癌多発の恐怖の時代に如何に処すべきか!(8)
  


財団法人慈光会 前理事長・医師  梁瀬 義亮



(一九八四年七月一日 慈光会第十回定期大会での講演記録です)

 物質的なことでは只今申し上げた通りでございますが、もう一つ大事なことは身体の中から毒が出ることです。即ち我々が非常に悪い精神状態、怨みとか怒りとか恐れ、或いは嫉妬、こう云ったような精神状態の時には、体内から毒物が出てくるのです。今から約二十数年前にワシントン大学の心理学教室から非常に憤怒状態にした動物の呼気を液体窒素の中へ吹き込むと普通の状態の動物にはない灰色の物質が出てくる。これが物凄い大変な毒物であると云うことを発表されたことがあります。

私等の精神生活がいかに我々の健康にとって大事な事かということを良くご理解いただきたいと思います。日常癌を恐れながら、然も日常生活に気をつけない方が大変多いのです。これは生活に気をつけないから物質的に発癌の要素が入ってくる。そして癌を恐れるから精神的な悪い要素も入ってくるから最もいけない状態なのです。一例を申しますと、年二回乃至三回位胃癌の検査をしてもらう人がおりました。私はそのようなことをしては駄目だと止めたのですが、その人はもうそうしなければ辛抱できない、一種のノイローゼのような状態になっていまして止めません。そしてそれからかなり長い時間が経ってから私のところへ来られて「とうとう癌ができました」と申しました。何もそんなに癌を待つ必要はないのにと思いました。そんなにレントゲンをかけているとレントゲンで癌が出そうです。そのように恐れ恐れておる。これが有害であるのみならず、そのようにレントゲンを度々かけるとかえって発癌の誘因になるのです。だから私等はできるだけ注意するが、反面「できるだけ注意してそれ以上起こってくることは、それはもう仕方がないじゃないか」という諦観が絶対必要です。しかしそう簡単に割り切れないのが人情です。ここに我々が新しく開発しなければならない新しい精神的な分野をもっているわけです。もう二度と持つことのできない大事な人生でございます。私の人生もせいぜい後十年位で終わりだろうと思うのです。お互い僅かの間しかない大事な人生でございます。その僅かの間に物質的な方面に注意することは、後十年〜二十年〜三十年間のこの肉体を保つ努力でございますが、今一つ大切なことは、この間に精神的な偉大さを完成しなければならないことであると考えるのでございます。又このことが肉体の健康のためにも絶対必要とあればなおさらのことです。

 ここで私等は人類が長い間人類の幸福と繁栄の文明を築こうと努力して来たのに、しかも今それが出来上がってみると求めて来たバラ色の文明ではなくて、恐ろしい公害と核兵器による死の文明であって驚かざるを得ない、その原因について考えてみたいと思います。私が中学校二年生の時、文部省の偉い先生がおいでになって「君らが大きくなる時分には、世の中の病気は医学の進歩によって全部克服せられて病気はなくなる。又政治はうまくいって世界中に戦争がなくなって平和になってしまう。そして経済が非常によくなって、君らは一日二時間くらい働けばそれでよくなって、後はゆったりと精神的な喜びを味わう時間になる、そんな時代がくるのだ」と講演せられ、大変結構な事だけど本当かなと思いつつ聞いておったのを覚えております。今から五十年位前人々は科学が進み文明が進んでバラ色の未来が待っているんだと云うことを教えられ信じていたのでした。しかし今日近代文明が完成してみるとバラ色の未来どころじゃない。人間が機械の間に挟まれて、そうして公害と核兵器の恐怖の中で毎日毎日を送らなくてはならないのです。人類の破滅を予想せしめる暗黒の文明ができてしまったのです。これは大失敗です。この文明を作り上げたものは学問です。この文明は現在の学問によってできて来たのです。医学が進歩して反って病気と病人が増え、農学が大いに発達して農作物ができなくなり、政治学や経済学が発達しながら政治は益々混沌とし、経済は益々悪くなってゆく。教育学が発達しておるに拘わらず不良少年がいくらでも出てくる。これは一体何ということでしょう。ただ工学の発達は素晴らしい機械文明をもたらした。確かに工学だけは成功しました。しかし便利を求めて作った機械文明は、反って人間を便利でなくしてしまったのです。便利とは人間が生活に時間的余裕が出来ることです。ところが機械が出来れば出来るほど我々は忙しくなり、精神的にも、時間的にも余裕がなくなってきたことはご実体験の通りです。なぜこうなったか、即ち現在の世界の文明を見てみると、生命の関与しない工学の世界では、学問の進歩がそのまま機械文明の完成という成果を上げております。けれども生命の関与する医学・農学の世界では、医学・農学が発達しておるに拘わらず結果は逆の結果になっておることは上に述べた通りです。教育も然り、政治・経済も然りです。人間の生命や心が関与する分野においては、学問は進歩しておるけれどもその結果は逆の結果になってしまっておることは、皆様の見られる通りでございます。即ちこれは我々の持っておる学問の理論にどこか大きな欠点があるという事を意味します。人間の生命や人間の心の関与する世界に於いては、この理論では割り切れないのだと云う事です。

 



ご存じですか?
アメリカの「5(ファイブ) A(ア) DAY(デイ)」運動と
国際ガン予防プロジェクト発表の「ガン予防14カ条」
 
 

5ADAYって何?

 「5 A DAY」とは、「一日につき五種類以上の野菜と果物を食べよう」という意味。そして、これは、アメリカ国立ガン研究所と青果物健康増進協会が中心となってアメリカが国家規模で取り組んでいる運動の「スローガン」のことなのです。その目的は「毎日十分な野菜と果物を摂取することにより健康を保とう」ということなのですが、一九九一年から始まったこの運動の推進により、アメリカでは青果物の消費量が国全体で二割も伸びました。そしてその結果、それまで増え続けていたガンが、九一年を境に確実に減少し続けています。「5 A DAY」という国を挙げての運動が大きな成果を上げているわけですね。  翻って日本の現状を見ますと、若い世代を中心に、ファーストフードとコンビニ食が台頭し、アメリカとは逆に野菜の消費量が減少してきています。。残念なことに日本では、日本古来の食生活(穀物と野菜と豆、海藻等を中心としたもの)が受け継がれなくなってきています。そして日本人のガンは現在も増え続けているのです。

 梁瀬先生はもう何十年も前から「芋、まめ、菜っ葉、海藻」を中心とした食生活を患者さんに勧められ、慈光会の販売所内には先生の要請によりこんなパネルが展示してあります。 「ガンが増えています。完全無農薬有機栽培の野菜(葉菜、根菜とも)にはガンを防ぐ強い作用があります。イモ、マメ、菜っ葉、海藻等をしっかりお召し上がりください。」

 私たちが野菜と果物を食べる量はまだまだ足りません。
 現在の栄養学で勧める野菜(豆類も含む)の摂取量でも一人一日520g以上。(緑黄色野菜100g・淡色野菜200g・芋類100g・豆と豆製品120g)ガン予防国際プロジェクトでは穀類を含めて1日に1〜1.4 の植物性食品を摂取することを勧めています。(具体的に例を挙げてみると、例えば、一人一日、ホウレン草一束、小松菜一束、キャベツ半個、タマネギ半個、キュウリ二本、ジャガ芋大二個、豆腐半丁、米やパンなどの穀類200g等々)
 この例より植物性食品を沢山食べておられる方は、いらっしゃいますか?

ガン予防14カ条とは?

 もう一つの、ガン予防国際プロジェクトが発表した「ガン予防の14カ条」についてみてみましょう。これはアメリカ、イギリス、中国、イタリア、メキシコ、ケニア、インド、日本の、8カ国にわたる15人の科学者が、四五〇〇にのぼる「ガン予防論文」を三年半に亙って細かく研究し、報告書としてまとめたものの結論とでも言うべきものです。その14カ条のトップに挙げられたのはやはり「植物性食品を中心とした食生活を心掛ける。」という項目でした。四番目にも「野菜果物を1日400〜600gとる。」という項目があり、五番目には「穀類、芋、豆類を1日600g〜800gとる。」 という項目が挙げられています。
 日本の伝統的食生活(お米を主食として芋、豆、菜っ葉、海藻を頂く)が、ガン予防という観点から見ても、大変すぐれた食文化であることが、このプロジェクトでも証明された訳です。  
一二番目に「食品添加物や残留農薬に注意」 という項目が挙げられています。  単に農産物を中心とした食生活を心掛けるだけではなく、農薬や、加工食品の添加物にも要注意という意味です。  最近、野菜の大切さを唱える方が多いのですが、「完全無農薬有機栽培」という重要な項目が抜け落ちている場合が多く、又、添加物に無頓着の方々も多いのですが、ガン予防国際プロジェクトがこの項目を14カ条に入れているということは、やはり、その危険性が国際的にも認識されて来ている結果にほかならないでしょう。
 現代の科学で野菜の様々な効用が日ごとに明らかになってきていますが、まだまだ人間には解明出来ない不可思議な要素が膨大な量あるはずです。梁瀬先生はその未知の要素をXファクターと名付けておられました。未知の要素の未知な働き、それが、私たちの健康を守っていると言えるのかも知れません。簡単に言えば、「自然に従って作られた、即ち無農薬有機栽培で作られた農産物を十分に戴いていれば、人間は健康に暮らすことができる」ということになるのではないでしょうか。
 「5 A DAY」運動と「ガン予防14カ条」の発表をきっかけにして、もう一度読者各位の食生活を見直すチャンスとして頂ければ幸いです。

  参考

  ガン予防国際プロジェクト報告「ガン予防14カ条」

  (1)植物性食品を中心とした食生活を心掛ける。

(2)肥満を避ける。

(3)運動の維持。

(4)野菜果物を1日400〜600g摂取する。

(5)穀類、芋、豆類を1日600〜800g摂取する。

(6)お酒は適量に。

(7)赤身の肉の摂取は一日80g以内にする。

(8)脂肪は控える 。

(9)塩分は1日6g以下。

(10)カビ毒に注意。

(11)食品は腐らないように冷蔵庫に保存。

(12)食品添加物や残留農薬に注意する。

(13)黒焦げのものは食べない。(動物性食品の焦げたものの意。植物性食品の焦げたのはその限りではない。但し、動物性食品でも「焦げた部分を丼一杯食べる」というような極端なことがなければ大丈夫。)

(14)栄養補助食品に頼らない。

※番外 タバコは吸わない。(発癌の可能性が何倍にも膨れ上がる。)

以上のようなライフスタイルを守れば、ガンを随分減らすことが出来る。

部位によっては75%予防出来る。

(以上NHK放送「ガン予防一四カ条」より)



海抜400m慈光会直営農場より発信。

 
 

 農場内は大自然の宝庫。農場面積5ha、蔬菜園、そして果樹園、残り2haは自然林のまま。小鳥をはじめ、昆虫など小動物の生活空間となっている。目にしみる新緑の季節、農場便りと銘打って、直営農場及び協力農家をご紹介する。  当会の野菜は地場野菜を中心に栽培されている。そのため地域性が強く、種類、時期も限られる。会員の皆様の食卓にもっと彩りをと日々奮闘している。そこで今回登場するアスパラガス。老若男女に愛されて幾久しい。直営農場でもと、2年前に播種。発芽までに約1ヶ月、1日おきの潅水、そして発芽、移植、除草、追肥・・・。夏には1m近くに成長する。この作物には雌雄があり、雄株を残し雌株は淘汰する。これが人間社会なら大変なことである。後は圃場に定植を待つだけとなる。
 2月のある日、苗場を遠くから見ると、何かが違う。おかしいなと思い、急いで近づいてみると、何とイノシシが全部掘り起こしてあるではないか。これには参った。怒りと共になぜだか笑いがこみ上げてくる。イノシシも周りが国営パイロット事業で乱開発され、行き場がないのだろう。すべて元を正せば人間のエゴから始まる。誠に気の毒なことである。気を取り直して瀕死状態の中より、200本程の苗を救い上げ、圃場へと定植する。3月中旬には土を覆った真っ黒の堆肥の中より1つ1つと新芽が頭を上げる。5月にはイノシシシンドロームのショックから立ち直った苗は太陽の日差しを葉柄いっぱい浴びてすくすく育っている。近い将来、皆様の食卓にアスパラガスが並び、家族の団欒に色を添えることと思う。しかしながら、このアスパラガス、親株になるのに5年の歳月がかかるらしい。しばしお待ちを。農場より

                              《ユリ科 キジカクシ属 多年草》
 アミノ酸として知られている。アスパラギン酸のβ−アミドであるアスパラギンはこの植物より発見される。ビタミンを多く含んでいる。
 調理・・塩茹でにしてバターレモン汁やホワイトソースなどをかける。グラタン、アスパラベーコン巻き、冷やしてフレンチソース、マヨネーズソースでも美味。胡麻和え、からし醤油和えなど。