癌多発の恐怖の時代に如何に処すべきか!(9)
  


財団法人慈光会 前理事長・医師  梁瀬 義亮



(一九八四年七月一日 慈光会第十回定期大会での講演記録です)

  それでは現在の学問のどこに欠点があるか?

それはこうです。即ち「人間は大自然に生かされている生命である」という極めて基本的な事実が、現代の学問によって無視されておるという事です。学問と云って悪ければ近代文明と云ったらよいでしょうか。学問の行使に当たって、人間が自然によって生かされている生命であるという厳粛な事実を忘れているのです。

もう一つの欠点は、人間というものは同じ自然によって生かされている数限り無い生命と共にその生命群のおりなす生態系の中で、然も生かされて、生かそうとして又生かされるという共存共栄の中においてのみ生存が許されておるという、この厳粛な事実を見落としているという事です。見落としたというよりは、十七世紀のイギリスのフランシス・ベーコン等の言い出した「自然を克服し、征服するのが文明である」とか「人間が最高であるから、他の動物或いは植物等を克服してしまう特権があるのだ」と云ったような誤った思想に毒されて、そして生存競争が恰も生存の原理であるが如く教育されて、世界中がそう信じてしまったのです。おそらく皆様も学校でそう教えられたでしょう。生存競争が生存の原理である、自然の征服が文明であると云った思想が今でも人々の頭を洗脳し続けています。しかし、本当はそうではないのです。現在の進歩した生態学の教えるところはどうか?先程申した通り人間は一つの生命であって、それは大自然によって生かされておる。そして同じ大自然によって生かされる数限りない他の生命と共に織り成す生態系の一員としてのみ生かされている。この事実をもう一回謙虚に振り返らなければならないのです。

我々は我々の生命の根源であり、我々の慈母である大自然を破壊する文明を作ってしまったのです。我々の同朋である多くの動物や植物を殲滅してしまうような文明を作ってしまい、その同じ原理によって、今度は人間が公害或いは核兵器によって自らも滅びようとしておるのです。この最も基本的な簡単な事実を我々は振り返らなければなりません。ノーベル賞をもらうような研究がなくても我々人類は幸福に栄えることが出来ます。けれどもこの小学校一年生でもわかる大事な基本的な命題が忘れられますと、人類は破滅するのです。ノーベル賞をもらう研究よりも遥かにこの事実の方が大切なのです。現在の癌、その他の退行性疾患、即ちリューマチ或いは胃潰瘍、又若い人の心臓血管系の病気でも肝臓病でも、これらは皆人間が作ったものでございます。誤った文明の必然的結果です。正しく自然生活をしておるフンザ国には現実にこんな病気はないのです。

もう一度我々がこの現代の文明の中で大自然に対する親愛と畏敬を取り戻すこと、もう一度人間同士或いは人間と他の動物との間に共存共栄のできる高次元の場の追求が必要なのです。現在の我々の考えておる次元では共存共栄は出来ないのです。だから戦争で人間同士殺し合い、他の動物を殺してゆかなければ生きてゆけないと思っておるわけです。そうではなくて人間同士が大自然の恩恵の中で共存共栄でき、又人間が他の動物と共存共栄できる高い次元の場を追求してゆく、そしてそれを実践する。これが人類が破滅から免れ幸せになるための唯一の道なのです。実はこれが宗教なのです。宗教というのは千円のお金を献げて百万円儲けさせてもらうように祈るのが宗教のように変に誤解されておるのですが、そうじゃなくて、宗教というのはあらゆる生命が総てお互いに愛し合い尊敬し合い、奪い合い殺し合いをせず、真に平和に偉大に生きてゆける高い次元の場を追求する努力と、既に得た人が未だその場を発見出来ぬ人々のためのその教え、或いは指導、これが宗教なのでございます。現在私等がやっております完全無農薬、完全無化学肥料の有機農法、これは害虫も殺さない、益虫も殺さない、そして人間も健康に楽しく生きてゆけるという高次元の場の発見なのです。  


 



安全な天然駆除剤による白蟻退治
慈光会職員  田中靖
 
 


「やっぱり白蟻やったみたい。すぐに駆除するみたい。」  夕方、仕事から帰ると母親からそう伝えられた。我が家では蔵と母屋の間にある離れ を改築中。離れは亡くなった祖母が使っていた所。祖母が亡くなって6年経っていた が、その間結構締め切っていることが多かった。改築の時、大工さんが床下を開けて みて白蟻が発見された。白蟻駆除の業者に来てもらうと隣の蔵がもう白蟻にずたずた に食べられていて、その白蟻が改築中の離れの方に来たらしい。幸い改築中の床下は ほとんど食べられてはいないとの事。

 白蟻駆除には強力な殺虫剤を使うという事は知っていたので不安になり、リフォーム屋さんに相談する。 「いや〜昔は強力な殺虫剤を使っていたが、今は大丈夫です。厚生省が認可した薬剤 です。昔は駆除すると20年保証だったが、今は10年になりました。」

「ああ、それじゃ、お願いします。」 と、一度はOKを出したが、後でゆっくり考えると10年は床下に殺虫剤が残留してい る、という事か。また不安になり駆除を2〜3日待ってもらうようにリフォーム屋さんに電話する。それからインターネットを使ったり、白蟻駆除の業者に電話をしたりして、 なにかいい方法がないかを調べ始めた。インターネットでは駆除業者のホームページ がほとんどで、どこまで信じていいのか悩む様な内容。あとは白蟻駆除の危険性を紹介 するホームページが多く、益々不安になる。大手の業者が行っている巣穴から退治する 方法が有るみたいだが、即効性がなく結構費用がかかるようだ。

 そんな中で見つかったのはヒバ水、ヒバ油と木酢液で駆除する方法。早々に三重県に あるその業者に電話する。

「家屋の土の部分にはヒバ水と木酢液、柱の部分にはヒバ油を散布します。」 とのこと。ヒバ水、ヒバ油は共に針葉樹のヒバの木から抽出されるもの。木酢液は炭 を作るときに出来る強酸の液体。そんなので駆除出来るかな、とも思ったが、5年間 の保証も付くそうだ。価格も殺虫剤散布に比べてそれほど高いわけではない。業者が 言うには、殺虫剤を散布しても巣穴に直接散布するのではないので、白蟻が全滅する わけではないらしい。それなら安全な方にしよう、とその業者にお願いする。散布に 立ち会っていないので、はっきりとしたことは分からないが、半日ほどで作業は終了 したらしい。母親が言うには意外と簡単に終わった様子。悩んだだけにほっとする。 それから2〜3日は散布をしていない母屋でもヒバ油と木酢液の匂いがした。これが 殺虫剤の匂いだとしたら、ぞっとするところだったろう。

参考までに
 ・羽アリにも黒アリの羽アリと白アリの羽アリがあります。(図参照)又、白アリも羽のあるものと、羽のないものに分かれています。羽のない職アリ(白いやつです)が集団の大半を占めていて、羽アリになるものは全体のわずか2〜3%ぐらいなのです。職アリは幼虫ではなく脱皮した成虫で、極寒の時を除きほとんど一年中、木材を喰害しています。
 ・白アリ駆除剤は1986年までは有機塩素系のクロルデンが主流でしたが、環境、人体への影響が判明して使用が規制されました。現在は有機リン系のクロルピリホスが主流です。急性の毒性はむしろ、現在の薬剤の方が強いとさえ言われています。薬剤メーカにより色々な名前が付けられていますが、成分は皆同じものが多いのです。(クロルピリホスかピレスロイド系のものがほとんど)イコール、農薬です。白アリ駆除はそういった農薬が床下に数年間残留します。人体への影響は人によってさまざまでしょうが、それらを散布した後、あの生命力旺盛なゴキブリが5年〜10年姿を見せなくなるそうです。白アリ、ゴキブリ等人間に嫌われる害虫がいなくなるのは一見いい事のようですが、その反面、強力な農薬を絶えず吸うことになるのです。
(参考文献:ナチュラルハウスをつくろう 白馬社)




海抜400m慈光会直営農場より発信。
 
 

<>朝もやの中、ナスの収穫に車を走らせる。夜露が水滴となり、ナス肌を流れ落ちる。今年生まれた雨がえるの子がじっとこちらを見つめ、かたつむりの軌跡が光のすじとなり輝く。 地上では、せわしく虫たちが動き回り、朝日に美しいナス紺色が静かに光る。

 2月に播種したナスは草丈1.5mまで生長し、たわわに実を結んでいる。大きさや形を見極めながら、一つ一つはさみで収穫し、腰につけたふんご(収穫かご)に入れていく。ふんごは見る見るうちに一杯になり、ずっしりと重く、腰にくい込む。中腰での収穫は多少きついものがあり、時々腰をトントンとたたく。 

 ナスはナス科、インド原産。今では世界中で栽培され、和洋中あらゆる料理に使われている。そんなナスも時にはとんでもない使い方をされる。関東では『オタンコナス』、関西では『ボケナス』、これにはおとなしいナスもはなはだ気を悪くしているに違いない。常に控え目で前にでしゃばらないナスは、他の素材が出した旨みを海綿状の果肉一杯に吸収し、自分自身を美味しく作り上げる。

 現在わが国で栽培されているナスは、西は長ナス、東は丸ナスで地方によって形が異なる。当会で栽培している品種はタキイ種苗の筑陽、長ナスで、肉質が柔らかく多収である。ナスは大飯喰らいの大水飲みで、少しでも水と肥培管理を怠ると、すぐにストライキを起こし、病虫害が顕著に現れる。そのため細心の注意が必要となる。近代農法でのナス栽培は、多肥(化学肥料)、多農薬、三日にあげず農薬散布を繰り返す。消費者にとってはたまったものではない。又、撒布している農家の人々への健康被害も甚大である。

 お盆を迎え、これから秋ナスのシーズンへと移行してゆく。「秋ナス、嫁に食わすな。」ナスは体を冷やすので嫁の体を気遣っての心温かい言葉か、それともあまりに美味だから・・・・・なのか。どちらにしても日本人特有の言い回しであるには変わりない。殺伐とした世の中、慈光会の会員の皆様には前者であっていただきたいものだ。
                          猛暑の農場より

 《栄養と利用法》
 ナスの実の約95%は水分で、特徴である紫色はナスニンという色素による。果肉がスポンジ状で油をよく吸収するため、植物油のリノール酸やビタミンEの摂取に役立ち、コレステロールが気になる人にはおすすめ。  夏野菜は全般に体を冷やす作用を持っているが、なかでもナスの効果は強く、暑さ負けしそうな時や、からだのほてりやのぼせが強い時に食べると効果がある。

調理・・よく冷やして薬味を効かせた焼きナスや、ナスと共に夏野菜をたっぷり入れてトマト味で煮込んだラタトゥイユは夏バテにぴったりの料理。ひき肉といっしょに炒めて、味噌で調味した麻婆ナスや田楽、マリネ、カレーなども美味。




学習会のビデオを見て
 
 

ビデオ貸出の御礼
  慈光会会員 広島県 柳田

 ビデオ有り難うございました。  農薬や添加物の危険性については、常々話していますが、市販の加工品や菓子を食べたがる家族に是非見てもらいたいと思いお借りしました。やはり映像で見ると説得力があるようです。これで見えない農薬を想像する力をつけてくれたのではないかと思います。

慈光会会員 愛知県 内藤
 ポストハーベストのビデオを貸し出して頂き、誠にありがとうございました。新聞報道で伝えられているものよりはるかに具体的で、身がひきしまる思いに駆られました。つまり、毎日の食事の内容の吟味とか、土作りの大切さとか、自分たちがさせて頂けることを改めて見直していく必要を感じずにはおれませんでした。どうかこれからもこうした啓蒙活動を通して、大自然からのメッセージをお伝え下さい。よろしくお願い申し上げます。