慈光通信#112-#152



癌になる仕組みと健康法

  

前理事長・医師 梁瀬義亮




            
1988年12月11日仏教会講話より

自然を殺し、自らの生命を否定し、そして生態系を破壊する近代文明が、恐ろしい毒の洪水を生み
まして、今、皆様の回りでも、若い方がバタバタと癌や肝臓病で亡くなるのをお気づきでございま
しょう。
最近もこんな例がございました。
ある三〇代のお母さんと若いお父さんに、子供さんが三人あって、そのお母さんが三〇代だけれど
癌になって亡くなってしまった。そこで里のお母さんが来て、子供の守りをしていまいたが、その
里のお母さんも又癌になった。そうしているうち今度は舅さんが癌になり亡くなってしまった。一
年のうちに三人亡くなり、残されたのは、若いお父さんと三人の子供と、里のお父さんだけになり
ました。けれど、今度はその若いお父さんも癌になって亡くなってしまった。結局、里のお父さん
と三人の子供だけが残されてしまいました。こういう話を私のところへ言って来て「これは一体、
どういうことでしょうか?」と聞かれた方がありました。これは、極端な例ではありますけれども、
こういった例はかなりちょいちょい聞くのです。この方達は毒の洪水の溺死者なのです。
ご参考に申しますと、私は本気で生活と病気の関係をいつも注意しながら患者さんを診察させて頂
いて参りましたが、四〇年の臨床経験から、結局最近分かって来たことは、「誰でも癌になる因子
を持っている。しかし、誰でも又、その癌が発生するのを抑える因子を持っている。ところが、何
らかの理由でその癌を抑える因子が弱ってしまったりすると、癌が出てくるらしい。」ということ
で、私はこれは本当だと思うのです。発癌を抑える因子を壊すもの(勿論その発癌を抑える因子の
強い弱いはありましょうが)として、やはり農薬とか食品添加物、合成洗剤、医薬品といった合成
化学薬品があげられます。即ち自然に無い、人間が作った合成化学薬品が、常に体に入ってくると、
「発癌を抑える因子」が壊れるということを、私は感じております。
それに反して、沢山自然のエネルギーをいただく、よく「いも、豆、菜っ葉」と申しますが、自然
の無農薬有機栽培でできたものを沢山いただく、特にグリーンの野菜、あるいは、無農薬有機栽培
の青汁をいただくとか、また適当な運動など、こういったことによって私達の細胞は守られている
のです。それから、精神的要素も大きいのですから、肉体を守り、この世に生きて行くためにも、
是非正しい世界観、人生観、生命観を持っていかなければならないということを感じるのです。
なぜかと申しますと、普通の人は健康も不健康も何も考えずに生きている訳ですが、もし健康とい
うことに意識が向きますと不健康ということも意識にのぼってきます。そうすると、今この世の中
は、不健康な要素に満ちていますので、ノイローゼになります。そのために精神的な要素でやられ
てしまいます。
実はこのあいだ、遠方から健康問題で悩みきって来られた方にこの話をしたのです。その方は、物
質的には健康な生活をしているのですが、健康を意識しすぎるがゆえに、不健康を意識して、不健
康な要素がこの世に多いことに対する恐怖心のために精神的にやられて、間違いなしに自律神経失
調やホルモン異常を起こしているのです。そこで「健康を求めるのだったら精一杯やって、あとは
死んだらしょうがない、という覚悟を持って健康法をやらなくてはだめです。」ということを言っ
たのです。そして、「一つこれでも読んで参考にして下さい。」と、本を一冊差し上げました。
私は、子供のときから、癌になる要素ばっかりみたいな男で、本当に公害の代表だと自分で思って
いるのです。沢山の要素を持っておりますので、「癌になるかもしれないなあ。」といつも思って
いるのですが、なったらなったで精一杯やっているのだからしょうがない、ということは、はっき
りしております。悩みはありません。
健康法の会へ行きますと、健康法やっている会だから、皆さん健康かと思うと、皆「しょぼーん」
とした人ばっかりです。私のところへ健康法をやっておられる方が診察においでになりますが、看
護婦さんらは、ちょっとうれしくないような顔しておられる。何故かというと、もう健康に夢中で、
大勢患者さんが待っておられるのも何も問題じゃない。自分のことで夢中でして、時間を三〇分も
とってもびくともしない。これでは健康とは言えないです。物質的に健康でも精神的に駄目です。
お気の毒だからいつも長々と相手さしてもらうのですけれども、これはくれぐれも気を付けなけれ
ばいけないことです。ですから健康法ということはいいことだけれど、今の世の中では、やはり死
ぬことを覚悟出来た上での健康法でないと、本当の健康法にはなりません。不健康になる要素があまりにも多ございますから、いくら食べ物注意しても、放射能が入って来ますし、水から変なもの
が入ってきます。空気も汚染されています。いくらでもございます。
この死の濁流の中に我々はあります。この中でご一緒にこの仏道という、あるいは慈光会の健康食
品の運動をさせていただいて、できるだけ健康に生命を保って生かしていただいて、そしてこの民
族のために子孫のために出来るだけ健康でそして祈りを捧げ仏道修行させていただきたいと念願す
るものなのです。



交通エコロジー、ご存じですか?
  




運輸の面から温暖化ガス(CO2等)を減らすことを交通エコロジーといいます。今、各地でどのよ
うな工夫がなされているのか、レポートさせて頂きましょう。
札幌市
パーク・アンド・ライド(Park and Ride)

これは、郊外の最寄りの駅まで車で乗って行き、そこからは電車やバスといった公共交通機関を利
用する、という方式です。都市内部に往来する車が少なくなる、というメリットがあります。問題
は郊外駅前の駐車場の確保ですが、平日のスーパーの駐車場を自治体が借り上げて市民に提供する、
という試みもなされています。
熊本市
路面電車
 
排気ガスを出さない路面電車の復活です。さら工夫されていることに、路面電車の高さが、乗降時、
車椅子でも利用しやすいように路面すれすれに低くされています。
一方で、バスの優先路線も設定されていて、バスがノンストップで走れるよう、信号が制御されて
います。
手塚市&東京都
エコ定期券

休日に家族が電車で出掛けると家族全員が割り引きしてもらえる「エコ定期券」が発売されていて、
電車利用促進に一役買っています。
最近は首都圏でも同じような定期券が作られていて(こちらはバス)、都民に休日の公共輸送機関
利用を呼びかけています。
福岡市
共同集配システム

色々な運輸会社のトラックが何度も同じ店に配達するのを避けるため、行政、業者、商店が一致協
力して、新しい集配システムを作り出しました。Yellow Bird(イエローバード)と書
かれた黄色い車が一括して配達を受け持ちます。全国に広まると、大きな省エネが見込まれます。
屋久島
電気自動車

島全体が世界遺産で保護しなければいけないため、低公害車である電気自動車を日常的に使用して
います。
アメリカ
相乗り専用レーン・マッチングサービス

アメリカは車社会。しかし、一人で一台の車に乗るのは効率が悪いので、相乗りを勧めています。
道路には相乗り専用レーンが設けられていて、このレーンはすいているため一般車線より格段に速
く走ることが出来ます。また、相乗りを希望する人同士を結び付ける「マッチングサービス」も実
施されています。
その他、次のような工夫も進められています。
モーダルシフト
トラック輸送から、船や鉄道コンテナを利用した輸送に変えたり、自家用車から、公共輸送機関利
用に変えることの促進をはかります。個々にばらばらに輸送するのではなく、一括して輸送するこ
とにより、ロスが省かれ、省エネになるのです。
エコドライブの推進
アイドリングをストップする努力を奨励しています。「アイドリングストップ!」のステッカーを
作り車に貼る工夫をしている地区もあります。又、停車場毎にエンジンをストップさせる路面バス
や、客待ちの間、アイドリングストップを実行しているタクシー会社もあります。
ハイブリッド車
今後、CNG車や、低燃費車を増やしたりして、自動車から温暖ガスの排出を減らしてゆく工夫が
期待されています。その際に低公害車の税制優遇措置を採るなどの、国の対応も必要とされます。
( 参照:交通エコロジー・モビリティ財団発行ビデオ「それぞれの立場で取り組む地球温暖化対策」)
*以上ご紹介したような工夫が各地で行われていることは、案外知られておりません。でも、こん
な工夫なら私達の町でもすぐに実行してほしい、というものもありますね。
次号では、ドイツを中心としたヨーロッパの工夫をご紹介させて頂きましょう。 



「沈黙の春」を読んで (5) 

(レイチェル・カーソン著)  

慈光会会員  井西 治



                  (この文章の形式 『』のマーク 本文引用箇所  
↓のマーク 筆者の感想 )
        
『DDTは一八七四年にドイツの化学者がはじめて合成したものだが、殺虫効果があるとわかったのは、一九三九年のことである。たちまち、昆虫伝播疾病の撲滅、また作物の害虫退治に絶大な威力があるともてはやされ、発見者パウル・ミュラー(スイス)はノーベル賞をもらった。 いまではDDTの使われていないところはないと言ってよく、だれもが無害な常用薬のつもりでいる。DDTが人間には無害だという伝説が生まれたのは、はじめて使われたのが戦時中のシラミ退治で、兵隊、避難民、捕虜などにふりかけたことも影響している。大勢の人間がDDTにふれたのに、何も害がなかったので、無害だということになってしまったのである。事実粉末状のDDTならば、ふつうの炭化水素の塩素誘導体と違って、皮膚から中へ入りにくい。だが油にとかしたDDTは、危険なことおびただしい。そしてDDTは油にとかしてふつう使われる。DDTをのみこめば、消化器官にゆっくりと浸透し、また肺に吸収されることもある。一度体内に入ると、脂肪の多い器官…たとえば副腎、睾丸、甲状腺にもっぱら蓄積する(DDTは脂肪に溶解するため)。また、肝臓、腎臓、さらに腸を包んで保護している大きな腸間膜にも、かなりの量が蓄積される。』(引用1)
ここでは、DDTが戦時中に兵隊、避難民、捕虜のシラミ退治によく使われたことが書かれています。これは勿論アメリカ軍隊の話で、われわれ日本の軍隊で、私の知る限りでは、この特効薬はありませんでした。私が所属した部隊は当時中国にいましたが、そこでは専ら大釜に衣服を入れて煮沸するか、蒸すという極めて原始的な方法で処理していました。しかしこれでは百度ぐらいしか温度が上がらないので、成虫は死ぬのですが卵は殆ど生き残ります。全くいたちごっこの繰り返しでした。
敗戦後復員した上陸地の佐世保で消毒のためだと頭からDDTの白い粉を浴びせかけられましたが、煮沸殺菌と違い効果は抜群、DDTの威力には驚きました。  しかしこの昆虫伝播疾病の撲滅と害虫退治の威力でノーベル賞を受賞したDDTですが、地球上のすべての生命体の生存を脅かす引き金になったとすれば、ノーベル賞の権威は一体どういうことになるのでしょうか。

慈光通信#112-#152