慈光通信 152号


生命を守る正しい農法の追求 III
  

生命力の低下が病気をまねく

さて、本論にもどりまして、ある条件がまいりますと生命力が低下いたします。そうすると、いま申しましたとおり、微生物とか、暑さ寒さとか、あるいは、公害の毒物であるとか病原性を発揮する。そこで病気という現象がおこってきます。そのときには、反応的な病気がおこってまいります。
 ところがもう一つ、生命力が衰えてまいりますと、そういった外的な侵入がなくても、そのままずっと生命体が腐っていくような形態を示す場合がある。いわゆる退行性病変、退行性疾患がおこってきます。これは現在非常にふえております。たとえば、肺炎菌のため高い熱が出るとか、チフス菌が入ってきて、ものすごい熱が出るとか、コレラ菌が入って下痢するとか、はげしい反応が生体に起こる病変もあると同時に、一方では退行性の病変、つまり人間の体がそのまま腐っていくような病気が出てくるわけです。精神病であるとか、心臓血管系の病気とかガンとか、肝臓硬変というような、いつのまにか、かからないうちに体が腐ってしまっているというものが、非常に多くなってきています。
 生命力の低下、このことが、現在一番大きな問題になるべきです。生命の本体を識ることは、現在の私たちには出来ない。(生命力はわれわれの理性なり、悟性なりをもってしては、いかんとすることもできない。)これはすでに与えられたものとして、うけとるより仕方がない。だけど生命力があるんだということは、医学、農学の基礎です。
 余談ですが、いまの日本人にはだいぶ縁が遠くなりましたが、真の宗教、東洋における宗教、西洋における宗教とか、あるいは、真の意味の芸術地とかいったものは、こういったわれわれの理性、悟性を使わない、違った方法で、生命の本体を追求していく一つの方法であると考えられます。理性、悟性を使わないで、もっと直感的な方法で追及していくのです。
 しかし私たちは、生命の本体は分からないけれども、一つの事実として、生命の現象は観察できるわけです。それなのに、それを分析することによって、あるいは自然の中からとり出してしまうことによって、その生命の本来の姿をなくした状態において研究してきたのが、いままでの医学、農学の欠点でした。もちろんいまの医学、農学が全面的に悪いと決していうのではありません。それには、たしかに、一面の真理があり、恩恵もあったわけですが、他面、非常な欠点があって、そのために大変な害が現在できているので、その点についてもう一度、われわれはふりかえってみなければならないと存じます。
 この生命力の低下が、人間、動物あるいは植物の病気にとって、もっとも大切な要素であると考えられるのです。生命力が旺盛なときには、微生物はどうもしない。暑さ寒さもどうもない。
 一例をとりますと、この間、私のほうでは大変な旱ばつでした。みんな畑は干上がって枯れてしまった。もちろんどんどん水をひいた所は助かっておりますが、しろうとの園芸で、そういう設備のないところは、みな枯れてしまった。大変な旱ばつでした。しかも大雨が降ったあとでしたので、根が浅かったのです。
 ところが私たちの提唱する農法を行ってくださっているしろうとのところでは、びくともしないんです。土ができているし、生命力旺盛なものですから、あの旱ばつよくたえて、なすもトマトもみな無事にやってきています。それからベト病がはやって、きゅうりなど全滅したところが多い中で、そこでは、なにも消毒せずに、無事にきています。
                            (以下、次号に続く)
 


(財)慈光会の直営農場は「GMOフリーゾーン宣言」を行いました

「GMOフリーゾーン」とは「遺伝子組み換え作物拒否地域」のことです。ですから表題を言い換えると、「慈光会直営農場では遺伝子組み換え作物は栽培しない」と宣言したことになります。もとより慈光会では、完全無農薬有機農法で栽培しているのですから、遺伝子組み換え農産物とは無縁の地域ですが、現在の状況では、こう宣言することに大きな意義があります。

 以下に「GMOフリーゾーン運動」をご紹介してみましょう。(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン事務局ホームページより)

1、GMOフリーゾーン運動とは?

GMOフリーゾーンとは、遺伝子組み換え作物が栽培されていない地域のことです。いま欧州では、このGMOフリーゾーンが拡大し、EU加盟各国で遺伝子組み換え作物の栽培ができない地域が増えています。
GMOとは、遺伝子組み換え生命体を意味します。現在は主に、遺伝子組み換え作物を指しますが、本来は家畜など他の生物も含めます。フリーゾーンとは、それが「存在しない」地域を意味します。フリーというと、かってに栽培できる地域と受け取られがちですが、逆です。

2、だれが宣言できるの?

遺伝子組み換え作物を栽培したり、取り扱ったり、食べたりするのがいやな人は、誰でも宣言できます。GMOフリーゾーン運動は、農家の方に限定せず、消費者も食品関連企業や流通業界の人も参加できる取り組みです。対象は、
 GM作物を作らない農家
 GM食品を作らない食品業者
 GM食品を売らない流通業者
 GM食品を買わない消費者
など、誰もが参加できます。農家以外の方はGMOを拒否しGMOフリーゾーンを守るサポーターとしての役割が期待されます。


3、どうすればよいの?

宣言すると同時に、
(1) GMOフリーゾーン宣言の文書に署名し、キャンペーン事務局に送り登録する。
(2) 圃場や玄関などに看板を立てたり、シールを貼ったりバッチをつけたりする。
(3) 周囲の人に参加を呼びかけ広げていく。
 以上の3つが、宣言に伴う基本的な行動です。
宣言文は以下にあります。看板や玄関に貼るシール、バッチはキャンペーン事務局にあります。(シール、バッチともに解説書付き500円、送料含。バラでもおわけします)

4、目標

草の根でGMOフリーゾーンを広げ、日本ではGM作物が栽培できない状況を作り出していきたいと考えています。
当面は農家の圃場、市民農園、家庭菜園でGMOフリーゾーンの看板を増やすこと、そこでの参加者拡大を目指していきます。

また、自治体にも働きかけて、北海道で作られた「遺伝子組み換え作物栽培規制条例」のような規制を各地で広めていくことも、大事なことです。

GMOフリーゾーン宣言

1、私は、自らが管理する地域で遺伝子組み換え作物を栽培しないことを宣言します。
*流通業者などの場合、私は、自らが管理する地域で遺伝子組み換え食品を取り扱わないことを宣言します。

2、私は、自らの意志を示すために看板を掲げます。
*あるいは、私は、自らの意志を示すためにシールを貼ります。

3、私は、種苗業者に対して種子や苗が遺伝子組み換え品種によって汚染されていないよう求めます。
*あるいは、私は、食品を扱う人たちに遺伝子組み換え原料を使用しないよう求めます。

4、私は、周囲の人たちにGMOフリーゾーンに参加するように働きかけます。

5、私は、遺伝子組み換え作物栽培者に対して、私が管理する地域を遺伝子組み換え品種によって汚染しないよう求めます。
*あるいは、私は、遺伝子組み換え作物を扱う人たちに、私が作ったり食べたりする食品を遺伝子組み換え原料で汚染しないよう求めます。

6、私は、GMOフリーゾーンを支持し、広めるように周囲に働きかけます


(問合せ及び送付先)
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン事務局
03−5155−4756 FAX 03−5155−4767
E-mail:no-gmo@jca.apc.org

(このホームページは「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン事務局」のご了承を得て、転載させていただいたものです。)
◇◇◆◆消費者の立場からの意思表示グッズ「遺伝子組み換え作物は食べません」と表記された可愛いステッカー(緑のえんどう豆が笑っている、直径12cmの円形シール)があります。ご希望の方は事務所までお申し込み下さい(無料)


ハチドリの物語

南アメリカ先住民に伝わるハチドリのクリキンディの物語をご存知ですか?
ちょっとご紹介してみましょう。

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 あるとき森が燃えていました

 森の生き物たちは
 われ先にと逃げていきました

 でもクリキンディという名のハチドリだけは
 いったりきたり
 口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます

動物たちがそれを見て
「そんなことをしていったい何になるんだ」
といって笑います

クリキンディはこう答えました
「私は私にできることをしているの」

出典「私にできること〜地球の冷やし方」(ゆっくり堂)
    「ハチドリのひとしずく」(辻信一監修:光文社)
 
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 今、環境問題や地球温暖化防止に取り組む人々の間では、このクリキンディが一つのシンボルになっているそうです。
「私一人が取り組んだってなんになるの?」ではなくて、「私一人でも温暖化防止に役立つことをさせていただこう」と思って行動することが、やがておおきな力になるというのです。
 かつて梁瀬先生が仏教の阿含(あごん)経(きょう)の中にも、とてもよく似たお話があるのを紹介してくださったことがありました。慈光会がまだ影も形もなかった草分け時代、農薬を使わないと農産物が出来ないと誰もが信じて疑わなかった時代、先生が共に運動を進めてゆく有志の方々に話したお話です。(「生命の医と生命の農を求めて」より抜粋)

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森の大火を消した鳩のように

昔、大きな森の中に鹿や兎など様々な鳥や獣が仲良く平和に暮らしていた。ところがある日大火事が起こって、動物はすっかり火に囲まれて逃げ場を失ってしまったが、鳩だけは飛べるので無事脱出することが出来た。しかし一旦逃れたものの、彼女は火の中の仲間のことを思うと堪らなくなって再び飛び戻ってきた。
 彼女は近くの河へとびこんだ。羽に水をつけてそれを大火の上へふりかけては、又、河にとびこんだ。必死になってこれをくり返している鳩の行動は一見馬鹿げていた。
 しかし鳩の真心が天の神様の御心を動かして、神様は大雨を降らせて下さった。お蔭で森の火は消え動物は再び楽しく暮らした―――

「今のこの日本における我々の行動は、鳩のそれに似ているでしょう。一見、馬鹿げて見えるかもしれませんが、真心は必ず神仏を動かすことを信じています。」私はこう言った。
 
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 「蛍(ほたる)火(び)のような小さな火でも燃え続けていれば、やがて大きな灯になる可能性がある。しかしすっかり火が消えてしまえばもう燃え上がることはない。私はこの蛍火を燃やし続ける考えです。」(梁瀬義亮)
 昭和30年代の初期にこのようにしてともされた火は、今、日本のみならず世界中でオーガニック(有機農業)の波となって、広がってきています。
 クリキンディの物語も、阿含経の一羽の鳩の物語も、「自分一人が行動したって何にもならない」と思い込みがちな私たちの心を、大いに励まし勇気付けてくれるお話です。



簡単・お風呂掃除術

 これから年末にかけて、家中の大掃除をしなければ・・・と思うと、ちょっと気が重いですね。特にお風呂場のていねい掃除は、タイル磨きの労力を考えても、覚悟して取り掛かる方が多いのではありませんか?
 先般、慈光会の会員の方に重曹を使った簡単お掃除法を教えていただきました。試してみた慈光会職員の面々は、口を揃えて「とても楽!」といいました。以下にその方法をご紹介いたしましょう。

お風呂を出るときに重曹を200CCカップ一杯程、湯船のお湯に入れてよく溶かしておきます。(追い焚きは不要)そのお湯の中に、湯船のふた、洗面器、イス、石鹸入れなど、お風呂用品をすべて浸けこみます。湯船のふたを取ったままお風呂場の窓もドアも閉めて一晩放置します。その間、湯船から蒸発した重曹水が湯気となって、お風呂場の壁、床、窓、蛇口、シャワーホース等、ごく細かい部分に至るまで行き渡るわけです。
 翌日。大きめのスポンジ又は、目の細かい布等でさっとこするだけで、タイルの汚れはスルスル落ち、ぴかぴかに。シャワーホースもちょと歯ブラシでこするだけでOK。汚れはかなり落ちやすくなっています。洗面器に付いた汚れも、従来より楽にこすり落とせます。2週間に一度位のペースでこのお掃除をしておけば、年末のお風呂場大掃除は不要になりそうです。年末にはまだ間がある今から、トライしてみませんか?年末は余裕で過ごせることでしょう。

 同じ原理で電子レンジのお掃除もできます。
 コップ一杯の水に大匙2杯の割合で重曹を溶かします。深めの耐熱容器にこの重曹水を入れ電子レンジ庫内で沸騰させます。レンジ内に蒸気が行き渡ったら重曹水の容器を取り出し(熱いから気をつけて)庫内を拭きます。面白いように汚れがスルスル落ちてしまいます。容器に残った重曹水を使って、電子レンジの外側とガスレンジの周りもサッと拭いてしまいましょう。

 他にも重曹を使った楽なお掃除法、たくさんあります。環境にも体にも悪影響を与える合成洗剤や塩素系漂白剤を使わなくても、十分に楽なお掃除ができるのです。お試し下さい。(重曹は慈光会でも取り扱っています。)



農場便り 12月

 

 11月18日、今年初の木枯しが吹き、いよいよ冬到来。翌朝には大峰山脈の最高峰 八経ヶ岳,稲村岳、弥山の山々には薄っすらと雪化粧が施された。木々は優しい春の日差しに芽吹き、夏の猛暑に耐え、秋の風を葉脈に感じ一斉に色付き、北からの木枯しにさらわれ、美しい葉は一年足らずの命が尽きる。落葉した枝にはすでに来年の芽が付き、寒さに耐えている。赤茶けた落ち葉が地表を覆い尽くしていた柿園に白と黒の美しいコントラストの小ガラが枝から枝へと休む間もなく飛び回り、寒さで透きとおった柿の実を美味しそうにつつく。空は鉛色、周りは寒々とした風景に包まれた。その中で活発に動き回る野鳥だけが暖かな温もりを感じさせてくれる。
 寒さが厳しくなるにつれ、畑の野菜は美味しくなる。寒さとなれば鍋料理、となるが、それではあまりにも芸がない。温かい煮っころがしなどいかがであろうか。若者に「お袋の味は?」と質問すると、一昔前には、「味噌汁、煮っころがし」と答えが返って来たものであるが、最近の若者からは、多くが「肉じゃが」と返ってくる。地場野菜を使い、きれいに盛り付けられた煮物からは、ゆらゆらと湯気が上り、冬の食事には欠かせない食べ物であったが・・・。どうも時代は変化しているようである。
 この時期の食材に里芋がある。寒さが増すにつれ美味になる里芋は、中秋から初冬に掘られる。原産はマレー地方からインド。日本への渡来は縄文時代で稲作より古く、山地で自生しているのが山芋、里で栽培されていた事から里芋とよばれている。主成分はデンプン質、低カロリーで食物繊維が多く含まれている。ぬるっとした食感の成分はムチンで、胃壁を守りタンパク質の消化を助ける。他の成分にガラクタンがあり、免疫力の向上、脳細胞の活性化、認知症の予防に一役買うとされる。親芋に小芋、孫芋がたくさん付く事から、子孫繁栄を願い祝いの膳には欠かす事の出来ない食材である。
 栽培の手順は、前年に当園で栽培した里芋の中から種芋に適したものだけを選び、モミ殻の中で寝かせ、春を待つ。4月、冬季に大量の堆肥を運び入れた畑に、畝幅130cm株間50cm2条に冬を越した種芋を植え込んでゆく。pHはさほど気にしない。5月、春の陽を受け、地表より針のように尖った芽が顔をのぞかせる。気温の上昇と共に、里芋にとって理想の環境を迎える。梅雨には大人の身の丈ほどの高さに成長し、葉を天に向かって大きく広げる。7月、高温多湿のピークを迎え、十二分の水分と大量の肥料を吸収し、高さは2mに達する。里芋畑の中に足を踏み入れ屈むと、深い森の中にいるような景色が目の前に広がる。親芋の株元より子株が芽を出す。親株の養分を子株が吸い取ってしまうため、子株はすべて取り去る。夕方鎌で刈っていると、1m近く大きく広がった葉に溜まった雨水が後方で音を立てて流れ落ちる。その音に、小心者の私は飛び上がるほどに驚かされる。せみの声が賑やかになる8月、梅雨前線も大陸へと押し上げられ消滅。葉に降り注ぐ陽射しもピークを迎える。たっぷり土に含んだ梅雨の雨水も日に日に乾き出し、葉の一部に日焼けで褐色の模様が現れ始める。水分が栽培の生命線である里芋、金剛山系より流れる谷水を用水路から里芋畑へと引き込む。水は勢い良く流れ込み、澄んだ水は泥水となり、音を立て、渇いた畑土に吸い込まれて行く。水の勢いは衰えることなく,畝間をどんどん流れて行く。ウロチョロ歩いていたオサ虫が流れに飲み込まれそうになりながら、必死に泳ぎ岸に辿り着く。垂れ下がり気味の葉はストローのような導管より一気に水を吸い上げる。8月にはこの作業を4〜5日に一度行う。9月、中央部の親芋はドッジボールを一回り小さくした程の大きさに育ち、大きな葉は地下茎へと養分を送る。親芋の周りには小さな小芋がたくさん付く。10月中旬、涼しい風と共に一気に葉は勢いをなくし、垂れ下がり、下旬には茎までが茶色になり親芋の役目を終える。土中では小芋、孫芋が育ち、後は出荷を待つのみとなり、土中より小芋たちの賑やかな話し声が聞こえてくる。11月、初掘り、スコップで株の周りを掘り起こす。掘り起こした株を持ち上げ地上に「ドスン」と叩きつける。土が飛び散り、小芋が可愛い姿を現す。親芋から外し、根を取り、一つ一つに分ける。その中、親芋にしがみつく小芋は力道山まがいの空手チョップで引き離す。この作業が里芋の親離れであり、子離れである。小芋で一杯になったコンテナを畑から持ち出し、きれいにそうじする。こうして冬の食材、里芋が皆さんの食卓へと届けられる。12月、地上部は枯死し地下茎だけが眠る畑が寒々しく目に映る。地上部をきれいに片付け、畝毎に使い古したマルチを3枚重ねに掛け布団のように掛け、里芋を寒さから守る。来年3月上旬まで逐次出荷が続く。ホカホカの温かい煮っころがしで体も心も温まっていただきたい。
 暖冬とはいえ、これから寒さが日本列島を包み込む。今年もインフルエンザが猛威を奮い始めた。どうかこの冬も当会の栄養価高く美味しい野菜や果物をお召し上がりいただき、健康で楽しい日々を過ごし、冬の美を楽しんでいただきますように。慈光会の作物には、協力農家、直営農場職員、そして販売に従事する職員が会員の皆様の健康を願う温かい思いが宿っている。
 

                

         冬空に里芋の寝息の聞こえる農場より