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最近テレビである有名な社会評論家が大変なことを言っていました。「自然界と心の通はぬ、又人間同士も心の通はぬ今の日本人は世界で最も醜い心の民族である」と。このことは日本だけではなく、今や人類全体の傾向でしょうが、日本人が最も甚だしいとの意味でしょうか。然しそのお方は「何故こうなったか」はおっしゃいませんでした。
優しく美しい心の人々の住む国を探し求めて放浪した文人ラフカディオ・ハーンを魅了し、小泉八雲と名乗って日本に帰化せしめた程百年前の日本人の心は優しく美しかったのです。そして当時の日本の自然も抜群に美しかったのです。私も六十余年前の少年時代の五條の自然の美しさを思い浮かべて涙の出るような懐旧の念に襲われることが屡(しばしば)です。
日本人のあの美しい心と美しい自然はどうして消えていったのでしょうか。
古(いにしえ)の聖者の教えに四恩ということがあります。「人間は四つの恩によって生かされているという事実を決して忘れてはならない。これを忘れると人間は畜生になり、人間社会は人間社会でなくなって畜生道や餓鬼道、地獄道になる」と言う戒めです。
四つの恩とは
第一に父母のご恩です。父母の恩によってこの世に生まれ生かされました。
第二に衆生のご恩です。多くの人々のお陰で衣食住が与えられ平安と生存が可能なのです。自分と他人は決して断絶していないのです。
第三に大自然のご恩です。私達の生存は完全に大自然によって支えられているのです。太陽、空気、水、大地、四季の運行、衣食住、あらゆる生命の調和等々‥‥すべて母なる大自然のお陰です。イギリスの大学者ラブロック博士は地球は一大生命であると言って「ガイヤー」と叫びました。
第四に真理のご恩です。真理は古今東西に亙(わた)ってその使徒を人間界へ送って下さって私達にエゴを越えた人間の行き方、人間が生存競争でなくて慈悲(高次元の愛)の心で平安に楽しくそして向上の道を生きる行き方を教えて下され、又教えつづけてくれています。これによって人間の世界に生命、財産、家庭の平安がありこれによって人間の世界に正義が行はれ、愛の秩序が保たれるのです。
然るに、
(イ)人間至上論(人間こそ地上の中心であって、人間を越えた叡智や能力、愛の実在などはない。それは人間が考えたことだ。人類が栄えることが至上命令である。そのためには何をしてもよいという独断的信仰)
(ロ)唯物論(生命という事実の否定。即ち生命は物質の産物にすぎない。従って死んだら何もかも終わりという独断的信仰)
(ハ)自他断絶論(人類対自然、人類対他動物、自分対他人、これ等はすべて無関係、断絶しているものであるという独断的信仰)
以上(イ)(ロ)(ハ)を内容とする近代思想は上述の四恩という事実を全く無視した欠陥のある考え方です。これとこの思想の上に発達した近代科学と科学の法則(物質の法則)から導き出された所謂科学的生命観、自然観、人生観、世界観、宇宙観 ‥‥。これらを本にして発達したのが近代文明です。それは一見華やかな快適と快楽と豊かさに満ちたパラダイスの様に思はれたのですが、今やその本体が明らかになりました。それは、苦悩と争い、飢餓と病気の形相に満ちた死の文明だったのです。今や人類はすっかり四恩を忘れて野獣的エゴの主張に狂奔し、平安と愛の喜びを失い、互いに金と地位を貪り争ってのた打ち廻り、終には母なる大自然をも壊してしまって自らその生存を危機に陥れてしまっているのです。このままでは遠からず公害と環境破壊で人類は滅亡します。目覚めた人々によって公害反対、環境破壊反対の運動が行はれています。それは結構なことですし、必要なことです。しかし明治以来一〇〇年間以上教育と政策によって近代思想や近代科学一辺倒に洗脳をされてしまった今の日本人の心のままで放置しておいては、この運動も雑草を絶やそうとしてその地上部分だけを刈って根を放置するのと同じ結果になるでしょう。自然の汚れと破壊は人間の心のそれと平行しています。
四恩によって生かされているという尊くもありがたい事実に目覚めて近代思想や近代文明の誤りを知り母なる大自然への敬愛、父母や同朋への感謝と報恩の念と真理(神仏)への畏敬と祈りの中に謙虚に生きさせて頂く心に帰ることこそ公害や地球破壊防止の基本と思うのです。
二番目としては「成長発育」に関わる部分です。これは身体の機能の中でも、「骨格の成長を促す」という意味でホルモンは大きな役割を担っています。三番目は「基礎代謝の維持を図る」「エネルギーを持続させる」という部分で、非常に大きな働きがあります。さらに四番目としては「環境への適応力を高める・適応をはかる」ということです。私たちは非常にストレスを受けやすい環境にいるといわれております。このストレスを身体に入れ、ためていきますと様々な病気が引き起こされるというふうにも言われています。ですから、ストレスを、出来るだけ早く解消する必要があるわけですが、そういうところでホルモンの果たしている役割というのは大きなものがあります。そして五番目の大きな役割としては、これは脳神経系とも連動する働きということが言えますが、「情緒的な働き、心の動き」と言われるような部分です。私たちは非常に緊張度が高まりますと、アドレナリンが分泌されます。これもホルモンの一種です。それと反対に非常にゆったり落ちついた気分、例えばこちらの山に囲まれた風景を見ていますと、日常的にビルしか見えないような都会で仕事をしております私たちにとりましては、本当に心が開放されるようなゆったり気分になれるのですが、そういうゆったりした穏やかな気分をつくりだすというのも、ホルモンの働きによります。
ホルモンの五つの働き
この「環境ホルモン」と言われるものは様々な影響があるわけですけれども、そもそも「ホルモン」というのはどういう役割を果たしているかということを簡単に見てみたいと思います。ホルモンの働きを大まかに五つぐらいにまとめてみますと、まずその働きの一番大きなものは、「生殖機能に関わる働き」です。「性の決定」とか「生殖機能」、「成長促進のために関わる働き」といった、いろいろと大きな働きをホルモンは果たしています。そして何といっても「種の存続」に関わるということで、最初にお話した「精子の減少」というような問題が、この環境ホルモンの影響という形で、非常に大きく取り上げられているのです。
環境ホルモンによる野生動物への影響
こういう風にホルモンというのは身体の中の様々な部分で非常に大きな役割を果たしているわけですが、それらの働きを破壊したり阻害したりするのが、いわゆる「環境ホルモン」と言われるものです。ホルモンの本来の働きが阻害されるところから、様々な障害が生じてくるわけです。その幾つか事例として、多くの野性動物の実験や観察、あるいは調査の結果言われていることがございます。これはポスターにも、野性動物への影響というところに幾つか載っております。例えばイボニシという巻き貝への影響という中で現れているのは、ここにインポセックスと書いてありますが、つまり雌の巻き貝に雄の生殖器のペニスが出来てしまっているという事例です。これは、国立環境研究所の堀口先生などのグループが、日本列島の沿岸七九ヶ所の地点で調査をしたところ、七四ヵ所、つまりほとんど全ての地域で観測されているのです。この原因としては、かつて漁網などに使われたトリブチルスズ、TBTOや、その他の有機スズ化合物ではないかと言われております。魚では雌雄同体とか雄性化とか、精子の減少、甲状腺の異常とかいった事例が出ているということです。カエルでも足の数が多すぎるとか、逆に少なすぎるという様な異常も報告されているようです。
(以下、次号に続く)
車ではなく人間を最優先に考えて造られた都市が、米国、カリフォルニア州にありました。自転車都市デービス市です。ここは、現在では世界的に有名な環境都市になっていて、世界の要人が見学に来ているそうですが、このデービス市も、一朝一夕に現在の姿になったわけではありませんでした。確かな信念に裏付けられた綿密な計画に基づき、二五年以上の歳月がかけられて、今の町並みが出来てきたのだそうです。以下にそのデービス市の一端をご紹介してみましょう。(雑誌「ECO21」より)
デービス市の人口は五万人。カリフォルニア大学デービス校の大学生が二万人、小中高校が合わせて十八校ありますので、学生が大変多く、学園都市とも云われるゆえんです。この人口にたいして登録自転車台数が三万台以上あり、これらの自転車は生活用具として市民に欠くことのできないものになっています。なぜなら、市内を縦横に走る自転車レーンを利用すれば、市内のどこへでも自転車で行くことが可能だからです。自転車レーンは二種類あり、一つは市内の道路に自動車レーンと平行して設けられたもの(幅は自動車レーンと同じだけあり、たいそうゆったりしています。又、自転車レーンに侵入してくる車は無いそうです。)、もう一つは自転車しか走ることの出来ない自転車専用レーンです。子供たちは涼しげな木蔭でおおわれた専用レーンを利用して自転車通学していますので、親たちは車での送り迎えの必要がありません。市内の交差点には信号機がないのが一般的で(「ストップ」の赤い看板サインのみ設置されている)、まず、歩行者が最優先され、あとはあらゆる交通がスムーズに進行しています。
こういった自転車利用は第一にエネルギーの節約になります。第二に排ガスが出ませんから環境汚染がありません。第三に、自転車利用の人々の健康を増進する、という思いがけないメリットがあります。
そもそも市長のジュリー・パータンスキー女史がトライシクル(三輪自転車で、後に座席を付けて人を乗せたり、荷物用のカートを付けて沢山の荷物を引っ張ったり出来る構造になっている。)の愛用者で、写真を見ると、大変涼しげでラフな服装をしておられます。取材に訪れた記者は開口一番女史から「なぜそんな暑苦しいスーツを着ているの?」と聞かれたそうですから、そのライフスタイルはうかがいしれましょう。市庁舎は古い小学校をそのまま改装したもので、ここでも資源の再利用が実践されています。市職員も皆ポロシャツスタイルで、ネクタイ、スーツ姿は皆無だそうです。真夏の背広とネクタイ、カッチリしたビジネススーツは、なるべく冷房を使わずに自然と共に生きようと考えているこの町には、不釣り合いなのでしょう。以前に紙上でご紹介したドイツの「エコバンク」の職員が、ノーネクタイ、運動靴で働いていた姿と重なる部分がありますね。
一方町の様子はというと、大変木が多いことに特徴があります。町の駐車場の周りには枝の広がる大樹が植えられ、その木々がつくる緑の木陰は、人工の屋根のかわり、天然の屋根というわけで、直射日光から駐車中の車を守ってくれています。そこには必ず駐輪場も設置されていて、駐車場も駐輪場も無料だそうです。
又、道路の両側には大きく枝を拡げた広葉樹が続き、路面にも涼やかで深々とした蔭を投げかけています。道に接した家々の前庭には青々とした芝生が広がり、各家庭の庭にも多くの木が植えられています。それらの木々が落とす涼しげな木蔭は強い日差しから歩道と道路と家々を守る役目を果たしています。又、住宅の側道は舗装せずに、あえて土の道が残してあります。沢山の木々と舗装されない大地のお陰で、ほとんどの家ではクーラーがありません。南向きに大きくとった開口部、東西には小さな窓、パッシブソーラーシステムが設備された屋根、深い軒、このような造りの家は、夏の暑い日差しを防ぎ風を十分に取り入れることができます。又、冬は南向きの大きな開口部から太陽の光が最大限に取り入れられるようになっていて、一般の住宅に比べると一軒あたりのエネルギー消費量は五〇%少ないそうです。夏、大地に熱を吸収され、木々のこずえを吹き抜けてきた風は、確かに薫風と呼ぶのにふさわしく、木々の香りと大地のかぐわしさに満ちていることでしょう。このように枝葉をわたってきた風は人工的に作られたエアコンの風よりも、たしかに人間の体と心にやさしいに違いありません。又、冬は冬で落葉した大樹の細かい枝々を透(ぬ)けてきた太陽の光が、家々と人々を暖めてくれます。家のぐるりを取り囲む大地の保温力も大きな役割を担っていることでしょう。このように「緑と土を生かす工夫」が随所に見られるのが、デービス市の特色です。(以下次号に続く)
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