それから農薬でございます。農薬は昆虫を絶滅せしめるようなものですから、これは一番恐ろしいものです。昆虫と云うのは地上に
於いて最も生命力、適応性、生活力の強いものです。人間などは及びもつかぬ位強いのです。そのようなものを殺してしまう毒物です
から極めて毒性が強くて恐ろしいものです。現在約五千種類近い農薬が許可せられ、その中よく使われているのは、殺虫剤百種類、殺
菌剤で七十種類、除草剤五十種類ございます。除草剤の害はこの頃大変やかましくいわれておりますが、ご存じの如くアメリカ軍がベ
トナムで使い、物凄い奇形を起こし、癌や肝臓疾患を起こしたあの恐るべき除草剤は二四Dと二四五Tの合剤です。その中にダイオキ
シンを含んでいて非常に危険なものです。それを日本では、山林の除草に使っておったわけです。そしてそれを廃棄せよと云う事になっ
たら、それをドラム缶に入ったまま山腹に埋け込んでこの頃大問題になっておりますが、これはもう文明人としては考えられない程愚
かなことです。二四五Tをドラム缶のまま土中に埋めておけばドラム缶が腐蝕して、中の薬品が流れ出して大変な事がおこること位は
だれでもが考えなければならないことなのに、それを平気でやっていたということは、何とレベルの低い話だろうと呆れ返ってしまう
のです。然し乍らこういった除草剤がどんどん使用されているのです。そして水が汚染されている誠に困った状態です。
最近「怖い農薬は一切使いません、怖くない農薬しか使っておりませんから大丈夫です」という農家の方がよくおられますが怖くない
農薬なんてないのです。低毒性農薬という言葉を農家の方々に恰も無毒であるかの如くに印象付けてしまったが為にこういうことがお
こるのでございまして、低毒性ということはホリドール(パラチオン)とか或いはフッソールとかいったようにコロリと一発には死な
ないと云うだけの事です。コロリと一発にゆかないと云うだけの話が低毒性と云う事です。これは急性中毒の話です。LD50と申しま
して百匹のネズミをそのネズミの体重一sあたり何ミリグラム与えたら半数(五十匹)死亡するかと云う量(数値)をLD50と云いま
す。だからLD50の数値が少ないほど毒性がきついというわけです。この数字によって特殊毒物、劇物、普通物(普通物及び劇物の一部を低毒性と
名付けています)と決めているわけですが、すべて急性中毒の話です。低毒性といっても決して無毒であるというわけではないのです。
のみならず低毒性と云われるものでも、急性中毒を起こさないというものではないのであって、毎年低毒性農薬の代表的なスミチオン
とかマラソンで急性中毒を起こした例は沢山あるのです。皆様ご存じのように松食虫の退治だと云ってスミチオンを撒布します。年間
何百億円というお金をかけてスミチオンを撒布します。ところが松食虫が一寸もとまらずに、松はどんどん枯れてしまいました。あの
撒布するスミチオンの濃度はいくらと思われますか。普通一般的にスミチオン撒布の時には一千倍液に薄めて使用します。ところが松
食虫用は僅か十八〜二十倍の極めて濃いスミチオンを撒布するわけです。これは猛毒です。それが山の中の小鳥を殺し、益虫を殺し、
山の生態系をめちゃめちゃにしてしまったわけです。それでも尚止めずにこれを続行しようとしていることは、誠に遺憾なことである
と思うのでございます。
農薬の中の殺虫剤の低毒性について申し上げましたが、除草剤の害も農家の方はくれぐれもご認識いただきた
いと思います。これは奇形発癌以外、急性毒性もよく起こします。私等協力農家及び直営農場におきましては、過去二十年以上前から
一滴の農薬も一片の化学肥料も勿論除草剤も使用せずに立派にやってきております。皆様いつも販売所で買っていただいておりますあ
の物でございます。栽培方法の研究もほぼ完成したつもりでおります。 以上のことで私は病気と云うものを我々の誤った生活に対す
る大自然の警告であると云うふうに受け取っていただきたい。そして今の進んだ医学でもって病気を治すのは結構ですが、それと同事
に生活の矯正に気を付けていただきたいと思うのです。癌のメカニズムに関しては今申した事をよくご理解いただきまして、ともかく
出来るだけ農薬、食品添加物、余計な医薬品と云ったようなものを身体に入れないと云う努力をしていただきたい。慈光会も出来るだ
け豊富に皆様に供給させていただけるように努力するつもりでおります。