それからもう一つ大事なことは、食べることも大事ですけれど、呼吸も大事です。一日位食べなくても死にませんが、二、三分息が止まったら死んでしまいますね。人間は非常に呼吸が大事です。これは酸素を吸っているのではなくて、宇宙の霊気をいただいて生命が生きる、と思って頂いた方が良いと思うのです。ですから、息がしにくいからといって、酸素吸入ばかりしていたらだめです。私と同じような病気になっていた方が、酸素吸入ばかりしていたら亡くなってしまいました。酸素を吸うんじゃなくて、宇宙の霊気をいただくと云う意味で、時々おなかへ大きく息を吸い込んでいただく、或いは外に出て、次のような運動をしていただく。まず下腹一杯息を吸ってから、もう一度手を上げると、さらに息が肺に入ります。これを一日何回かやって頂くと良いのです。深呼吸というのは大事なことで、腹式呼吸をよくやって下さい。詳しくは、「死の魔王に勝て」に書いておきました。
食べ物では、日本人は西洋人の真似をしたらいけないのです。日本人は火山灰の土地に住んでいますから、カルシウムやミネラルが欠乏しますので、外人の様に肉と米だけではだめなのです。水もカルシウムやビタミン、ミネラルが足りないので、これらの多いものを食べないといけません。そのために、芋、豆、菜っ葉、海藻が非常に大事な食べ物で、これは絶対忘れてはいけないことなのです。それから甘いものを沢山とりますと、体からカルシウムなどが抜けてしまいます。この間私の親戚の者から電話がかかって来まして、「カルシウムの取り方が足りなかったので、背骨が圧迫骨折になってしまい、ギブスを入れて今寝ているんだ。」と言うものですから、私は知っていたのですが、「甘いものよく食べているんだろう。」と聞いてみました。すると「甘いものが好きだから、寝込んだままテレビを見て、最中ばかり食べている。」といいます。そこで「あなたは元から甘いものを食べ過ぎだ。あなたはカルシウムの事をおっしゃるけれど、食べ方が足りなかったというより、甘いものでカルシウムが体から取れてしまったんだ。だから最中など、食べていたらいけない。」と言うと、「それはたいへんだ」といっていました。大体このようなことなのです。この頃の子供のように、変なものばかり食べていましたら骨粗鬆症になりまして、年をとったら哀れです。背中が曲がってしまったり、つぶれたり、骨折したり、四、五〇歳で骨粗鬆症になってしまいます。それともう一つ怖いのは市販のインスタント食品で燐性の化合物を使ってありますから、食べるとカルシウムが抜けてしまいます。ただでさえも日本の土地はカルシウムやミネラルの少ない所ですから、芋、豆、菜っ葉、海藻、魚等を主にして、甘いものを控えて頂かなければいけないのです。甘いものでも黒砂糖は、そのうち害が少ないということを知っておいて下さい。
もう一つ大事なことは、歩くことです。私は忙しいから、いつも、どこへ行くにも単車で走っていました。また六十二歳から六十六歳までは、本を書かせて頂きました。私としては、一世一代の大事な本だったものですから、四年間、暇があれば座り込んで原稿を書いたり、調べ物をしたりしていました。大体二年間、運動しないで座り込んでいたら、体がペチャンコになるらしいです。私は昔からよく運動していた関係で、心臓がとても大きく、あぐら心臓(スポーツ心臓)といって自慢の心臓でした。レントゲンを撮る度に「見て御覧、いいだろう。」と言っていました。ちっとも疲れないし息切れもしませんでした。ところが本を書いた後レントゲンを撮ってみると、大きかった心臓がラッキョウの出来損ないの様になっていました。これはいけないと思っていましたら、すぐに今の様な状態になってしまいました。ですから歩かなければいけません。それまでも珪肺はありましたが、負けないで来た訳です。ところが、きっと、座り込んでしまって、クリーンヒーターの乾いた空気の中ばかりにいたのが悪かったと思います。今ではもう階段を上ってもハアハア息切れがします。ですから呉れぐれもお気をつけ下さい。私の父は長生きしましたが、それはよく歩いたからだと思います。歩くことは保健のためにも大事だし、病気を治すという意味にもなります。私も又、これからポツリポツリ歩くようにして、もう一度元気になって皆さんをあっと言わせようと思っております。(笑い)
これが大体のコツです。しかしこの騒がしい世の中、自然のない世の中、悲しいことですがやむを得ません。色々と問題はありますが、今日は一応これだけにさせて頂いて終わらせていただきます。
眠気を覚ましたり、気分転換したり、口臭を消したりするためにと、若い人たちの間では、チューインガムを噛む習慣が定着しつつあります。中高生のカバンの中には大抵ガムが潜ませてあるようですし、彼らにとって、それは必須アイテムのひとつなのかも知れません。歯磨きの後噛むという、機能を売り物にしたガムも発売されるようになりました。又、何と言っても小さい子供達は、ふくらますことのできる風船ガムが大好きです。若い世代にこんなにも需要のあるガムに発癌物質が含まれているとしたら、これは大問題です。
曾ては天然チクル一〇〇%だったガムベースも、現在では、天然チクルが高価なため、酢酸ビニル樹脂が大量に使われるようになりました。この酢酸ビニル樹脂に発癌物質が含まれていることが判明したのです。(「食品と暮らしの安全」九二号)市販のガムには、必ずと言っていいほど酢酸ビニル樹脂が使われています。特に風船ガムベースは一〇〇%酢酸ビニル樹脂です。
「かわいらしいデザインの中身が、発癌物質を含む添加物の固まりだなんて想像できるでしょうか。子供に風船ガムを食べさせるのは止めましょう。」と「食品と暮らしの安全」では提言しています。
添加物の権威、故郡司篤孝先生は、その著書「食品添加物読本」の中で、ガムについて次のように書いておられます。
「昭和三五年ごろからは、基礎剤として高価な天然チクルが姿を消して行き、代わって、酢酸ビニル樹脂などの合成高分子化合物が使われるようになった。その結果、日本のチューインガムは、食品とはお世辞にも言えない品物になってしまった。(中略)判りやすく言えば食品添加物の固まりを噛んでいるようなものである。その中には、毒性のため使用禁止になったものもある。子供達が食べるものだけに、安全性はより厳しく監視しなければならない。」郡司先生はその当時から、チューインガムの危険性を指摘しておられましたので、慈光会では天然チクル一〇〇%使用のガムしか扱って参りませんでした。しかし、消費者が、一般市場で表示を見て買おうと思っても、原材料に何を使用しているのかは判別出来ない仕組みになっています。昭和六三年夏に省令改正が行われて、「一括名による表示」という表示方法が決められたからです。
「一括名表示」とは、どんなものなのでしょうか?
ガムのガムベースを作るとき、各メーカーは、七一種類ある添加物の中から大抵何種類かを配合します。例えば唾液によって柔らかくなり過ぎるのを防ぐポリイソブチレン(電気の絶縁材料、接着材料として輸入された石油合成品)は、酢酸ビニルの欠点を補うために添加されます。このような場合は個々を表示せず、一括して「ガムベース」と表示する、というのが表示法に定められているのです。即ち、「天然チクルも酢酸ビニル樹脂も十把一からげにガムベースと表示しなければならない」という訳です。その結果、消費者にとっては、合成化学品を判別する情報が閉ざされてしまうことになりました。一体誰のための、何のための表示なのでしょうか。
ガムの発癌物質の事を調べて行きますと、この新しい表示法の様々な問題点に突き当たらざるを得ません。このテーマについては、特に私たちと直接関係が深いので、又、新たに取り上げることといたしましょう。
ガムベースに何が使ってあるか判別出来ない以上は、「食品と暮らしの安全」の提言に従ってガムを食べないようにするしか方法がありません。子供達の体の中に、毎日発癌物質が取り入れられているとしたら、考えるだけで恐ろしいことです。十分にご注意下さい。又、多くの方にこの情報を伝えてあげて下さい。
再び梁瀬先生の書に戻ります。
(生命)…八〇頁 《思えば昭和二八年から四四年まで一六年の永きに亙って、ホリドール(パラチオン)、テップ、エンドリン、フッソール、水銀剤等々、その猛毒や永い残留性故に、現在では製造や使用を禁止されている農薬を、当時の農業指導者は、私たちの必死の反対の叫びにもかかわらず、「大丈夫だ」「大丈夫だ」と農民に使用させ、農民や消費者に大被害を与えたことは実に恐るべき事実である。しかも誰一人その責任を取るものも遺憾を表明する者もなく、或いは死亡し、或いは健康を失った農民は全くの泣き寝入りである。これでは浮かばれない。現在「大丈夫」として農民に大量使用させている底毒性農薬なるものも、将来必ずその使用に臍を噛む日の来ることを、私は日々の診察を通じてしみじみ感じているのである。》「食品添加物はどのくらい危険?」ある日私はこんな新聞の見出しに目をとめて記事を追いました。ここに紹介しましたのがその全部ですがとても納得できるものではありません。食品添加物の影響は取るに足らないとする厚生省や疫学者、又このような記事を構成するマスコミの姿勢に強い反発を感じます。
過日、慈光会でも遺伝子操作作物の輸入に反対する署名の呼び掛けがありましたが、署名用紙の提出先は日本の国会の衆議院・参議院の両議長宛になっていました。絶大な議長の重責と権限の影響力を期待しての請願だと思いますが、国家の指導者たちは、このような状況にもあまり危機感を抱いていない様子、そうでなければ、あのような署名運動などは全く必要ありません。どうしてなのでしょうか、実に不思議な人たちです。
近代文明がもたらした人間による恐るべき地球の生態系と環境破壊、その状況に立ち向かい、絶えず世界へ警鐘をならし続けたお二人の言葉をお借りして、今一度自分自身の足元を見直すつもりで書かせていただきました。しかし思い違いや間違い、ピント外れなど、すべては私の無知によるもの、もしお気付きのことがありましたら、どうかご指摘ご教示下さいますようお願いいたします。最後にもう一度先生の血涙の声をお伝えして、拙文を終わらせて頂きます。
(生命)…一二四頁 《かくて農薬は、それを散布する農民や、農作物中に残留する農薬を食べる消費者の心身を冒し、気力体力の低下をきたす。気力体力の衰えた農民は、一時的な労働の安易を求めて更に化肥に頼ろうとする。又、化肥で生育した病弱農作物は、ミネラル、ビタミン、酵素などが欠乏していて、食べる人の生命力を低下せしめる。これが、悪循環するのである。 まことに近代農法は、「土を殺し、益虫を殺し、そして人を殺す」いわゆる「死の農法」である。今や日本民族は、この恐るべき「死の農法」の魔手に捕らえられ、滅亡への道を驀進しつつある。》ありがとうございました。合掌 一九九七年五月 井西 治