癌多発の恐怖の時代に如何に処すべきか!(5)
  


財団法人慈光会 前理事長・医師  梁瀬 義亮



(一九八四年七月一日 慈光会第十回定期大会での講演記録です)

正しい生活についてまず食生活について申しますと、気候も土地も民族の体調も、或いは長い間の
歴史的習慣も全部違う欧米の食べ方、栄養学を全部そのまま日本に持ち込んだと云うところに、非
常な誤った食生活が起こっております。今でも学校給食とか工場給食には、カロリーと動物性蛋白
と云うような事が一番大切に考えられますがそうではないのです。ヨーロッパなりアメリカなりの
土地は水成岩性のアルカリ性の土壌であって非常にカルシウム、鉄やマグネシウムと云った鉱物質
が多いのです。だからミネラルについてはそう考えなくても水にも農作物にも多く含まれています
。ところが日本は火成岩性の酸性土壌であって、非常に鉄やマグネシウムやカルシウム等鉱物質の
含有が少ないのです。日本の水が軟性で美味しい事は世界でも有名なのです。こう云う土地に住む
民族ですから、常に我々はカルシウムとか鉄とかこう云った鉱物質の欠乏を起こしやすいのです。
だから欧米人と違って鉱物質(ミネラル)の補給に注意しなければならないのです。我々の先祖は
世界で一番よく海藻を食べました。海藻の中には、日本の土地に欠乏している様々の鉱物質が非常
に豊富にそして吸収しやすい状態で含まれています。有名な栄養学者であって現在八十五歳、尚矍
鑠として活躍しておられる川島先生が、いつも海藻とジャコを食べておられると云うのはこのこと
です。海藻とジャコをいつも食べておる、これが栄養学の一番の極意だと面白いことを云っておら
れますが、(そのジャコもこの頃は酸化防止剤だとか漂白剤で汚染されて来たので困ったことなの
ですが)日本人はカルシウムなど、色々な鉱物質の欠乏が多いのです。日本人は徒に外人の真似を
してはいけないのです。正しい食生活の要領は、お米を黒くすること(麦飯を食べるともっと良い
)海藻をよく食べること(ただし海藻は塩昆布とか佃煮のような加工品はだめですし、又よく色付
けしたりしてありますから気をつけてください)それから野菜をもっと多く食べること、どんな野
菜でも結構ですが、特にグリーンの野菜を多く食べていただく、これが日本人の健康のもとです。
(これについても後刻申しますように、農薬汚染と云う大きな問題が起こってきます。)
 それからもう一つ気を付けなければいけないことは、例え野菜を食べておっても、その野菜が
現在普通になされているような化学肥料で育った物ですと非常にビタミンや鉱物質が少ないと云う
ことです。最近野菜のカルシウムやミネラルやビタミンの含有量が以前の栄養表示量より低下した
値に書き換えられました。これは昔のが間違っておったわけじゃないのです。検査したら昔の野菜
の含有量に比べ今の野菜の含有量が低くなっておるから書き換えたわけです。私共のように完全無
農薬有機農法でやっておるところでは決して減る事なく昔の通りなのです。以上の理由で我々は野
菜、海藻を忘れないようにする事が非常に大切なことです。
 それから白砂糖の害をよく気を付けないといけません。白砂糖を沢山食べますと、ただでさえ
不足がちな私等のミネラルが身体から出てしまうと云うことを知っていただきたいのです。今の子
供はやたらに甘いものを食べます。そのために骨も駄目、歯も駄目、そして脳までやられてすぐ気
が狂ったような行動をしたり自殺したりしてしまうのです。だから白砂糖の害という事を皆様充分
にご注意ください。扁桃腺をよく腫らす子供、風邪をよく引く子、リューマチ気のある子、こうい
った子供さんは特に気を付けなければいけません。
 次に動物性の物を食べたら良い、肉類を食べると強くなるように、明治以来錯覚をもっておる
のですが、日本人に最も適した動物性食品は魚でございます。それから牛乳や卵で肉が最後になり
ます。肉はあまり沢山食べない方が日本人には良いようです。これは理屈ではなくて、心ある医者
の臨床経験からです。私も約四十年近く医者をしながら、いつも患者さんの食べ物を注意して調べ
ておりますが、大体肉食の多い御家庭には、腎臓結石とか胆石症とか膵臓炎とか或いは心臓血管系
の早期の老廃とかいったような問題が多ございますので、やはり我々の先祖が昔からやっておった
ように魚を中心に動物性の物をとってこれに牛乳や卵を添えてゆく、肉類は食べて悪いわけではあ
りませんが、食べ過ぎないようにしなければいけないのです。どれだけが食べ過ぎで、どれだけが
良いかは色んな他の食べ物との関係、又個人差もありますのでこれはいえないのですけれども、一
般論としてそういうことを知っておいていただきたいのです。
 我々の体は精巧な機械に例えられます。正しい食事をするということはこの精巧な機械のオイ
ルが切れないようにすることです。間違った食べ方をしておるとビタミン欠乏、ミネラル欠乏と云
ったようなオイル切れが起こって来てエンジンがうまく回転しなくなって、これが病気を起こす準
備状態になるのです。  
         (以下、次号に続く)

 

 

学習会「私たちの体に起きている奇妙な出来事」


追加参考資料「アトピー・アレルギー体験談」(2)
  
学習会に出席された会員の方から、「何か参考になる体験談があれば、紹介いて下さい。」とのご
要望がありました。
 そこで今月も前月に引き続いて、アトピーや喘息等のアレルギー疾患を梁瀬先生に治療して頂
いたという患者さんのT君の体験談を以下にご紹介致します。
 梁瀬先生から受けたご指導
(1)体質改善剤(梁瀬医院で調合して下さったもの)を、朝、昼、夜、寝る前と、一日4回服
用。そのほかに、無農薬のケールをジューサーで絞った青汁を出来るだけ沢山(3〜5合以上)飲
むこと(遠藤仁郎博士ご提唱の青汁療法)、生の青汁が無いときは、乾燥青汁粉末でもよいから毎日沢山服用すること。
(2)食事の注意
芋、豆、菜っ葉、海藻を充分に頂く。その際、農産物は無農薬有機栽培のものを、海藻類は汚染
の少ない地域のものを選ぶ。主食は無農薬の半搗き米に麦を入れたもの。又、白砂糖を摂取しない
ように気をつける。市販のジュース類は特に砂糖が沢山入っているので飲まないようにする。(無
農薬の緑茶や麦茶を使って、家でこしらえて飲むとよい。)
市販のパン、小麦製品は避ける。(輸入小麦には農薬が混ぜ込んであるため。)
(3)洗剤とその他の化学薬品に対する注意
アトピー対策として、合成洗剤は止めてすべて石鹸切り替える。洗濯用、台所用の洗剤、シャン
プー、化粧石鹸、歯磨き剤、住居用洗剤。
その他の合成化学薬品類(蚊取り線香、スプレー式殺虫剤、蚊取りマット等・・・これらは全て
農薬)を使用しない生活に切り替える。
(4)運動
運動を出来る限りよくすること。
(編者註:梁瀬先生の治療内容に関しては、「生命の医と生命の農を求めて」と「死の魔王に勝
て」に詳しく述べられているのでご参考にしてください。どちらも慈光会にあります。)
 梁瀬先生は、苦しい症状を治めるお薬と同時に上述のような注意点を一つ一つご指導下さいま
した。また、アトピーや喘息、その他のアレルギーの根本的な治療のためには、まず「体質を変え
てゆき、抵抗力のある体にする」というのが基本であり、体質改善するためには、特に食事に注意
を払うこと、又「毒物(農薬や添加物等の化学薬品)を体に入れない」ということが極めて重要で
あることも教えて頂きました。
 体質を変えるのには、時間がかかると教えていただきましたので、先生のご指導を出来るだけ
守って焦らずに毎日を送っていきました。すると、薄紙をはぐように、子供が少しずつ少しずつ丈
夫になって行くのが分かりました。息子の場合は2年という短期間で本当に丈夫になりましたが、
同じように先生の治療を受けた知り合いの子供さんは、すっかり元気になるのに3〜4年かかりま
した。治癒までの時間は個人差があるように思いますので、気長に、粘り強く続けることが何より
も大切だと思います。
 運動に関しては、息子の場合はサッカーを始めたのですが、1年生の時は、運動場のほこりを
吸うだけで、次の日に喘息を起こしていました。けれどもその後も励ましつつ、続けるようにして
いたところ、3年生後半にはすっかり元気にサッカーが出来るようになりました。
 現在でも息子は、子供のころの辛かった経験からか、自主的に必ず毎日乾燥青汁粉末を飲み続
けています。今ではこの子が家族の中で、一番丈夫になり、風邪もほとんどひきません。この子の
兄の方は、現在鼻炎等のアレルギーに悩まされていますが、この子には一切のアレルギー気がない
ように思います。
 治ったからといって、従来の生活に戻る事なく、食べ物を初めとして、ご指導頂いた諸注意は
一生守り続けて行くことが大切だと思います。
 振り返ってみますと、子供が小さいときには、病気に対処することに毎日追われ続けていまし
た。現在与えられた息子の健康は、本当にかけがえのないものです。改めて梁瀬先生に感謝申し上
げたい気持ちでいっぱいです。
編集者記:以上がT君の例です。皆様それぞれ固有の症状がおありだと思いますが、根本的な考
え方をご参考にして頂ければと考え、掲載させて頂きました。
                              【完】


 

作物四季折々

 「リンゴの効用ご存じですか?」      
 

西洋の諺に次のようなものがあります。
"An apple a day keeps the doctor away."(1日にリンゴ1個で医者いらず。《ジーニアス辞典:大修館出版》)
 こんな諺があるくらいですから、リンゴが体に良いことは、西洋でもきっと経験的に言い伝え
られてきたことなのでしょう。
 日本でも昔からリンゴは「保健果実」として知られてきました。統計でも、リンゴを良く食べ
る地方では、成人病が少ない、とのデータがあります。
 詳しく述べればまず第一に、りんごにはセルロース、リグニン、ペクチンなどに豊富に含まれ
ている食物繊維による整腸作用があり、大腸疾患の予防に効果があります。又、この食物繊維には
コレステロールを吸着して排泄を促す作用があり、動脈硬化や糖尿病、高血圧といった生活習慣病
の予防にも役立ちます。第二に、リンゴの果肉に含まれるカリウムは血圧調整効果があり、余分な
ナトリウムの排出を促します。リンゴを沢山食べる地方には、高血圧者や脳卒中患者が少ないこと
が知られています。
 このような訳で、医学博士の本多京子氏は、リンゴを「高血圧症の人が積極的に食べたい食品
の一つ」に挙げています。
 一方リンゴにはこんな働きも。固いキウイフルーツを入れた袋の中にリンゴを一緒に入れ密封
しておくと、リンゴから出るエチレンガスの働きでキウイは早く熟して甘くおいしくなります。
又、ジャガイモの袋の中にリンゴを一緒に入れておくと、これもエチレンガスの働きで、ジャガイ
モの芽が出るのを遅らせます。
 次のような食べ方はいかがですか?
 すりおろして冷凍するとシャーベットになります。又、きざら砂糖で煮たもの(レモン果汁を
いれるとさらに風味アップ)は、瓶やフリーズ用バッグに入れて冷凍しておくと通年楽しめます。
パンやクラッカー、ホットケーキに載せてもいいですし、プレーンヨーグルトに混ぜてもなかなか
です。シナモンをふりかければアップルパイの中身として使えますし、クリームチーズと練り合わ
せて、スポンジケーキに巻き込むと、おいしいロールケーキも出来ます。秋にはサツマイモとレモ
ンと共に砂糖煮しますとほっとする箸休めになります。
 部屋にひとつ置くとほのかに香る可愛らしいリンゴ。こんなにたくさんの効用や利用法があったのですね。
無農薬のおいしいリンゴを作って下さっている協力農家の山口さんに感謝しつつ、今年のりんごを
一層豊かに味わってゆきたいものです。
(参考資料:「食卓の博物誌」「キッチンの知恵」)

 

 

第四回 学習会「危険な輸入農産物」レポート(1)

 
 
◇ショック!ビデオの映像
 「ウワァー」と学習会会場から驚きの声が上がりました。スクリーンには、連結された大型ト
レーラーの荷台に山と積まれたリンゴの映像。そのリンゴの上から荷台もろとも滝のように農薬(
TBZ)が浴びせかけられている様子が映し出されていました。しかもその農薬のシャワーは十分
以上続けられるとのナレーションです。撮影場所はアメリカで、そのリンゴは日本にも輸出解禁さ
れたものなのです。これが、収穫後に農薬を使用する、いわゆる「ポストハーベスト」の実態でし
た。「ここまでものすごいとは・・・」これがビデオを見た会員の方々の率直な感想だったのでは
ないでしょうか。とにかく「百聞は一見に如かず」というのがぴったりでした。
◇前回の学習会復習
 扠、今回のレポートをさせて頂く前に、前回の「奇妙な出来事アトピー」で学習したことを振
り返ってみましょう。
 アトピーに深く関与する化学物質として
◆農薬
◆添加物
◆合成洗剤
の三つがあげられていました。
 今回の学習会では、その三つの中の一つ、「農薬」に焦点を当て、その中でも特にポストハー
ベスト農薬に注目しました。
◇今回の学習会で分かったこと
 現在の日本は世界一の食糧輸入大国。カロリー換算で日本の食糧自給率は約40%。これは、先
進国の中で最も低い自給率です。私たちの周りを見渡せば、半分以上を輸入食品が占めている、と
いうことになります。日本に輸入される農産物の安全性は、果たして大丈夫なのでしょうか?現地
に取材したビデオを見て学習してゆきました。冒頭でご紹介した映像がそのビデオなのです。
 そして学習会で明らかになったことは、九〇%以上輸入している小麦と大豆が私たちの健康に
深刻な影響を与えているということでした。又、 果物のポストハーベストの実態も恐るべきものが
ありました。
 早速そのレポートの一部を次にご紹介してみましょう。
1. 殺虫剤入り輸入小麦
 小麦については、「化学物質過敏症」との大きな関わりが、明らかになりました。オーストラ
リアやアメリカでは、小麦の貯蔵の際に、殺虫剤(有機リン系)を混ぜることが義務づけられてい
ます。又、輸出の際には、小麦が港で雨ざらしになるため、多くの防カビ剤や殺菌剤が使用されて
います。このようなポストハーベストを受けて日本に輸出された小麦は、パン、うどん、素麺、ス
パゲッティなどの主食として、又、クッキー、ケーキ、スナックなど子供たちの大好きなお菓子と
なって、私たちの口に毎日のように入ってきます。
 ショッキングな映像でしたが、実験で輸入小麦に放たれたコクゾウ虫は三日後、全部死んでし
まいました。(国産小麦に放たれた方は全部元気に動き回っていました。)
 その輸入小麦を使って作られている学校給食パンの九割から殺虫剤が検出されたという統計が
出ていました。
 この給食パンを一〇〇グラム食べると、有機リン系殺虫剤が私たちの体に一マイクログラム(
一〇〇万分の一グラム)入ってきます。さらに、この殺虫剤を一マイクログラム摂取し続けるてい
ると「化学物質過敏症」を発症するという報告がありました。
 私たちが毎日食べている小麦製品はパンだけではありません。朝食にパン、昼にうどん、夜に
お好み焼きを食べたとすると(これは、学生さんにはありがちな食事の例です。)その摂取量はか
なりのものになるでしょう。現在、日本で化学物質過敏症にかかっている人は一〇〇〇万人から四
〇〇〇万人とも言われています。小麦のほとんどを輸入に頼っている日本人の食生活では、患者の
数がさらに増え続けることが案じられます。
 又、北里大学医学部教授の石川哲先生は、有機燐中毒の実態を長年に亙って研究されています
が、その研究結果によれば、有機燐系殺虫剤が人体に及ぼす影響は「化学物質過敏症」だけに止ま
りません。
a. 自律神経症状(頭痛、めまい、吐き気、下痢、便秘、手足のしびれ、発汗、等)
b. 神経症状(病的反射出現、固有感覚機能の低下、四肢筋萎縮、等)
c. 精神症状(脳波異常、遅発性神経毒作用惹起、等)
 以上の症状の他「眼の異常」にも多大の影響のあることが明らかにされています。詳しくは学
習会資料をご覧下さい。


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