「限りある資源を大切に。」そんな掛け声はずいぶん前から聞いていますが、では、私たちには、具体的にどのような取り組みができるのでしょうか?
その実践に具体的に、しかも毎日取り組んだ主婦の方たちがおられます。毎日つける家計簿から、「環境チェック、CO2削減」を実践し、見事「省エネ最優秀賞」(財団法人省エネルギーセンター主催)を受賞した「奈良友の会」のメンバーです。
「省エネはしなければ、と分かっているけれど、現在十分には出来ていない」、と感じていらっしゃる方も大勢おられることでしょう。「奈良友の会」のメンバーはどのような工夫をしていらっしゃるのでしょうか?
以下に実践している20の項目をご紹介してみましょう。
(1) 鍋底から炎を出さない
(2) ごみは分別して出す
(3) シャワーは出しっぱなしにしない
(4) 鍋の底を拭いてから火にかける
(5) 電灯はこまめに消す
(6) 部屋を片付けてから一気に掃除機をかける
(7) 風呂の残り湯は洗濯掃除に
(8) 生ごみはぬらさない
(9) 食器の汚れは拭き取ってから洗う
(10) 使わない器具のプラグを抜く
(11) 再生紙を使う(ティッシュ、トイレットペイパー)
(12) 米のとぎ汁は流さない
(13) 冷暖房の設定は夏季28度、冬季16度を目安に
(14) 保温調理をする(鍋帽子、保温鍋等)
(15) 買い物にはマイバッグを持参する
(16) 自動車より電車バスを使う
(17) 食器洗いの水はサインペンの太さで
(18) 生ごみは土に返す
(19) 11時までに寝る
(20) 食器洗いは石鹸を使う
省エネとは本当に具体的なものです。そして、以上の20項目は、どれも心がければ実行できそうなものばかりです。
実践するとどれだけのCO2の削減が出来るか例を挙げてみてみますと、次の表のようになります。
テレビを一時間消す--> 0.14kw×1時間×30日×0.12=0.5kg(CO2削減量)
一時間早く寝る--> 0.7kw×1時間×30日×0.12=0.25kg
冷房温度を一度上げる--> 0.09kw×3時間×30日×0.12=0.96kg
風呂の残り湯を洗濯に--> 0.1立方メートル×30日×0.16=0.48kg
合計CO2削減量 2.19kg
夕食後習慣としてテレビをつけっぱなしにしているご家庭は案外多いのではありませんか?見たい番組だけ見れば1時間は消すことができるのではないでしょうか?又、1時間早く寝るのは、健康にもとても良いことです。加えて1時間でも30分でも早起きすれば、これからの季節はいっそう省エネになることでしょう。早寝、早起きが省エネにつながるということはあまり考えたことがありませんでしたが、これを心がけると一石二鳥になるのですね。冷暖房の温度を見直すのも、体のためになるに違いありません。過剰に冷暖房するのは子供たちのためにもよくないことでしょう。
以上の4項目を一ヶ月実践すると、CO2の2.19kgの削減になるのです。
具体的な量が分かると、一層省エネの励みになりますね。
友の会のメンバーは、この20項目を努力目標に掲げ、環境を意識した生活をし、家族(特に子供たち)と環境について話し合うよう心がけているそうです。そして、メンバーが集まり、互いに我が家の省エネを報告しあい、どれだけの省エネが出来たか確認しあうことによって一番難しい「省エネを継続すること」を実現しているそうです。
奈良友の会の省エネ報告の様子を見学させていただいたのですが、そこでは、面白い報告がありました。ほとんどの家庭で、昨年の7月の電気消費量より8月の消費量のほうが少なくなっていたのです。去年は8月のほうが7月より涼しかったのでしょうか?去年の猛暑を思い出してください。決してそんなことはありませんでした。報告を担当された方は、消費が減った理由として、「7月に電気使用量を皆で調べてみたので、各家庭が反省し、省エネを見直すことによって削減できたのではないか。」と言っておられました。もしそうであれば、意識して心がけるということは、大変大きな力になる、いうことになりますね。
電気使用量についていえば、春、夏、秋、冬の各季節に一週間各家庭で毎日電気のメーターを読んで、一日にどれくらいの電気を使ったか記録する実践項目があるそうです。メーターを読むことによって、「この日はホットカーペットをつけっぱなしにしたナ。」とか「クーラーの温度設定をもう一度上げてみよう。」とか、「テレビを見る時間をもう少し減らしてみよう。」などという具体的な取り組みが見えてくるそうです。毎日自分の使った電気量を意識できるわけですね。メンバーの中には、「電気ポットをやめて、魔法瓶を復活させました。」という方や、「冬の間は、お風呂に入るのを一日おきにしました。」という方など、おのおのの立場で、色々な省エネに積極的に取り組んでおられるのに感心いたしました。
もうひとつの取り組みに「鍋帽子」の普及というのがあります。鍋帽子というのは、鍋がすっぽりかぶさる綿入りのカバーで、これを被せて保温調理を行い、省エネを図ろうというものです。2〜5分煮立てた鍋に鍋帽子をかぶせておくと、1時間後でも熱々なのだそうです。
以前慈光通信でも保温調理をとりあげ、レポートしたことがありましたが、その時には鍋をバスタオルでくるんだり、その上から又、毛布でくるんで座布団をかぶせたり、かなり大仕掛けなものとなっていました。鍋帽子はそれをグッとシンプルにしたものといえましょう。友の会では鍋帽子作りの講習会を開いたり、又、会員が手作りしたものを頒布したりして普及に努めているそうです。(市販の保温調理鍋より、価格は経済的です。自分で手作りすればさらに経済的です。)
ある試算によれば、全国にこの調理法が広まれば、6000億円分のガスが節約できるということです。その分の二酸化炭素の排出も削減できる訳ですから、是非一軒でも多くの家庭にこの保温調理が広まってほしいものです。
私たちが家庭で出来る「地球温暖化防止への取り組み」はこんな身近なところでコツコツと行えるものなのですね。
地球の資源が限りあるものであることがはっきりとわかっている現在、地球上の空気を一国が無駄遣いすれば、他の国が使える空気はそれだけ少なくなることがわかっています。限りある食糧も一国が贅沢すれば、他の国が食べられる食料はそれだけ少なくなる訳です。それと同じことが個人にも家庭にも当てはまるのです。
一軒の家庭が省エネに努め、一人の個人が食事を控えることが、そのまま他の人への、又、他の国への思いやりになり、他への豊かさにつながるという訳です。
単に省エネをするのではなく、このように他者や地球への配慮から省エネを行うことが出来れば、その動機は本当に深まりますから、継続する意味が一層自覚しやすくなるのではないでしょうか。そしてその実践を継続するために、「友の会」の方々のようにグループで励ましあう工夫も見習いたいアイディアだと思います。
友の会の合言葉は、「家庭は簡素に、社会は豊富に」であるとうかがいました。私たちが簡素な生活(省エネを含めて)を送ることが、やがて社会を豊かにする、という意味だと思います。そして現代ではそれが地球環境を守ることにもつながります。この「合言葉」はいつの時代にも通じる、温かく思いやりに充ちた思想なのではないでしょうか。「家庭は簡素に、社会は豊富に」という言葉を心に刻んで、新たな思いで足元を見つめなおし、この省エネを実践してゆきたいものです。
農場便り 4月
野道にタンポポのかわいい花が咲く。田畑にはレンゲ、ふぐり、ハコベの花が春の光を浴び、淡い緑色の葉を輝かせ、かすかに香りを放つ。春は人の心をかきたてる。農場に続く道には田畑が続く。冬季は人影もまばらであったが、気温の上昇と共に賑やかになってくるのは毎年同じ光景である。
先日農場へと車を走らせる途中、農家の方が畑の中で腰をかがめ何かを拾っておられるのを見かけた。よくよく見ると冬の間に投げ込まれた空き缶やゴミを拾っておられるようである。道路に捨てられているカンやビン、ペットボトル、ゴミなどを見る度心が痛む。出来るだけ拾うように心掛けるが、年々量が増えもう無理。危険を招くであろうと思われる時や自身に余裕がある時以外は見逃してしまうのが現状である。道路のゴミも困るがそれにもまして食物を生産する田畑に投げ込むなどとんでもない事である。大変だろうなと同情しながら横目で見て通る。その日の夕刻、仕事も終え帰途につく道すがら朝の様子が頭をよぎる。捨てられたカンやビン、ゴミの始末は大変な作業である。そんな事を思いながらあの畑の前に来た。人影はなく既に作業は終えていた。次の瞬間私は自分の目を疑った。道に田畑で拾い集められたであろうカンやビン、ゴミが散乱しているではないか。身勝手な発想、現代人の多くの者の考え方であろうか。いつの日か道路はゴミ捨て場と化するのではないだろうか。
2月中旬に入り直営農場もカンやビンを拾い畑を耕す準備にかかった。当会の畑は有機質堆肥により肥沃した土になっているため草が良く育つ。どうも良く育った草の中にはゴミなどを捨てやすいという事なのだろうか。もちろん拾ったカンやビンは資源ゴミとして出す。
堆肥を畑全面に撒き、地上浅く耕耘する。これは土と堆肥を空気の多い所で馴染ませるためで、土と堆肥が一つになった時有機質の持つ力が発揮される。そのまま約半月放置、そして本起こしする。出来るだけ深くそして細かく起こす。「精が出ますね。」通りすがりの御老人から声を掛けられる。「何を植えるんですか?」という質問にわたしもペコリと頭を下げ「春じゃが芋を作ろうと思い準備しています。」と答える。御老人はにこやかに「ボチボチやって下さいよ。」と言ってあぜ道をゆっくりと歩いて行く。このほんのちょっとした会話が心を和ませる。先日ビンやカンを拾っている時、恥ずかしい事に私はかなり怒りが込み上げていた。自分自身の狭小な心に恥ずかしさを覚える。真っすぐに真っすぐに畝を立てる。出来るだけ真っすぐに。トラクターのエンジンはうなる。きれいに準備された畑を見て自己満足、一時の充実感、そして悦に入る。2〜3日後植え溝を切り種芋を植える。3〜4つに切り分けた種芋には腐敗を防ぐため真っ白に石灰をまぶす。それを30〜40p間隔にきれいに並べ土を掛ける。一カ月もすれば小さな芽が地表に顔を出す。大きく大きく葉や茎は育つ。と同時に地下では葉で光合成されたデンプン質が貯蔵されてゆく。6月には丸々としたジャガイモが掘り起こされる。
ジャガイモの原産国は南米アンデスで現在は世界各国で栽培、生産され、ジャガイモを主食とする国もある。植物のビタミンCは熱を加えると壊れてしまうが、ジャガイモのビタミンCは加熱調理しても壊れにくいのが特徴のすばらしい食べ物である。一般の家庭では一年を通じて食され、若者におふくろの味は?と質問すると多くの人から肉ジャガという答えが返ってくるそうだ。そのジャガイモも近年遺伝子が組み換えられ大変な問題になっている。日本でも輸入され多く出回っているので、出来るだけ口にしないよう注意していただきたい。
柔らかい日ざしを身体一杯浴び、収穫できる日を楽しみに農作業は続く。しかしながらこの日ざしもフロンガスによるオゾン層の破壊で紫外線が多く、死の光へと変わりつつある。信じがたいが現実である。
『野の草は人に見られる事なくとも美しい花を咲かせる。人に評価されなくとも大自然により賛美を得られる行動を。』前理事長が生前よく口にしていた言葉である。この言葉を思い出しながら、力一杯鍬をふるう。
花咲き、鳥歌う、素晴らしき春真っただ中の農場より