癌多発の恐怖の時代に如何に処すべきか!(4)
  


財団法人慈光会 前理事長・医師  梁瀬 義亮



(一九八四年七月一日 慈光会第十回定期大会での講演記録です)

 現在、分子生物学という学問が発達してまいりました。今まで生物学は細胞を電子顕微鏡で見
る位が最も微細な分析でございましたが、現在分子の世界にまで入り込んで生物を研究してゆくと
いう生物学です。この発達と共に分子医学という医学も発達してきたのです。そしてこれによって
明らかにされた事は、先程私が申しました事と同じです。そしてアメリカ・西ドイツ・スエーデン
・イギリス等世界の一流の癌学者が叫んでおられることは、「癌の克服は予防以外にない。そして
その予防は生活を正しくする事である。」ということです。アメリカでは日常生活の矯正というこ
とが実行に移される段階に来ていて、そういう立法が今なされているという事を知らされておりま
す。又最近除草剤の害が盛んにいわれています。これは私等の生活の水を脅かし、その外いろいろ
な面から我々の健康を脅かしているのです。それでも除草剤なしでは農業は出来ないといって、ど
んどん除草剤を使うような指導がなされておりますが、アメリカでは愈々除草剤を中止するように
なったということが新聞にありました。日本も早く国民の健康ということを最優位において施政が
成されねばならないと思います。このために世論はもっと生命、健康ということに敏感でなければ
ならないのです。生活を正しくすること、これが癌の予防の最も大事な方法なのであります。分子
生物学で解った癌のメカニズムについて申しますと、ご存じのように人間の体は二百兆という天文
学的な数字の細胞から成り立っております。細胞にはご存じのように真ん中に核があって、これ(
核)が細胞の生命の元であります。その中に染色体がございます。この染色体の各々の中に何万と
いう遺伝子が入っておるわけです。遺伝子の詳しい化学的な分析は現在殆ど全部出来ているらしく
又それ等がどのような形で遺伝子を作ってきているかも分子医学でわかっているようです。この何
万という遺伝子によって遺伝が行われ人間の形成がなされるわけです。ところがこの遺伝子の中に
癌を発生する遺伝子があります。二百兆の細胞のどの細胞にも全部癌細胞の蛋白質の合成を指令す
るところの遺伝子があるわけです。だから身体中どこにでも癌が出る可能性があります。ちなみに
癌が発生する遺伝子は人間だけではなくて、犬や猫や蛙、或いは鶏等の脊椎動物にもあるそうです
。もっと下等動物にはありません。然らばなぜ癌が皆に発生しないかというと、癌を発生する遺伝
子(癌性の遺伝子をオンコジーンといいます)と共にこの癌性遺伝子を抑制する遺伝子が又あるの
です。この抑制の遺伝子があるが故に我々は癌にならないのです。しかし何等かの理由でこの癌性
遺伝子を抑制しておる遺伝子の働きが止まり、枷が外れますと、とたんに癌の遺伝子の働きが始ま
って癌が発生するのです。癌遺伝子の働きを抑制しておる抑制遺伝子の働きを阻害する物質は一種
のホルモンであることがわかっています。問題はそういったホルモンを体に於いて造らせるような
要因、これが癌の原因になるわけですから、癌というものは決して一つの原因で起こるものでない
という事がわかるのです。
 今までの私の臨床的な経験から申しますと、生活の誤りから抑制の遺伝子の働きが止まってく
るという事が申し上げられます。癌の抑制遺伝子の働きが止まり、癌遺伝子の命令が出て癌の蛋白
が合成され始めかけますと、段々癌細胞が出来上がるわけですが、これが一o以下位の大きさの癌
組織の場合には自然治癒も有り得るそうです。それを越えて大きくなると自然に治ると云う事は非
常に困難になります。そういう意味ではある程度大きくなったものは、手術と云うことが大切にな
ります。けれども手術をしてそのまま放っておいては絶対にいけないのであって、癌細胞は細胞単
位のものであり、手術は目で見えるような単位のものですから、次元が違います。それで必ず手術
した後は熱心に身体の体調を良い方へ変えるように充分生活を矯正する必要があります。それを手
術して今まで通りの生活をしていると必ず再発してくる理屈です。必ず生活を変えてゆかなくては
なりません。願わくばそのような変なものの出来ない前から生活を正しくすればいい訳です。正し
い生活のための一万円は病気治療の百万円に勝るという意味の格言がございますが、正にその通り
であって、生活を正しくする僅かの費用によって何百万円何千万円という費用の治療、然も苦しい
、痛い、無駄な苦悩からも免れると思えば、私等が生活に気を付けるという事は、これはもう正常
な頭の者だったら誰でもそれをしなくてはならない事なのです。
 そこで正しい生活ということについて申し上げましょう。私は、昭和二十三年から二十七年ま
で沢山の患者さんの生活調査をしました。又、その他あちこち勤務している時も常に「生活と病気
」について観察と調査を進めて参りました。結論として極めて当たり前の事ながら実地に確かめた
ことは、正しい生活をすれば健康に天寿を全うできると云うことです。寿命はその人によって違い
ますが、大体六十〜九十歳と思われます。日本で有名な健康長寿村の棡原村では皆さん七十〜八十
〜九十歳まで元気に生きて、そして楽に死んでゆくと云う事が有名な古守先生の調査によって知ら
されましたが、正にその通りです。健康に一生涯生きて、楽に死んでゆくことが出来るのです。と
ころが間違った生活を致しますと不健康に一生を生きなければならない。リューマチで痛い痛いと
うめきながら、胃が痛い痛いといって苦しみながら、色々なことで苦しみながら一生送らなくては
ならない。そして死ぬ時も楽には往生出来ないのです。 更に生活が悪くなると所謂、若死に(夭逝)
と云うのが出てくるのです。即ち四十〜五十歳で死んでゆくのです。
 現在、私達が当たり前と思っている生活自身が既にもう非常に間違った生活になってしまって
いるが故に、四十〜五十歳で亡くなる方が非常に多いのです。昔、阿呆は風邪を引かぬと申しまし
た。何故かと申しますと、阿呆は余計な気を使わないから、自律神経が安定して風邪のビールスが
入って来ても、それに対する抵抗力があったからです。ところが今の世は阿呆であれば、公害にや
られて早く死んでしまいます。やはり賢くなければならないのです。もう阿呆では長生き出来ない
  時代がやって参りました。            
            
         (以下、次号に続く)

 
 

 

慈光会第四回学習会のお知らせ


  
 
今、私たちの周りには輸入された農産物がいっぱい。
その農産物は、実は、たくさんの農薬を浴びて、日本にやってきています。
そんな危険な実態を取材した映像を、一人でも多くの方に見て頂き、農薬の怖さを知って頂ける
ように、学習会を開催致します。
「百聞は一見に如かず」です。是非、奮ってご参加ください。
会員以外の方も、ご自由にご参加ください。
      記
テーマ  :「危険な輸入農産物」       ビデオを見て学習致します。
ビデオ上映:「ポストハーベスト農薬汚染」(三五分)
日時  :一〇月二一日 午後一時半〜三時終了予定(一時一五分開場)
場所  :慈光会館(慈光会販売所二階)
定員   :六〇名(定員になり次第、締め切らせて頂きます。)
入場料 :無料
※尚、入場人数に限りがありますので、参加ご希望の方は前以てお申し込み下さい。
(電話でも受付させて頂きます。)
 電話受付‥(木)(日)以外の午後五時まで
     
  

学習会「私たちの体に起きている奇妙な出来事」

  
追加参考資料 「アトピー・アレルギー体験談」
 


 学習会に出席された会員の方から、
「何か参考になる体験談があれば、紹介して下さい。」とのご要望が有りました。
 そこで今月は、アトピーや喘息等のアレルギー疾患を梁瀬先生に治療して頂いたという患者さ
んの体験談をご紹介致します。
 T君の場合(1982年生まれ・男性・現在19歳・大学生・神奈川県在住)
 幼少の頃より、喘息とアトピーの両方に長く苦み、小学校一年の時、初めて梁瀬先生の治療を
受け、その治療を継続したことにより二年後に完治し、現在に至っています。
 以下は、親御さんよりの聞き取りをまとめたものです。
 生後10カ月でかかったはしかの時、軽く済ませる注射を打った為、それ以降アレルギーが現
れるようになったように思います。
 1歳で小児喘息になり、発作が真夜中の2時〜4時ごろに起きるので、親も子も夜寝られない
状態が続きました。当時、子供はしょっちゅう風邪をひき、風邪からそのまま喘息に移行するとい
うのがお決まりのコースになっていました。
 2歳の頃になると、冬の間は、二週間に一度喘息になりました。一週間病院に通い、一週間病
院に行かない日があって、又喘息が出る、という繰り返しでした。結局、冬中、ひっきりなしに病
院通いをするという感じでした。
 発作が出ると本人は苦しくて、背中が丸まってしまう状態になります。発作を鎮めるために抗
生物質ばかり飲ませる結果になり、薬害が出ないかと心配でした。しかし、抗生物質を飲ませない
とどうしても発作がおさまらないので、止む無く飲ませ続けました。
 入梅のころには湿疹が背骨の周囲や、おなかなどから現れ、お医者様からアトピーと診断され
ました。又、体の中心に近いところから出るアトピーの方が重症である、と云われました。
 冬は喘息、夏はアトピーと、一年中お医者さんに通っているような状態がずっと続きました。
 3歳の時には肺炎になり、10日以上入院しました。
 4歳の頃、漢方医にも1年間通いましたが、顕著な変化は見られませんでした。 とにかく、
良いと云われたことは、何でもやってみました。ある協会の指導の下に玄米食も試みましたが、あ
まりに制限がきつかったので、子供がよそでお菓子などもらい食いをするようになってしまい、実
行するのが困難になりました。
 小学校に入学した年の夏休み(7歳)、梁瀬先生に診て頂く為に、五條を訪ねましたが、本人
が40度近く発熱してしまい、逗留中の友人宅迄、梁瀬先生に往診して頂くことになってしまいま
した。そこから、梁瀬先生のご指導を受け、治療が始まりました。(後出)
 先生の治療を続けて1年経過したころから、風邪をひく回数が減り、10歳になるころには、
すっかり元気になりました。小学校のころ、インフルエンザが猛威を奮い、学級閉鎖になった時で
も、本人はうつることもなく、大変元気に過ごしていました。
                      (以下、次号に続く)

 

作物四季折々

 「柿が赤くなると医者が青くなる」      
 

表題のように言われているのは有名ですが、柿は健康によい果物として、昔から重宝されていま
す。柿には2分の1個(80g)で1日の必要量が補えるほど豊富なビタミンCが含まれています。
そのほかビタミンB1、B2、カリウム、果物には少ないカロチンもたっぷり。干し柿にするとビタミ
ンCはほとんどなくなりますが、食物繊維が10倍に増えます。
 又、柿にはシステインという解毒作用のある成分と、利尿作用のあるカリウムが含まれている
ので、お酒を飲んだ後や二日酔いに効果的。生のままでもいいですし、大根と混ぜたなます等の酢
の物にしてもよいでしょう。
(医学博士 本多 京子著 「キッチンの知恵」より 抜粋)