で行われました。会員の皆様のご協力のお陰で慈光会がいろいろのお役にたたせていただけることは誠に有り難い事でございます。
さて、生産者と消費者そしてその間に立つ販売所の人々、皆夫々の立場がありますが、それぞれ自分の立場と共に相手の立場を尊重すると云う精神で『和を以て尊しとなす』をモットーに我々は今までやらせていただいて来ました。勿論今後もこの精神を推進するのでございますが、これは
専ら民族の危機、或いは可愛い子や孫たちの将来の為にこの食品公害の世の中の木鐸とならせていただく事を願ってのことでございます。この運動は生産者が欠けても、消費者が欠けても、或いは直営農場が欠けても、又販売所が欠けてもどれ一つ欠けても出来ない運動でございますので、どうぞ今後も益々のご協力をお願いする次第でございます。 扠、本論に入りまして、題目に挙げましたように「癌多発の恐怖の時代に如何に処すべきか」と云う題で私の今までの経験と僅かながらの研究を申し上げて皆様の御家庭の或いは周りの方々の健康指導の材料にしていただきたいと思うのです。
現状はご存じの通り、医療費は年間十三兆円以上というびっくりするような大金を使って大変な研究をやり、立派な病院を作り、すばらしい薬をつくって医学は大変進歩しました。ところが医学の進歩と裏腹に病人の数、病気の種類は益々増えてくる一方です。厚生省の発表によりますと、昭和三十年には国民千人当たりの病人の数は三十七・九名だったのです。これが昭和五十七年には百三十八・二名というような全く桁外れの数になっております。病人の数が多くても、流感とか、チフスとかのような急性の病気で多くなったのだったら、治れば又元気な国民が出来るのですが、現在どんどん増えている病気は退行性疾患、即ち人間の体の細胞が退化してしまうような病気です。これは癌、白血病、慢性の肝臓病、慢性の腎臓病、心臓血管系の病気、糖尿病、或いは重篤な内分泌疾患、こう云ったようなものですが、特に最近恐ろしい事は癌の異常な多発と、その他の原因も手当の方法も分からないような難病、奇病即ち膠原病、ベーチェット、エリテマトーデス等々の続発であります。いくら医学が発達したと云っても、病人が増え、病気が増えたのでは医学は失敗です。一体医学は何をしているのだと云うことになります。たとえ薬がなくても病気がなくなり、病人がなくなったら医学は成功なのです。
本日テーマにしました癌の問題でございますが、昭和四十五年には十五万四千人の人が癌で死んだのです。昭和五十五年には十六万人の人が亡くなりました。約六千人増えたわけです。それから昭和五十六年には又五千六百人増えまして十六万五千六百人の人が癌で亡くなって、この年に癌による死亡が他の病気を引き離して死亡の第一等に躍り上がって来たのです。以前から日本は脳卒中で沢山死ぬことで世界で有名でしたが、其の脳卒中を追い抜いて癌が国民死亡の第一位に上がって来たわけです。昭和五十七年になりますと今度は一万人増えました。十七万四千八百人が癌で亡くなっており、五十八年にも更に七千六百人増加して十八万二千人が癌で亡くなっております。このようにどんどん癌による死亡者が増えてきております。現在死亡者の四人に一人が癌で死んでいると云う状態で、まだまだ増加する気配が濃厚で全く恐るべき事態です。それから昭和五十五年以降子供の死亡する病気もやはり癌が一番になっています。いたいけない子供が癌で死んでゆくという事は全く見るに忍びない事です。五條市でも数名の可愛い子供が癌で亡くなったのを私、知っております。これを如何にして防ぐかという事を一緒に研究させていただきたいと思うのです。
(次号に続く)
山口 博文
今膨大な量の建築廃材の処分が問題になっています。
私達の身近の野山にも不法投棄されたゴミの山が目につくようになりました。 このような中で家を建てること、そしてその家を取り壊した時はどうなるのかを私達は考える必要があります。
そこでアメリカやオーストラリア、そしてニュージーランドのエコロジスト達の間で静かな広がりをみせているストローベイル・ハウスを紹介しましょう。
勿論、屋根に苗を植えている家ではありません。
藁とか麦カラ、干し草を牧場のベイラーという機械で圧縮したブロックを造りそれを積み上げてゆくものです。
な〜んだ ワラの家かと思うかも知れません。 ─でもこれが優れものなのです。 積み上げた藁や干し草の壁の両側には土を塗り、更には防水防火を兼ねて漆喰や粘土を塗ります。
天井は梁の上に板を渡し藁とか草をたっぷり敷き、その上に屋根を架けます。いわば日本の倉に窓を付けたような建物でしょうか。
さてこのシンプルな家の特徴をあげてみましょう。
まず素人が簡単に造れる。壁が厚いから断熱効果が抜群に高いので冬暖かく夏涼しい。木材の使用が少ないので森林の伐採が最小ですむ。森林は再生するのに何十年もかかるが草は一年に三回は刈れる。取り壊しても自然に還る。莫大な借金を背負わずにすむ。
このエコでクリーン、ナチュラル、ローコストな住居、古いものでは百年経つものもあるといいます。勿論この工法を地震の多い日本にそのまま建てることができないかも知れませんが、取り入れる点は大いにあると思うのです。
化学物質の心配なく心身ともリラックスでき、美しい自然がこれ以上汚染されることのないような家造り、これこそが地球に優しいこれからの住居ではないでしょうか。
《三月二五日(日)於慈光会販売所二階》
「今、私たちに起きている奇妙な出来事」
第一回「ダイオキシン」、第二回「環境ホルモン」というテーマに続き、第三回学習会は「今、私たちに起きている奇妙な出来事」というテーマで開催させていただきました。
当日会場には40名程の方が集まられ、始めに「奇妙な出来事アトピー」という映画を見ていただきました。
この映画で使われている「アトピー」という言葉は、ギリシャ語で「奇妙な」という意味を表しています。つまり、単に、アトピー性皮膚炎だけを指すのでは無く、私たちの周りに起きている「子供たちの体の異常」「喘息等の様々なアレルギー症状」「ATFSと呼ばれる行動異常」「不妊症・流産」等の「奇妙な出来事」全般を指しています。
映画では、これらの奇妙な出来事と現在乱用されている「合成化学物質」(合成添加物・合成洗剤・農薬・又、卵、肉等に残留する医薬品、ホルモン剤等)との関連性に大きくスポットが当てられていました。
[合成添加物との関連]
耳慣れない言葉ですが、「ATFS」(アレルギー性緊張弛緩症候群)といわれる「行動異常」の患者さんが、出演されていました。若い女性の方ですが、様々な症状を訴えておられ、その中でも「月に一回三日間くらい、とにかく腹が立ってしょうがない。」ということを言っておられました。その症状は、合成添加物に注意する生活を二年位続けるうちに随分良くなって来た、とのことでしたが、ここでも合成化学物質が、私たちの脳(感情のコントロール)に多大な影響を与えていることを、お医者さんが指摘しておられました。映画では、これらのことが、現在の子供のいじめや、暴力事件と関係があるのではないか、と疑問を投げかけていました。
学習会では「ATFS」に注目し、
◇合成添加物の毒性、
◇三才児まではとくに注意が必要なこと、
◇天然添加物について、
◇添加物の五段階評価の参考書、などについて補足させて頂きました。
[合成洗剤との関連]
映画の中で産婦人科のお医者さんが、「一ヵ月間で当院に来院した妊婦さん、三五人のうち八人もの方が流産になりました。その原因は合成洗剤です。」とおっしゃっている所があります。そのお医者さんによれば、合成洗剤は新陳代謝の盛んな卵巣、精巣に大きな悪影響を与え、流産、不妊に大きく関与している、とのことでした。 現在、私たちの周りでも、不妊、流産で悩んでおられる方が大勢いらっしゃるように思います。
余談のなりますが、宅配の会員の方で不妊症に悩み、「会員の皆様のご参考になれば」ということでお話しをして下さった方がいらっしゃいます。
「二度続けて流産し、次の妊娠で生まれた子は大変ひどいアトピー性皮膚炎でした。梁瀬先生に診察して頂き、『この子は合成洗剤の子です。』と言われました。」とのお話しでした。
その後、梁瀬先生の指導の下、農薬、合成添加物、合成洗剤等を体に入れない生活を心掛け、すっかりアトピーも治った子供さんは、現在、大学生になっておられます。それでも、本人が油断して、ファーストフード等を食べると、アトピーのぶつぶつが出てくるのだそうです。「アトピー性皮膚炎の症状が出ると、それは食生活の善し悪しのバロメーターになっているんですよ。」とお母さんはお話しして下さいました。
学習会では◇合成洗剤の毒性、◇体への侵入経路(口の粘膜からは普通の皮膚の一三倍も侵入してくるので、特に小さい子の歯磨き剤に注意)◇合成洗剤と石鹸の見分け方等、補足学習致しました。
[農薬との関連]
農薬の恐ろしさの一つに、「脳神経毒作用」があることに注目致しました。これによって、情緒障害や精神障害が引き起こされ、原因の分からない犯罪や自殺が多発してきます。
もう一つの恐ろしさは、体の諸器官に影響をあたえ、慢性の新陳代謝異常的病気、即ち、リューマチ、膠原病、慢性肝炎、慢性腎炎、内分泌(ホルモン)の病気、動脈硬化を引き起こし、果ては、癌や白血病の原因にもなる、ということです。この梁瀬先生の臨床からの指摘を紹介させて頂きました。
さらに、農薬の環境ホルモン作用による胎児に及ぼす影響(脳の発達阻害・免疫機能の不全・骨の発達阻害・生殖器の異常)についても補足させていただきました。「免疫機能不全」とは、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギーのことですので、映画の中のアトピーの子供たちはこの農薬の影響をお母さんのおなかの中で受けてきたことが充分に考えられる訳です。アトピー性皮膚炎は、お母さんの体の中から赤ちゃんが引き継いで来た公害である、ということもできましょう。
環境ホルモンはごく微量で作用し、先天的な異常を引き起こすため、これから子供を生む世代の男女は、農薬等の合成化学薬品を体に取り入れないように特に注意を払う必要がある、との専門家の指摘も紹介させていただきました。
そのほかにも、◇家庭にひそむ農薬の注意、◇遺伝子操作食品のBt殺虫剤がアトピー性皮膚炎を惹起することが明らかになっている点、などが付け加えられました。
私たちの子供や孫達を健全に育てるためにも、このような合成化学物質を使わないライフスタイルに切り替えることが、私たちに課せられた大きな責任になると思います。それは単に自分や自分の家族の健康を守るだけでなく、人類の未来や、地球の環境を守ることにもつながります。
これらのことを、一人でも多くの方に知って頂くため、慈光会では、ご希望の方に、当日上映したビデオの貸し出をさせて頂きます。(無料。送料のみご負担下さい。)又、慈光会でまとめました資料を一緒に差し上げます。皆様の周りで、アトピーやアレルギーに悩んでおられるかたがありましたら、是非一緒にご覧になってみて下さい。(資料のみご希望の方も販売所までお申し出下さい。)