慈光通信索引へ


老後への私案
  

梁瀬 義亮




一九八八年六月二三日
於 五條市公民館 高齢者を対象にした講演会

これで大体物質的な生活の話は終わりですが、精神的な話を少し申し上げます。
この間、京都大学の里中教授が、現在の病気の六十%は、心身症と言いまして、心から出て来た病気だ、とおっしゃっていました。一例を申しますと、札幌のある医院の話ですが、お父さんもお母さんも非常に教育熱心で、そこの一人息子さんを何とかして一流の大学を卒業させて、自分達の後を継がせたいと思っていました。そしてこの一念から、小学校の時から徹底的に勉強させた訳です。そしてその子は、札幌一の私立の中学校に入学することができました。その中学校は家から少し離れているので、 家一軒を借りて、お母さんが付ききりで子供に勉強させるという、力の入れようだったそうです。ところがその子が二年生の半ばを過ぎるころから、だんだんと成績が落ちてきた。これはいけないと思っている矢先、大吐血をしてしまった。びっくりして大学病院へ入院させて調べてみると、驚くなかれ、まだ中学二年生の胃に四十個以上の潰瘍ができていた、というような話なのです。
どうしてこのようなことになったかと申しますと、我々は心と体は別々のように思いますけれども、実はそうではないのです。私たちにはいろいろなストレスが有ります。例えば腹が立つとか、あるいは不安があるとか、心配事があるとか、やきもちを妬くとか、いろいろな感情生活があります。おもしろからぬ心の状態がストレスとなっ て、脳の奥の方にあります脳幹部のところに一つの影響となって現れ、変化を起こすのです。この変化が自律神経にダメージを与えるのです。自律神経と申しますのは、私たちの胃や腸や心臓や肺を調節してくれている神経です。私たちが夜寝ていて意識がなくても心臓も呼吸も胃腸もうまく働いてくれています。腎臓も肝臓も皆ちゃんと働いていてくれています。この様に、別に自分で働かそうと思わなくても自分で働いてくれている、大事な神経のことです。この自律神経がやられると、内蔵がいろいろと故障を起こします。丁度、鉄道の通信網のようなもので、通信網がやられると、鉄道は脱線や転覆をいたるところで起こします。この例の場合は、胃に来ている自律神経や迷走神経に異常な刺激が加わったために、胃の粘膜にある血管が痙攣を起こし、胃のいたるところに貧血状態が起こり、そしてついにその一部が死んでしまったのです。しかしそこには胃液がありますから、死んだ組織は溶けてしまいます。これが胃潰瘍です。或いはこの神経がうまく働かなくて、胃の表面を覆っている大事な粘膜が病的になってしまうと、やはり胃液にやられてしまいます。食べ過ぎたりしていないのに、心配事があったりすると、何か胃がつかえたり胸焼けしたり、胃炎症状を起こすのもこのためです。
もう一つは、脳幹部から脊髄を通って内蔵に来る経路があります。いろいろなストレスやショックがありますと、この経路を通って内蔵がやられることもあります。またもう一つは、ホルモン系統、内分泌系を通って内蔵がやられる場合もあります。例えば、いつも家族内でいがみ合っておりますと、始終この内分泌がおかしくなります。 副腎皮質といって、大事な内分泌腺がおかしくなり、リュウマチが出てきたりする訳です。ちなみに先程申しました農薬ですが、私は農薬のことを少々勉強させてもらってきたので申し上げるのですが、農薬は完全に、自律神経、内分泌系、脊髄系統にダメージを与え、自律神経失調や内分泌腺系統の障害を起こします。ですから先の里中教授おっしゃた、病気の六十%は心身症という中には、農薬中毒が入っているかも知れません。
この様に、私たちの精神生活の内容が非常に多くの病気の原因になっています。最近ある銀行の方から「銀行におって胃潰瘍の手術をしないような者は、一人前の銀行マンではないと云われます。」と聞いたことがあります。少しおおげさな話とは思うのですが、現在の企業の中にいると、非常にストレスが多いから胃潰瘍が起こりやすいということだと思うのです。胃潰瘍だけではありません。リュウマチ、喘息など、いろいろな要素が加わって参ります。また、新陳代謝障害というものはガンとも関係が出てきます。
この様な訳で、日常生活において食べ物が良いとか、生活が良いとかいうことはもちろん大事ですが、それとともに私たちにの精神生活というものが良くなければいけない、ということになるのです。さりとて神経質な人に明日から呑気になれといっても、なれれば良いに違いないのですが、そう簡単にはなれません。誰も好き好んで心配している人はいないのであって、心配することが起こるから心配する訳です。精神生活が大事だから、明日からにこにこ笑って円満になって、という訳には行きません。
また、世の中なんでも気楽に考えたら良いとか、有り難いと思っていたらいいんだとか、なるほど結構な話があります。しかしそれは事が起こらないときの話です。事が起こったらそんなに呑気に思ったり、結構だ結構だと思っている訳には行きません。事の起こらない時の結構な話は駄目です。
私はこの様な分際ですが、生命ということに関して、或いはこの様な問題に関しまして、私なりに苦労して参りました。そこで少し話は複雑になるかも知れませんが、ご参考までに聞いていただきたいのです。 (以下、次号に続く)

慈光通信索引へ


復 刊 案 内
  




   
梁瀬先生の著書「生命の医と生命の農を求めて」の復刻版が、ようやく願い がかない、地湧社より刊行されました。
初版本より十九年が経った今でも生命を全うするための農のあり方医のあり 方の指針となっています。是非御一読下さい。
全国有名書店でも販売していますが、慈光会販売所でも取り扱っています。
定価 二一〇〇円
(本体 二〇〇〇円)
送料 一冊 三一〇円



慈光通信索引へ


慈 光 会 第 一 回 学 習 会 の お 知 ら せ
  





「ダイオキシン」についての学習会を慈光会館にて開きたいと思います。
皆様も既に御存じの通り大きな社会問題になっています「ダイオキシン」は人間が作ろうとして作ったものではなく、ゴミを燃やすことによってその八十%が発生しています。そしていくつかの経路を通って私達の体内に取り込まれていきます。その毒性は史上最強と言われ(サリンの二倍)微量でも人類や生態系に大きな影響を及ぼし、
皮膚障害、先天異常の増加、免疫能力の低下等が起こり、さらに発癌の恐れもあります。また環境ホルモン(内分泌撹乱物質)の一つにも数えられています。このように強い毒性と残留性を持つ「ダイオキシン」について「私達に出来ることは」「しなければならないことは」等、御一緒に考える場を持ちたいと思い学習会を計画致しました。特に講師はお招きしておりません。T・V番組のビデオを見ながら共に学んで行けたらと思っています。是非、御参加下さい。

時 :二月二十二日(日)午後一時三十分から三時三十分まで
場所:慈光会館(慈光会販売所二階)

参加ご希望の方は販売所までお申し込み下さい。定員六五名になり次第締め切らせていただきます。
入場は無料です。
受付‥(木)(日)以外の午後一時〜五時
会員以外の方もどうぞお申し込み下さい。


ホームへ