慈光通信148号 (2007年4月)


自然と生命をとりもどすために 15

前理事長・医師 梁瀬義亮

【この原稿は、昭和五〇年(一九七五年)六月二九日高松市民会館で行われた梁瀬義亮前理事長の講演録です。】


健康と食物・食物と農法・農法と心
作物の五%は虫にやろう
今まで化学肥料と農薬をどんどん使っておって弱っている土に新しく無農薬、無化学肥料の農法をやる時は、最初の三年間は出来がよくないことは事実です。そういう時の方法としては完熟堆肥を充分入れることです。もう一つはできるだけ有機質を入れ、虫や病気に強い作物を作ることも大切です。キャベツとか白菜とかきゅうりなどの病気になりやすいものはさけて、病気に強いものを作るのも一つの方法です。米の場合も初年度はあまり良くありません。その時は油かすをうまく使って下さい。
それからこの有機農法を進める上で申し上げなければならないことは、害虫というものを完全になくすれば益虫はエサがなくなり、また滅んでしまいまた害虫が大発生するわけです。ある意味では害虫は益虫のエサであって、害虫も益虫の一種であるということです。だいたい自然状態では、五%ぐらいは正しい農法でやっても虫が食べるわけです。少しぐらい虫の食べている野菜が本当の人間の食べる野菜です。しかるに、現在の市場では、虫が少し食べておっても値段はどかっと落とされるのです。また、曲がっておろうが少しぐらい形が悪かろうが、おいしくて栄養があって、日持ちが良ければ野菜としては合格ですよ。それなのに、今の市場ではカッコさえ良ければどんなものでも良いが、カッコ悪ければいけないという方法をとっています。だから、実際正しい農作物というのは市場で満足をされるものではなく、けちを付けられるものが本当の人間の食べるものというわけです。今の流通機構では有機農業は行えないということです。しかし、有機農業を行わなければみなさんも健康ではないし民族も滅んでしまいます。だからここで、いろいろの婦人団体とか、あるいは公益団体が努力してこの流通機構を正すような役割をする、ということはその流通機構の仕事をすればいいわけです。私達の会は一一軒の大きな専業農家と1千軒以上の消費者と、このまん中に財団法人慈光会健康食品販売所というものがあり、ここに流通機構があるわけです。それで農家は形の曲がったきゅうりや大根でも虫の食べたキャベツでも全部ここで良い値で買ってもらうわけです。そして消費者にお分けするわけです。ここの方は形が悪くても虫が食べていても喜んで買ってくれるし、またここのを買うと美味しいので他のは食べられないといって下さる。とっても美味しいものができます。流通機構を考えていただくことが大切です。 
                                                  
 (以下、次号に続く)

                           



オール電化住宅は温暖化に拍車をかける住宅です

 地球温暖化を防ぐために
 前回この通信で、アル・ゴア氏出演の映画、「不都合な真実」を慈光会職員全員で見に行ったレポートを書かせていただきました。それによると、近年温暖化は急速に進み、人類がそれに対策を打つ為に残された時間は、あと5年〜10年とも言われているとのことでした。子供たちに健やかな地球環境を引き継いでもらうためにも、一刻も早い対策を願うのは私たち共通の思いです。そこで、今回は、今すぐ私たちにも出来る温暖化対策をレポートさせていただきます。ご家族、友人、町内会、グループ、親類、父母会などの身近な集いにも話題として出していただき、それぞれの自治体、ひいては国にも働きかけることができたらと願うものです。

I. 個人で出来る省エネ
(1)暖房温度は16℃、冷房温度は28℃に。
(2)待機電力をカットしましょう。
家庭の消費電力の10%は待機電力です。使わない器具のプラグを抜きましょう。電子レンジ、使わない季節のエアコン、オーディオセット、テレビ、パソコンなど待機電力を沢山使用する電気製品の電源を切りましょう。ご存知でしたか?電気スタンドや携帯電話の充電器でも待機電力を使っています。メーカーには、待機電力不要の製品を一刻も早く開発して頂きたいものです。
(3)自動販売機を出来るだけ使わないようにしましょう。
現在、日本国内に設置されている自販機は飲料用だけで、260万台に上ると言われています。その消費電力は年間780億?で、それは名古屋市民がまるまる3年以上暮らせる電気の量に相当します。ヨーロッパではこんなに沢山の自販機は設置されていないそうです。外出には是非「マイポット」を持参しましょう。中に温かいコーヒーを入れるのも、冷たい水を入れるのも自由です。さらに良いことに「マイポット」は繰り返し使えるので、空き缶や空き瓶をリサイクルするエネルギーも不要になります。それに、とても経済的ですから、家計にもうれしい工夫です。
(4)保温調理をしましょう。
おでんやカレー、煮物などの煮込み料理は、保温調理でしましょう。3〜5分煮込んだ後に、毛布やバスタオルにしっかりくるんで放置します。15分から20分のちにはおいしく出来上がっています。新聞に載っていた試算によれば、「全国にこの調理法が広まれば、六千億円分のガス(又は電気)が節約でき、二酸化炭素の排出量が減らせる」そうです。簡単に実行できます。今日から始めましょう。市販の保温調理専用の鍋(真空調理鍋、はかせ鍋など)を利用するのも良い方法です。
(5)お風呂に入るとき色々な工夫をしましょう。
現在、旱魃が続くオーストラリアでは、シャワーは一人3分まで。シャワーが温まるまでの水もバケツに受けて掃除や散水に使うなど、日本では想像もつかないほどの節水を徹底している、と報道されていました。又、北欧のある国では、省エネの為、一週間に一度しか入浴しない例もあるそうです。温暖化を深刻に受け止めている国を見習い、私たちも地球のことを考えてお風呂に入る工夫をしましょう。シャワーの出しっぱなしは止め、お風呂の残り湯は、掃除、洗濯に使う等、工夫しましょう。
(6)良く使う蛇口やシャワーに節水コマを取り付けましょう。
東京都など、自治体によっては水道局の窓口で節水コマを無料配布しています。一分間で最大6リットルの水を節約できるそうです。詳しくは左記へ。(http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/pp/syuukan/s03.htm)尚、節水コマを購入する場合は1個50円前後です。水勢が強くなるように工夫されていて洗い心地が変わらない節水シャワーヘッドも市販されています。
(7)合成洗剤を止め、石けんを使いましょう。
洗濯石鹸、シャンプー、化粧石鹸、歯磨き粉、住居用洗剤など、全て石鹸製品に替えましょう。
二酸化炭素を吸収し、酸素を供給するのは、陸上の森林などの植物だと思われがちですが、実は、地球の光合成の三分の二は海が担っています。「光合成に必要な太陽の光がとどくのは海面から70〜80mぐらいですが、この海面に近いところに住む植物プランクトンや海藻によって、地球の酸素の3分の2がつくられています」(《財団法人》日本海事広報協会HPより)又、海水中の二酸化炭素は珊瑚や貝等に取り込まれ、サンゴ礁や貝殻などになって固定化されます。このように重要な酸素の供給と二酸化炭素の固定化をつかさどる生命が生息する海の微妙な生態系を、合成洗剤によって壊してしまっては、取り返しがつきません。速やかに自然成分に分解される石鹸を使いましょう。合成洗剤は川や海の生物を殺し、川や海の浄化力を損なう化学合成品なのです。
(8)テレビをつける時間を一時間減らしましょう。
日本人がテレビをつけている時間は統計によれば何と1日に平均6時間。見る時間は3〜4時間、さらに一生懸命見る番組は1〜2時間だそうです。工夫をすれば一時間の時間短縮は可能ですね。一時間減らすと、一ヶ月で0.5kgのCO?の削減になります。
(9)早寝早起きをしましょう。
一時間早寝すると一ヶ月で0.25kgのCO?の削減になります。これからの季節早起きもいいですね。とかく夜更かししがちな昨今、可能な方は、健康のためにも、早寝、早起きに取り組んでみませんか?
(10)電灯はこまめに消しましょう。
(11)緑のカーテンを作りましょう。
これから種まきや苗植えの季節です。去年、通信紙上で紹介した、植物を利用した涼。今年こそ実行しましょう。日陰を作りたい窓やベランダに直か植えでもプランターでも良いのでつる性植物を育てます。緑のカーテンに向くつる性植物は、ゴーヤ、へちま、朝顔、夕顔、のあさがお、フウセンカズラ、オーシャンブルー等々。「緑のカーテン」でインターネット検索すると、沢山紹介されています。きっと、エアコン使用量が減ることでしょう。
(12)出かけるときはTPOで、マイバッグ、マイ箸、マイカップを持参しましょう。
コーヒーショップでマイカップを持参すると最大200円の割引をするメーカーも出てきました。

次号でも引き続き温暖化防止の工夫をレポートいたします。皆様に良いアイディアがおありでしたら、是非、慈光通信編集部までお知らせ下さい。             



農場便り 4月

   
  陽の光が降り注ぎ、光の玉が木々や草花の葉の上からこぼれ落ちる。いよいよ春本番、すべての生物からの大きな息吹を感じる。畑では取り残した冬野菜が白や黄色の花を一斉に咲かせ、地表では冬を無事に越した小虫たちが右に左にと忙しく動き回る。その中でも七星てんとうの動きはぎこちなく、つい笑ってしまう。農場の上空では、とんびが晴れ渡った青空を風に乗り、高く高く舞い上がり大きなループを描く。小鳥たちは新芽が芽吹くほその木の頂で美しい声で歌う。里も山も森もすべてが、印象派が描く淡く美しい風景画のようで、私の中にも大自然の美術館が生まれる。
   朝、作業着に着替え、履く長靴の冷たさもなくなり、まもなく足元も長靴から地下足袋へと変わっていく。作業開始から時間が経つにつれ、一枚、また一枚と脱皮してゆき、最後はシャツ一枚となる。冬場には見られなかった汗が額を伝う。この季節は一年中で最も気候が良く、食欲も俄然生まれ、昼のお弁当も、「温かいランチジャー」から「わっぱ」へと変わる。昔から伝わるこの「わっぱ」はかなりの優れもので、ご飯の味を最大限に引き出す。昔から「わっぱ」は本体に1食分、蓋に1食分入り、併せ持つと2食分を持っていくことが出来、夏場でもご飯が傷むことがなく野外での作業者には最高の昼食を提供してくれる。現在、有名な「わっぱ」の生産地は、秋田県の「曲げわっぱ」、静岡県の「「井川めんぱ」、南紀熊野の「わっぱ」と日本三大わっぱで、どれもすばらしい名品である。伝統工芸品が絶えることなく、次世代へと受け継がれていくことを願うと同時に皆様にも是非一度使っていただき、ほっこりした気分を味わっていただきたいと思う。
   春は、一年中で量、種類共に最も多くの種を蒔く季節である。早くは2月中旬より、夏季に収穫する果菜類のトマト、ピーマン、きゅうり、ナスなど、3月下旬には定植がハウス内で始まり現在順調に育っている。農場の露地作物では、キャベツ苗が、隣の畝では昨年11月に蒔いたごぼうが春の陽に向け深い緑の葉を大きく広げ、エネルギーを吸収する。土中では手帳のペンほどの白い根が養分をしっかり吸収し、7月下旬には夏ごぼうとして収穫する。他にも3月に植え付けたじゃが芋が元気よく芽を出し、3ヶ月余りで地下茎に大きく養分を貯蓄し、6月には収穫、年間を通じて食卓を飾る食材となる。その他トレイの中では多くの苗が育つ。畑では、これから雑草との格闘が始まる。負けてはならじ、と除草鍬(くわ)で削って回る。が、敵も手強く、一週間も目を離そうものならグリーンの絨毯を敷き詰めたようになり、作物と雑草が逆転してしまう。なかなか気の抜けない季節でもある。作物はチンゲン菜や大根、ビタミン菜・・・和・洋・中が一つに畑で手を繋ぎ、満開に花を咲かせる。花を見たとき緊迫した社会情勢を忘れ心が和む。今回はその中の一つ、中国野菜のチンゲン菜について少し説明させていただく。
   原産は中国ではなく、地中海沿岸トルコやバルカン半島で、中国にて栽培種に分化した。中国語では青梗菜と書き、茎の青い野菜という意味である。日本に入ってきたのは、昭和47年 日中国交回復の頃で、現在日本で一番たくさん栽培されている中国野菜である。アルカリ性ミネラルが豊富な緑黄色野菜であり、主な栄養素はビタミンA・C、一株で一日の所要量の半分以上を摂取することが出来、風邪の予防などになる。βカロチンは体内でビタミンAの動きを活発にし、皮膚や粘膜を健康にして美肌を作る。カルシウム・カリウム・鉄分・食物繊維などこれらのアルカリ性ミネラルはストレス解消、骨粗しょう症、貧血予防、高血圧、利尿作用、便秘などに効果をもたらす。また漢方的薬効もあり、熱さまし、胸やけ、胃のむかつきにも効くといわれる。料理法は、炒め物の他スープや煮込みなど中華風だけではなく、和洋にも利用できる。年間を通じ出荷できるよう、これからも力を注いでゆきたい。
   4月上旬より農場の周りには山桜が咲く。山を覆う新緑の中、濃いピンクや白に近いピンクの花がたまらなく美しい。農場の中にも大きな山桜があり、南より吹く春風に花びらがひらひらと舞い、山の中や谷の底へと運ばれて行く。短い期間の美しい風景が、作業する者の目を楽しませてくれる。人目に触れることのない、山深くに根を下ろす桜、そんな桜も季節が来れば美しく咲く。多くの偉人が桜の句を詠む。人生の無常、すべてのことは他人事ではなく明日は我が身と日々を送る人の心に戒めを、と越後の高僧・良寛和尚が詠まれた句は、いつまでも私の心に刻んでおきたい句である。「散る桜 残る桜も 散る桜」                      

春の昼、わっぱ飯でほっこり幸せを感じる農場より


  資料室だより

資料室には色々な方が見学においでになります。それぞれのお方の先生への思いは一入(ひとしお)と拝察しています。来訪者のお話を伺い、胸の熱くなる思いをすることも少なくありません。又、初めて先生を知られて、熱心に色々質問してくださる方もいらっしゃいます。そんな資料室の日々をお知らせいたします。

梁瀬先生の患者さんであった方が見学に見えて、その方のブログに写真入りで資料室を紹介してくださいました。その方の許可を得て、以下にブログアドレスを紹介させていただきます。遠方の方は是非ネットで訪ねてみて下さい。以下のアドレスは「資料室」のページ直通です。(http://blog.goo.ne.jp/anikobe/e/71d1bf3a09186bc9e93919ebd8532340)(「 カフェテラス anikobe 」で検索していただいてもヒットします。ブログは毎日更新されていますので、「資料室のページ」まで下りていってください。)

石川県立大学講師、環境生物工学研究室の田知本氏の来訪がありました。氏は五条市で開かれた「第一回日本有機農業研究会」に参加されたことがあり、その際に梁瀬先生とお会いしたこともあるそうです。資料室に歌を残していってくださいました。
◎ 現代の花岡青洲と讃えられし
       先生のご遺志は今も慈光会に
◎ 我が前でみまかりしかの隊員は
        慈光会専務の親友という
(昭和54年タンザニアで亡くなりし故土屋青年海外協力隊員を悼んで詠む)

尚、氏が帰省されてすぐに能登半島で震度6強の地震が起きました。お見舞いのお電話をかけた所、県南部ではまったく被害が出ていないが、被害が出ている地方にボランティアで救援活動に行く旨、お話くださいました。
     被害にあわれました皆様に心よりお見舞い申し上げます。

医師の川嶋昭司氏(前・奈良医大第一生理助教授)から、梁瀬先生の論文が載った冊子2冊の寄贈がありました。早速、資料室の資料として保管させていただきました。
(「絶食研究7・8号「生命の医と農を求めて」、絶食研究19・20号「生命の医と農を求めて」」

かつて、原因の分からない病気で、先生の診察を受けてやっと農薬中毒と分かり、すっかりお元気になられた、というOさんの来訪がありました。今でも、先生に勧められた青汁の顆粒を毎日飲んで、健康に過ごしておられるとのことでした。先生の医療を是非多くの方に知っていただきたいと、やはりブログで、紹介させていただきたいとのお申し出がありました。

五条市役所から資料室の取材をしに来られました。
資料室の事が新聞記事で紹介されたため、五条市役所に問い合わせの電話が沢山かかってくるようになったそうで、五条市としてきちんとした情報を伝えるための取材でした。その後、市の広報に資料室の外観写真と共に資料室の紹介文が載り、それを見た来訪者も増えてきています。

アトピーの子供さんを持つお母さんが、梁瀬先生の医療を参考にしたいと、資料を集めてコピーし、又、「青汁は効く」(医学博士・遠藤仁郎著)も借りて帰られました。

記念資料室では、視聴覚コーナーで、梁瀬先生がNHKに出演されたビデオを流していますが、それをじっくり見て行かれる方が大変多いように思います。又、学習会で見たビデオやそのとき使った参考書を慈光会ライブラリーから借り出される方も増えました。



りんごの山口さんからのお便り
(山口さんは日本で数少ない有機りんごの栽培者で、慈光会の協力農家です)

(前文略)このところの剪定作業もあと少しで終えますが来シーズンの花芽も沢山ついていますので、あまり頭を使わずに楽しておりますし、又秋も期待できると思います。
さてこちらは低気圧の影響で冬景色に逆戻りになり、雪が真横に降っています。あまりの暖かさにつられ冬タイヤを夏用に換えた人々は、またまた大慌てで冬タイヤにと・・・気まぐれな自然に翻弄されています。
それでも北国はやっぱりこうでなくっちゃ、とも思えたりするのです。桜の開花の言葉も聞かれる五条から見れば想像もつかないかも知れませんね。
ともあれ長きにわたり本当にありがとうございました。慈光会の会員の皆様あってのりんご作りと思っており、心より御礼申し上げまして筆を置くことにいたします。
 2007年3月12日



「講演と音楽の集い」のお知らせ

  昨年末完成しました梁瀬義亮記念資料室の開館を記念して、来る7月1日(日)に五条市民会館で「ピアノとチェロ」の音楽会を開催いたします。又、同時開催の講演会には講師に槌田劭先生(京都精華大学教授・使い捨て時代を考える会理事長)をお招きし、「子供の食と安全」についてお話していただきます。ご期待下さい。