被害者が加害者に?
おかしなおかしな遺伝子組み換え種子裁判
72歳のパーシー・シュマイザーさんは半世紀にわたって種子を自家採取してきたカナダの農民です。しかし、ある年、近隣で遺伝子組み換え作物が作られ、花粉が飛んで来た為、自分の畑で作っていた農作物に種子汚染の被害を受けました。自分の畑の農産物まで遺伝子組み換え農産物になってしまったわけです。守り続けてきた自家採取の種が遺伝子組み換えの影響を受けてしまったのですから、その被害は甚大でした。
常識的に考えるなら、遺伝子組み換え種子を開発したモンサント社や、遺伝子組み換え作物の植えつけをした近隣農家に、シュマイザーさん側が被害の賠償を要求するのが道理です。しかし、遺伝子組み換え種子を開発したモンサント社は逆にシュマイザーさんを特許権侵害で訴えました。カナダの裁判所での二審までの判決は「遺伝子汚染を受けた側が、汚染者に対して特許料を支払わなくてはならない」というものでした。訴えられたシュマイザーさんは既に日本円で2000万円という莫大な裁判費用を支払っています。
日本での遺伝子組み換え反対運動を行っている「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」ではこのシュマイザーさんを日本に招き、6月から7月にかけて全国で集会を開きました。シュマイザーさんのような事例は決して対岸の火事ではなく、これから日本にいる私達の周りでも起こってくるかもしれないことなのです。
農水省は国産稲の遺伝子組み換え作付けの野外実験を既に許可しました。場所は北海道と、岩手県と茨城県。野外実験ということは、花粉が近隣に必ず飛散するということです。全く知らないうちに遺伝子種子汚染を受けた人が、モンサント社に特許料を支払わなければならなくなるという理不尽な事が起きることは、何としても防ぎたいものですが、このままでは、第二、第三のシュマイザーさんが出てしまうかもしれません。
遺伝子組み換え食品の抱える問題
では、ここで、もう一度遺伝子組み換え食品の問題点をおさらいしておきましょう。
(以下のI〜IVは「遺伝子組み換え食品を避けるためのチェックシート」日本消費者連盟刊より一部抜粋)
I. 生産者にもメリットなし
a. ラウンドアップ除草剤耐性大豆(除草剤をかけても枯れない大豆)で収量も農家の収入も大幅に減りました。(米国での調査結果)
b. 有機農産物が作れなくなります。花粉が飛んできて遺伝子組み換え作物ができると、有機農産物として認証されないからです。
II. 環境への悪影響、種子の汚染が起きている
a. 土壌微生物や昆虫に殺虫蛋白が影響を与えることが報告されています。
b. 除草剤が効かないスーパー雑草を作り出しています。
c. 花粉の中の殺虫蛋白が飛散して蝶の幼虫を殺します。
d. ミツバチやてんとう虫に寿命短縮の影響が出ています。また、耐性を持った害虫が増えます。
III. 多国籍企業の食料、種子支配が進む
多国籍企業である農業化学企業が、自社の利益を追求することを目的として、「農薬」と「特許をかけた遺伝子組み換え種子」をセットで売り込んでいます。特許料、種子代金、農薬代金が全て、多国籍企業に集まるような仕組みができているのです。
IV. 安全性審査の問題点
遺伝子組み換え作物は、企業のデータのみで審査されています。他の人は誰もチェックしていません。
さらに、IVの安全性に関してもう少し詳しく見てみましょう。
(1) 種を超えての遺伝子組み換えの危険性
自然界では絶対に起こりえない種を超えての遺伝子の組み換え(微生物と植物間、動物と植物間等々)を人為的に行うわけですから、出来上がった農産物は地球上にかつてどこにも存在しなかった「代物」です。ハエの遺伝子をトマトに組み込み日持ちを向上させるという研究もあります。殺虫成分を組み込み葉を虫が食べたら死ぬものもあります。殺虫成分が入ったものを人間が食べ続けていることになるのです。
(2) 人間が死に至る未知の毒性が現れる可能性
遺伝子組み換えの際に、組み込んだ遺伝子がどこにおさまるのかは専門家にも分かりません。ですから、どのような未知の影響が現れてくるかは誰にも予測できないのが現実です。
遺伝子組み換え食品で死亡者が出た次のような事件があります。
1988年から89年にかけて、昭和電工が製造した健康食品「トリプトファン」によって、30人以上が死亡し、約1500人が健康被害を受けました。(アメリカでの事件)その後の研究で、製造工程中に遺伝子組み換え微生物が作り出した人体に有害な不純物が製品に混入したためである、ということが明らかになっています。
遺伝子組み換えは未知の毒性と隣り合わせと言えるのです。
(3) 免疫力の低下、内臓障害
英国で行われた動物実験で、免疫力の低下、内臓障害を引き起こすことが明らかになりました。
(4) 農薬被害増大
除草剤ラウンドアップ耐性大豆は、除草剤ラウンドアップをかけても枯れないように遺伝子組み換えされた大豆です。それにより、除草剤の残留基準値は大幅にゆるめられました。そのことは、遺伝子組み換え大豆に残留した環境ホルモン作用のあるラウンドアップがかつて無いほど大量に私達の口に入る、ということを意味します。又、大量にばら撒かれたラウンドアップは、環境にも重大な影響をもたらします。特に、動物の子孫に対する影響が懸念されます。儲かるのは、遺伝子組み換え種子と農薬をセットで販売している、モンサント社のような農薬会社だけなのです。
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会員の皆様には既に「遺伝子組み換え稲の野外実験」の反対署名のご協力をお願いしてまいりました。現在、たくさんの署名が集まりつつあります。昨年、全国の消費者と生産者との反対運動の結果、愛知県とモンサント社が共同開発していた「遺伝子組み換え稲・祭り晴」の開発が中止となりました。遺伝子組み換え技術は人間の目先の利益や都合を優先させ、人間には計り知れない大自然の微妙神秘の仕組みを破壊してゆく技術です。有機農業を実践すれば、農薬も化学肥料も、遺伝子組み換えも必要なく豊かで恵み多い実りを頂ける農業が展開して行くのです。人間も大自然の一部です。大きな生態系の一員です。もし、生態系のバランスが崩れたら、人間もその生命を全うすることは不可能になるのは、誰の目にも明らかなことです。たくさんの大切な生態系という鎖の輪を壊さないためにも、慈光会では、遺伝子組み換え技術に、ノーを言い続ける所存です。
農場便り 10月
空はどこまでも限りなく澄み渡り、心地よい風が頬を撫でる。朝露に濡れる草も季節に従い、夏草から秋、冬草へと変化してゆく。その中、伸びたススキの穂が、ひときわ美しく光り輝き、秋風に揺れる。
大きく張り巡らされた女郎蜘蛛の巣も朝露に濡れ、朝日に輝く。主は巣の中央にて鎮座し、朝食を今か今かと待っている。その姿、温度の下降と共に夏季の力強さは失せ、寂しさを感じさせる。
私の記憶の中では、今年のような夏には今までにお目にかかったことが無かった。前半、例年より低温の日が続き、暑さを苦手とする私にとっては快適な日々を送ることができた。しかしその一方で、その頃、東北の水田地帯では冷害が出始めていたようである。毎年恒例のお盆の花火が今年もまた五条の夏の夜空を彩る。最後の大輪の花火が夜空を染め、その光が静かに消えて行く時、一抹の寂しさと共に秋の訪れを感じる。例年ならば、翌日より秋の匂いを感じるところだが、今年はそれどころか日一日と暑さが増していくではないか。
農業に従事する者にとっては、この残暑は作付け中の作物への害が気にかかる。白菜、ブロッコリー、キャベツ、カリフラワーなどは涼しい気候を好む作物であり、和人参は特に乾燥に弱く、夏バテ状態。一過性の残暑と高をくくっていたが、近畿上空の高気圧は全く動く気配は無く、居座ったまま。すでにほ場に定植された苗には毎夕散水し、急場をしのいだ。そんな中、この猛暑をどこ吹く風と言わんばかりに成長し続ける猛者がいた。大根である。直営農場で秋、冬作の中で一番最初に畑に播種されるのが大根である。大根の原産地は地中海地方で、日本には奈良時代に中国より伝わり、室町時代に一般に普及した。栄養価は、根の部分にはでんぷん分解酵素のアミラーゼを多く含み、ビタミンCも多く、毛細血管を強くするビタミンPも含有し、脳卒中の予防効果もある。葉はカロチンやビタミンC、カルシウムが豊富に含まれている。以上のように地上、地下の両部分に栄養豊富である。
少々話はそれるが、「大根足」と呼ばれるものがある。これは太く立派な足を思い浮かべるが、本来は元が太く、先になるほど細く締まる、きめ細やかで透き通るような白さの肌の褒め言葉であった。しかし現代ではどうもあまりいい使われ方をされていないようだ。
いよいよ大根到来の季節となった。ふつふつと煮上がった太く、厚く、味のしっかりしみ込んだ大根を頬張る。食物によって癒される、懐かしく優しい母の味だ。唯一、食によって癒される不思議な作物である。昔、東北地方を襲った冷害時も人々を救い、食文化を作った『大根めし』、救世主「大根」を思う時、決して粗末に扱ってはいけない。感謝していただきたいものである。
抜けるような青空に向かって、力強く緑の葉が伸び、お天道様からの恵みをいただく。
『天高く 馬肥ゆる秋』 本年は天高く トラ 肥ゆる秋となった。
夏が去り、秋の気配が漂う農場より